堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を、日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループのネット配信「SHL Global Newsletter」や広報誌「Newsline」、HPから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は一風異色なテスト活用事例をご紹介します。

第48回 キネティク社−南極探検隊メンバー選抜

SHLはキネティク社の心理学者による南極探検隊メンバー探しをサポートしています。

背景

キネティク社は、防衛、安全、エネルギー、環境関連分野にテクノロジーをベースとしたサービスと解決策を提供する、国際的で先駆的なプロバイダーです。キネティク社は、主にイギリスとアメリカで防衛省や諜報機関、警備局など政府系組織に対するサービスと解決策を開発・提供しています。さらに、世界中の民間企業にも技術やコンサルティングサービスを提供しています。

2008年初頭、キネティク社は、オリンピック金メダリストのジェイムズ・クラックネルとテレビプレゼンターのベン・フォグルとのパートナーシップを発表しました。このパートナーシップは、キネティク社がその人的要素に関する専門性を活用して、2009年インターナショナル・アムンゼン・オメガ3南極レースへの彼らのチャレンジを支援するものです。クラックネルとフォグルのチームは、チーム・キネティクと名づけられ、世界各国からの他チームと競いました。

挑戦

2008年6月、チーム・キネティクは3人目のチームメンバーを探し始めました。世間の注目を浴びる集中的な選抜プロセスが始まったのです。BBCとディリーテレグラフ紙に広告が出されました。650通の応募が集まり、選考プロセスによってその数は40人まで減らされました。

解決策

最終的な40人が2日間のアセスメントセンターに参加し、精神的肉体的な資質や回復力がテストされました。プログラムにはSHLのパーソナリティ検査OPQ受検もありました。心理学的な行動プロファイルを明らかにするためです。素晴らしいチームを創るという目的に対し、キネティク社の心理学者が、行動やパーソナリティの点で各候補者が2人の探検家とどうフィットするかを評価できるよう、クラックネルとフォグルもOPQを受検しました。

『ジェイムズとベンにもパーソナリティ検査を受検してもらいました。ストレスフルな環境下の行動という点で40人の候補者が彼らとどうフィットするかを見たかったからです。』とキネティク社の組織心理学グループのメンバーであるポーラ・ブラウン氏は述べています。

そして、40人の候補者がさらに選考され、最終候補者として4人が残りました。キネティク社の心理学者による1対1の面接が実施され、各人の経験や業績に照らしてのOPQプロファイルが話し合われました。経験と研究成果に基づいて、キネティク社は事前に、どんなパーソナリティ特性が探検の成功に結びつきそうかを明らかにしようとしました。もうひとつの重要な検討点はチームへの適合度です。クラックネルとフォグルの現チームに最終候補者のそれぞれがどうフィットするだろうか、という観点でした。

『OPQは非常に綿密な身体的心理学的な選抜プロセスの一部分ですが、極めて貴重な情報でした。誰が候補者として最も適切かについてのジェイムズとベンの直観を、しっかりした心理学的アセスメントでバックアップできたからです。』

結果

2008年10月、ブリストル病院産科医師であるエドワード・コーツが3人目のメンバーとして選ばれました。彼は十種競技のイギリス代表であり、英仏海峡横断チャリティ遠泳チームのキャプテンを務めました。

3人の南極レースは無事成功し、2位という成績を収めました。探検・レースの詳細は次の本やDVDに詳しく紹介されています。

DVD: On Thin Ice(BBC)
本:Race to the Pole(James Cracknell & Ben Fogle)

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

アムンゼン(ノルウェー)とスコット(イギリス)が南極点到達の世界初を競ったのは1911年のことでした。この時はノルウェーの勝利という結果だったのですが、約100年後の2009年1月、この記事にある南極点到達レースが開催されました。

マイナス50度にも達する厳寒の中、約70kgの荷物を曳行して770kmをそりで走破。一位のノルウェーチームの記録は17日と8時間58分、2位のチーム・キネティクは18日と5時間10分。ほとんどの出場者が凍傷や肺炎、低体温症と戦いながらのレースだったそうです(なんともはや…)。イギリスでは大変盛り上がったようで、探検の模様はBBCでは日曜日のゴールデンタイムに5週連続で放映され、記事に紹介された本はベストセラーになりました。

キネティク社は英国国防省研究評価庁が2002年に民営化されたヨーロッパ最大の研究機関です。9500名の社員のうち8500名が研究に従事、うち30%はPhDを有しています。特に人と機械のインターフェイスを研究する部門ではヨーロッパ最大の心理学者集団を擁していると言われています。

チームフィットという面でのパーソナリティ検査の活用。本コラム第23回でご紹介したF1カーレーサーの選考に続いて、異色の職種(?)での活用をご紹介しました。

文責:堀 博美

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