SHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループHPのプレスリリースやブログなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

前回より、Z世代(1990年代後半〜2000年代生まれ)に関するSHL白書を3回に分けてご紹介しています。今回は調査対象2628人のテストの分析結果です。

第318回 SHL白書:Z世代のリーダー志望者は何を提供できるか?(2/3)

若いリーダー志望者は相対的に、演繹的推理力を最も強みとすることがわかりました。一般的な原則を特定の状況に適用するタイプの問題を解決することが得意です。つまり、自分が世の中をどう認知処理するかに頼り、それを戦略的な課題に適用します。

下のグラフは知的能力3科目における得点の分布を示しています。選抜場面で平均以下の候補者は除外されましたので、期待される割合は、「平均より非常に高い」が14%、「平均より高い」が29%、「平均」が57%となることに注意してください。

全ての地域で同様の傾向が見られました。若いリーダー志望者がどのように問題解決を行うかについて、地域による差異はほとんどないことを示唆しています。

この結果は、エグゼクティブレベルのリーダーが通常、帰納的推理力(特定のルールを一般的な状況に適用するタイプの知的能力)に秀でていることと対照的です。この違いはシニアリーダーと若い世代の知的能力に多様性があることを浮き彫りにしており、「シャドーボード(影の取締役会)」でその多様性を活用できると言えます。

SHLユニバーサル・コンピテンシー・フレームワーク(UCF)を用いて、職場における行動面での強みを調査しました。UCFは妥当性が検証されたフレームワークで、20のコンピテンシーで構成されています。世界中のあらゆる職務・レベルについて、すべての職務行動を網羅するように作成されています。このフレームワークによって、若いリーダー志望者たちについて、どこに強みがあるのか、より助けを必要とする点はどこかを調査することが可能です。全般に、彼らは次の領域で強みを示しています。

  1. テクニカル面と学習――徹底的で正確なアウトプットを含む
  2. 戦略的思考――価値主導のマインドセット
  3. 計画を立てて断固とした行動を取る――着実に進むやり方につながる

一方、彼らは現状に異議を唱える傾向があり、消費者ニーズを超えた行動をとることを好みます。さらに変化や障害への対処について学びが必要かもしれません。また、ソフトな関係を築くことよりもビジネス上のメリットに重点を置く傾向があります。新しい関係を構築したり部門の枠を超えて仕事をしたりすることは彼らにとって容易ですが、他者を介して結果を出すことは学習が必要なポイントです。

知的能力と同様に、すべての地域で同様の傾向が見られました。これは、強みと能力開発が必要な領域に地域間でほとんど違いがないことを示唆しています。

これらの行動面の傾向は、私たちがどのように彼らの強みを活用し、能力開発が必要な領域についてバランスを取るか、という重要な問題を提起します。心理的に安全な環境で、彼らの強い仕事倫理や戦略的思考、並外れた意欲をどのように引き出すか。私たちは、若いリーダー志望者に、レジリエンスを鍛えて障害に対処し、役に立つ仕組みを作り、他者を介して結果を出す方法を学んでもらう必要があります。

過去20年間のグローバリゼーションと技術の進歩、そして現在のパンデミックが、地理的に分散した労働力、よりマトリックス化された組織構造、そして、より高い生産性への依存度を高めています。これらの変化は、経済の混乱と絶え間なく変化する政治情勢と相まって、職場に前例のない量の変動性と不確実性をもたらしました。したがって、リーダーは、絶えず変化し、斬新で、なじみのない状況で舵取りをする必要があります。これらは興味深い疑問を引き起こします:「では、誰が最高のリーダーなのか?」「リーダーに必要な特徴は何か?」。

85の企業から9000人近くのリーダーを対象に実施されたSHLとGartnerのリーダーシップ研究の中で、考慮すべき鍵はリーダーが活動する『コンテキスト(文脈)』であることが示されました。職場の行動面での強み、経験、能力はすべて、リーダーが直面する課題、すなわち、彼らのコンテキストに関連するというのが結論です。私たちはこのリーダーシップ研究を使用して、リーダーシップ課題の解決にあたって、若いリーダー志望者がどう対処するかを明らかにしました。

リーダーシップ課題は全部で27個あり、4つの分野に分かれています。下のグラフは、その4分野に対する若いリーダー志望者のポテンシャルを示しています(27個の課題全ての結果は本稿最後の附録にあります)。また、特に興味深い2つの課題を抜き出し、結果を円グラフで表示しています。グローバル比較集団で予想される割合は、適合度「低」が30%、「中」が40%、「高」が30%です。

全体として、彼らは、リーダーシップのさまざまな課題に直面したときに成功するための強みを根底に持っています。特に、「変化をリードする」ことが強みです。これは、彼らが「決断・率先垂範」コンピテンシーを強みとすることを考えれば、驚くことではありません。能力開発が最も必要なのはリスク管理です。「リスクを避けるコンテキスト」と「リスクを取るコンテキスト」の円グラフの対比を見ると、Z世代に対して、私たちがどう、仕組みや心理面のサポートをしなければならないかがわかります。

結果2で、彼らは、「現状に従うこと」「レジリエンス」「障害への対処」が比較的苦手であることが明らかになりました。リスク回避的なコンテキストで仕事をする場合、意味のある仕組みがあり、かつ変化に柔軟に対応する環境の利点を生かして、彼らは成功する可能性が高いです。境界がなく、高いリスクを取るような環境では、レジリエンスを育成するための心理的安全性を提供することはできません。

したがって、現在のリーダーには、彼らのこうした強みを表現できる環境を作る責任があります。さらに、フィードバックの文化、意味のある境界と価値観を構築するための仕組み作りに投資し、彼らの意欲とイニシアチブが社内の他のメンバーに伝播する機会を作る責任があります。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

記事内で示されたZ世代の特徴は、皆様が持っているZ世代への印象と近いでしょうか。
原文はこちらから入手できます(ダウンロードにはお名前や社名などの入力が必要です)。
https://www.shl.com/en/resources/the-promise-of-gen-z/

(翻訳:廣島晶子、監修:堀 博美)

タレントマネジメ
ントコラム 日本エス・エイチ・エルの人事コンサルタントの視点

バックナンバー

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年

学会発表論文