堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループが季刊で配信している「SHL Global Newsletter」の中から記事をピックアップ、日本語に翻訳してご紹介するものです。

前回に引き続き今回もSHLグループの研究成果に関する記事を採り上げました。“The latest research into Age and the OPQ”、パーソナリティと年齢の関係に関する研究です。

第15回 年齢とOPQの関係に関する最新研究

職場におけるパーソナリティ研究は、検査が心理学者用専門ツールから人事実務支援ツールへと進化、発展してきたという興味深い歴史を持つ。

そのような変遷の中、パーソナリティ検査は、より幅広い関係者のニーズに応えなければならなくなってきた。特に、最近の採用市場はもはや地理的な国境に制限されていないことを考えるとなおさらだ。心理測定上の品質確保は従来どおり重要であるが、これら詳細を求めるのは関係者のごく少数である。使い勝手、公平性、受け入れられやすさなどの問題が、同じくらい重要になってき始めた。

このことは、新しい法制が導入されて特定分野にスポットライトが当てられる時、特にそうである。法的理念や法律の条文化プロセスは必然的に、テスト開発者が時にこれまでと異なる新しいやり方で検査の性質を見直さざるを得ないことを意味する。そのひとつの例が、イギリスにおける年齢に関する最近の法律である。

この法律は2006年10月に施行された。この種の法律としてやや異例なことに、心理学者によって非常に期待されてきた。その理由は以下のとおり。

  • 年齢による差別を禁止する法律は、アメリカやアイルランドなど他の多くの国に存在しており、イギリスのテスト開発者は当然予想していた。
  • 様々な年齢グループを保護することは多様化の点でよいことであるため、これまで長年に渡って自発的に研究テーマに含まれてきた。たとえば、SHLでは遡ること1990年ごろから、年齢や性別の傾向を発表してきた。
  • 人口動態的な傾向はGDP(国内総生産)に大きな影響を与えると予想され、経済的に重要である。
  • 年齢というテーマそのものが興味深い。結局のところ、我々はみな年をとる。その影響を調べることは面白い。

この法律の実務面での効果は、経営者に、採用活動においてステレオタイプを避け、その職務に求めるスキルをできるだけ細かく検討するよう、そして、代用的な近道として年齢に頼るのではなくそれらのスキルを直接測定するよう促すことである。

パーソナリティにおける年齢の問題

仕事場面における年齢とパーソナリティに影響する要素は複雑に絡み合っており、そのもつれをほぐすことは難しい。たとえば、以下のような問題がある。

  • 社会には、ある世代の人全員に影響するコホート効果が存在する。戦後の苦しい時期に育った子供たちは、1980年代のサッチャー時代の子供たちとは、質的に異なる教育や社会環境を経験しているだろう。
  • これら年齢による違いを解きほぐす最良の方法は縦断的研究であるが、たとえ小規模なものでも実施が難しい。長期に渡って研究に参加してもらい、何度も繰り返してパーソナリティ検査を受検してもらえる人々を集めることは途方もなく困難である。
  • 労働者集団における年齢は、性別や勤続年数、職位とも結びついている。これらの属性が同等になるよう回答者サンプルをマッチングさせることは、非常に難しい。
  • 通常の市場調査の原則は、言葉や国を超えた多くの集団からサンプルをとることである。しかし、検査の回答者はボランティアであり、ボランティアのサンプルが他の労働者母集団と必ずしも同じようにふるまうとは限らない。
  • 労働者集団では16才以下(学生)や60才もしくは65才以上(定年)が少ないため、パーソナリティにどんな変化が起こっているか、限られたデータしかない。

年齢とOPQ

OPQは職場におけるパーソナリティの検査である。上記に挙げたような問題のいくつかを体現している。

  • 1984年の最初の開発以来、いくつかの改訂や調整、更新がなされてきた。検査自体が進化してきたため、項目レベルでの縦断的研究は有益でない。
  • 仕事ベースの検査であり、「評価」という大事な場面で受検されるものである。
  • 仕事場面で実施されるため、バランスのとれた受検者集団を得ることが難しい。
  • 大学新卒者、管理専門職に使われることが多い。失業者、定年退職者、ブルーカラー職の受検者は少ない。

単一の研究でこれら全ての問題を克服することは不可能だろう。イギリスにおける年齢とパーソナリティの問題を理解し、示唆を与えることができるような、長期に渡る一連の研究が必要である。

SHL白書「年齢とOPQ」は、現時点での状況を要約し、実際のイギリスの受検者集団における年齢や性による傾向を探ったものである。含まれる研究は4つ、サンプル規模は800人から50,000人、評価色の強い場面とそうでない場面の両方がある。

結果要約

  1. OPQ因子のうち、年齢が高くなるほど得点が高い/低いという一貫したパターンを示すものは少数である。
  2. それら(少数の)OPQ因子は、その内容を見ると一般人が直感的に納得できるものばかりである。
  3. 上記の傾向もその程度は小さい。(最も大きなものでも標準点で1以下。)
  4. グループ差よりも個人差のほうがはるかに大きい。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

記事に取り上げられている法律は「雇用均等(年齢)規則2006」、雇用における年齢差別を包括的に禁止するものです。それに遅れること1年、わが国でも昨年、雇用対策法が改正され、募集・採用時に年齢制限を設けることが禁止されました(2007年10月1日施行)。日本の場合は、少子高齢化の急激な進行の中、定年を迎えた中高年者や育児が一段落した女性、就職氷河期に卒業して正社員になれなかった年長者らの活用を見据えた雇用対策としての意味合いが強いようです。

さて、訳の中で詳しいことは省略しましたが、年齢グループ別のOPQ集計結果から年齢とパーソナリティの関係についていくつか挙げられています。たとえば、
年齢が高くなるほど:

  • 外向的でなくなり、謙虚になる。
  • 感情をコントロールできる
  • 客観的なものの見方をする

など、いずれも「一般人が直感的に納得できるもの」です。ただし、年齢差よりも個人差の方が大きく、個人のプロファイルを解釈する際は、ほとんど年齢の影響を加味する必要はありません。日本エス・エイチ・エルでも毎年、基礎資料として受検データを様々な切り口から集計しており、年齢についてはほぼ同様の傾向が見られることが確認されています。

文責:堀 博美

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