SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

3回に分けてSHLグループ白書『How the pandemic changed our adaptability and resilience』をご紹介しています。前回、「適応力」と「回復力」について、「OPQから予測されるコンピテンシー・ポテンシャル得点がコロナ前より下がっている」という調査結果をお話ししました。最終回の今回は、それでは、私たちはどうしたらよいのか、についてです。

第353回 SHL白書『コロナ禍は私たちの適応力と回復力をどのように変えたか?』(3/3)

サラ・マックリーン(SHLシニア・ディレクター)

この結果は個人や組織にとって何を意味するのでしょうか?私たちはおそらく、自分たちはもろいものだ、とかつてないほど感じています。人間関係を保つことが難しくなり、「通常の」生き方や働き方が完全に考え直され、独立してやっていくことを余儀なくされました。頼れるのは、自分自身とすぐ身近にいる人たちだけです。

職場では、人とのやり取りや人間関係が損なわれました。仕事は「作業」や「やることリスト」に姿を変え、人生の他の側面(「楽しい」ものではなく、単に日常生活)が機能できるように注意深く管理されます。同時に、組織や社会は、「ダイバーシティ・公平性・インクルージョン」の重要性に目覚めよという世論に直面しています。従業員が報酬や認知や経験に対してより包括的なアプローチを要求するようになり、「大量退職時代」は企業が従業員に提案する価値を再考するようさらに大きな圧力をかけています。さらに、ワークライフバランスと柔軟性をめぐる従業員の期待も変わっています。特に在宅勤務ができるかどうか、という点に関してです。

パンデミックは勤務環境に不確実性を生み出し続けています。経営者、人事部、採用担当者は、コロナ禍で、現職者集団と応募者集団で「回復力」と「適応性」のポテンシャル得点が変わってきている可能性があることを考えるべきです。

この経験で多くの人がトラウマ(心的外傷)を感じ続けていることに、疑いの余地はありません。私たちは今、癒しと活性化のプロセスを開始しなければなりません。

米国労働者の90%は共感的リーダーシップが職務満足度の向上につながると信じており、79%はそれが従業員の離職率を低下させると思っています。「共感」は、信頼に基づく組織風土を構築する上で重要な推進力です。しかし、これを実践するリーダーは必ずしも多くありません。今、私たちが癒しのプロセスを始めるとき――つまりコロナウィルスと共存して「大量退職時代」を「大量定着時代」に逆転させようとするとき――、従業員はこれまで以上に共感を必要とします。組織のトップから始めるべきです。リーダーが従業員の声に耳を傾けること、定期的に従業員から率直なフィードバックをもらいそれに基づいて行動すること、従業員一人ひとりの状況やニーズを踏まえたサポートを提供すること、これらを実行する仕組みが必要です。

リーダーはまた、自分の思い込みから離れ、自ら従業員の考えやフィードバックや提案を求めることが必要です。従業員の能力開発を促進し、積極的に昇進や重要ポストへの任用を行うことで、期待し、信頼していることを示してください。これまでの確立されたやり方にこだわるのではなく、新時代に合わせた柔軟な対応と改革が求められています。

米国では約3分の1の従業員が転職先を決めないまま退職を考えています。私たち皆が経験している不確かさ、混乱、不安などを考えると、これは非常に驚くべきことです。生活の激変は、実際に従業員と組織の間のダイナミクスに大きな変化をもたらしました。これからの従業員は物理的または金銭的な結果以上に、柔軟性、幅広い価値や貢献をもとに、職務や会社を評価します。つまり、その仕事は本当にハイブリッドか?リーダーは本当にチームを大切に思い、従業員が社会に貢献できるようにしているか?意思決定は公正かつ透明か?新しい役割を担い新しいスキルを身に付ける機会があるか?会社は私、私の能力、コミットメント、可能性を本当に信じていて、私が活躍できる場を与えてくれるか?

これからの従業員と現在の従業員では、自分たちの生活と仕事を評価する基準が大きく異なります。従業員一人ひとりとのつながり、彼らが求める成長と柔軟性を促進する組織風土やキャリアや仕組みを作ることができない会社は、今後生き残ることができないでしょう。

長い間、多くのビジネスの中核は凍結されていました。中間管理職層は電子メールを上下の階層に回すだけで、意思決定の説明責任や権限委譲を感じられずにいました。信頼に基づく組織を構築したいならば、それがビジネス全体で目に見える形で実行されていることを確認してください。マネジメントチームは意思決定を下す権限を与えられているでしょうか?それとも、官僚主義で身動きが取れない状態でしょうか?

管理職は物事を起こすために存在します。部下のやる気を起こさせ、問題を解決し、機会を特定し、従業員が毎日自分自身と自分の仕事に満足しているようにします。組織とその風土を大きく変える方法の1つは、マネジメントチームにビジネスを運営する権限を与え、稟議や承認を受ける必要性を少なくすることです。彼らにビジネスのビジョンと戦略についての明確な目的とミッションを示してください。すぐに、信頼と権限委譲が浸透した会社であると受け止められるようになります。

私たちは自分たちの仕事を、利益創出だけでなく、より大きな何かと結びつけたいと願うようになりました。サステナビリティ(持続可能性)とインクルージョン(包括性)は、企業が世界の舞台で評判の良い組織として立つために欠かせないものです。組織内で、これらが日常の経験として真実でなければなりません。調査研究の結果は、より多様性があるチームがより大きな結果を達成することを繰り返し示しています。帰属意識の醸成が重要性を増す中、「違いを認めること」と「価値観を一致させること」の間のバランスを見つけることが、組織にとって極めて重要になるでしょう。

従業員はますます、経営者に公正さや、プロセスと意思決定における客観性を求めるようになるでしょう。会社の目的とそれが今日の世界で適切かどうかを吟味することから始めましょう。従業員は活気に満ちたつながりを感じていますか?全員がその目的に関連していて、それは日々の仕事の中で目に見えるものですか?あらゆる部門や職種にわたって個人とチームの貢献を認めて感謝することも、会社の目的とミッションを可視化し、従業員が組織に所属しているという感覚を構築するための優れた方法です。

人生は(当然のことながら)非常に深刻で、多くの人にとって信じられないほどタスク志向になってきました。しかし、人間として、楽しみを持っている必要があることを忘れないでください。社会的なつながりの中でやり取りをする時間を見つけ、個人やチームが一息ついて自分らしくあることができるようにしましょう。仕事は目的地ではなく旅であり、その過程での人間関係や笑い、そして楽しみは、達成された結果よりも記憶に残ることが多いものです。

パーソナリティは時間を超えてかなり安定しているものの、人生の大きな出来事によって変化することが研究で明らかになっています。この2年間、世界はコロナ禍という、稀有で破壊的な出来事による集団的トラウマを経験しました。SHL研究チームがパーソナリティ検査OPQを使用して、この期間にコロナ禍がパーソナリティに与えた影響を調べたところ、コロナ禍の前後でコンピテンシー得点が一貫して低下していることがわかりました。具体的には、「適応力」と「回復力」の平均得点がそれぞれ5%と8%低下し、コロナ禍によって人々がそれらの行動を示すことがより困難になっていることを示唆しています。

コロナ禍の真っ只中、「ダイバーシティ・公平性・インクルージョン」や「大量退職時代」など他の社会問題が起こりました。組織は変化を迫られ、コロナ禍からの回復がより困難になっています。このことは、組織は癒しのプロセスを開始すべきだという明確なメッセージを伝えています。リーダーに求められているのは、共感をもって適応しリードすること、一人ひとりの従業員と心理的契約を結ぶこと、組織全体に信頼を可視化させること、社員の帰属意識を高めること、そして最後に、プロセスを楽しむ時間を見つけること、です。

今こそ私たちが変わるチャンスであり、変わらないことのリスクは非常に大きいです。トラウマに苦しんでいて正しい癒しの方法を知らない社会は、関係者だけでなく組織にも悪影響を及ぼします。リーダーは今、物事が違ってきていることを認めなければなりません。実際、パーソナリティの変化は私たちが苦しんできたことの表れです。優先順位も変わりました(たとえば、利益vs目的)。考え方や文化、優先順位を進化させることのできるリーダーが、明日の繁栄する組織で成功するリーダーでしょう。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

この白書は以下のURLから入手することができます。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/how-the-pandemic-changed-our-adaptability-and-resilience/
(ダウンロードするにはお名前や所属組織名などの入力が必要です)

また、この白書の概要は、当社タレントマネジメントソリューションサイトのコラム「コンサルタントの視点」でもすでに取り上げました。
https://solution.shl.co.jp/success/column/220408skiyota/

コロナ禍の前後のOPQ得点を比較したこの調査。同一受検者が2回受けた結果ではないので、厳密にいえば、「適応力」と「回復力」のコンピテンシー得点が下がったことがコロナ禍によるものかどうか、結論付けることはできません。しかしながら、合わせて1万人以上の大量データを基にしていることを踏まえると、ひとつの可能性として置くことはできるのではないでしょうか。皆様の実感に合っていますか?

(文責:堀 博美)

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