堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はオンライン版ハーバード・ビジネス・レビューで2016年3月16日に掲載されたリーダーシップ論に関する記事をご紹介します。筆者はツイッター社グローバル教育・組織開発チーム長であるメリッサ・ダイムラーさんです。

第203回 リーダーシップ開発が職務上でなければならない理由

ツイッター社でグローバルのトップリーダー100名を集めて開催した先日のリーダーシップ・サミットで、用意された議題は戦略的方向性について話し合い、リーダーシップチームとして足並みをそろえることでした。しかし、サミットの前日、何人かの幹部が去るというニュースが漏れ、話し合いのコンテキストが変わりました。

あなたもリーダーとしてこのようなコンテキストの変化を経験したことがあるはずです。ここ10年間、世の中は、命令・コントロール的なリーダーシップスタイルから、よりフラットで協同的なアプローチに変わってきました。今、私は、別の変化が起こりつつあると思います。コンテキスチュアル・リーダーシップ(contextual leadership)への動きです。アンソニー・メイヨー(ハーバード・ビジネス・スクール Director of the Leadership Initiative)は次のように述べています。『21世紀で成功するには、ビジネスが行われている、進化しつつあるコンテキストにリーダーが注意を払うことが必要です。』コンテキスチュアル・リーダーは、部下が新しい課題やチャンスの性質を理解してそれにどのように対応するかを助けることによって、変化への適応を促進します。

今、「コンテキスト」の重要性ということがますます言われるようになった理由は何なのでしょうか?ひとつの理由は、大きな技術的転換によって我々を取り巻くコンテキストがより急速に変化しているように思われることでしょう。このため、より多くの人がより多くの時間、よりコンテキストの中で仕事をしているということになります。簡単な例を上げると、あなたが通常勤務時間外にSlackやGoogle Hangoutで同僚と接している時、あなたは「仕事」と「私的」という複数のコンテキストの中で同時に動いています。しかし、仕事場面だけでも、コンテキストは急増し、同時に変化しています。例えば、テクノロジーのおかげでより多くの人や部署、部門と協同することが可能になったため、一緒に仕事をする人の数は増えました。職種をまたぐチームで働いたり、時差を超えて働く人も増えました。CEBの2014年の調査では、60%の人が日常的に少なくとも10人と連携して仕事をしています。

つまり、リーダーはこれらのコンテキストに意識を向けなければなりません。プロジェクトを前進させようとするならば一層そうです。例えば、ツイッター社で我々はフィードバック/人材マネジメントプロセスを変えたいと思っていました。そのために、デザイナーやエンジニア、データ分析者を含む会社全体で職種をまたいだチームを関与させたいと思っていました。異なる建物、異なる時差、異なる国にいるにもかかわらず、全員が、どの決定がなされていないか、中間チェックポイントにいつ到達したのかなど、プロジェクトの現状を常にわかっていました。これが、テクノロジー・ツールの賢い使用であると同時に、コンテキスチュアル・リーダーシップの成果です。

社員のコンテキスチュアル・リーダーシップ・スキルの開発を支援するために、会社の次世代リーダーの教育研修を担当する我々は、「学び」について少し違った風に考えなければなりません。トレーニングセッションやオンラインのチュートリアルでなされるような「学び」は少なくなり、職務の上での継続的な「学び」が増えるはずです。つまり、「学び」をサポートして奨励するような仕事環境を作り出すということです。個人が自分自身で新しいスキルを学ぶことは少なくなり、学ぶ環境を使って互いに学び合うということが増えるような環境です。

うまくいけば、このような学びが社員に新しいスキルを教え、結果として会社全体で共有された知識となります。おそらくより一層重要なことは、このことがまた、何かより大きなものの一部でありたいという、多くの社員の深い欲求を満たすことです。過去、私がマネジメントした人々は、自分の時間やエネルギーを自分一人でやれるような仕事に集中することを好みました。今は、自分自身や会社の成長に大きなインパクトを与えることができるだろうと思えるプロジェクトで働くことを重視します。

我々のサミットでコンテキストが変化した後、当初の計画通りの議題で続けることはできたかもしれません。しかし、我々はその代わりに、幹部の退職とそれによって発生するあらゆる問題に対処することを選びました。引き続いての会話は私が自分のキャリアで経験したどんなものよりも率直なものでした。我々は新しい状況の課題に直接触れ、リーダーの一人が「現実をありのままに受け留めた上で楽観主義」と名付けたような、バランスのとのとれた健康的な議論に関与しました。2日間の終了時点で、我々は明確な優先事項のもとに歩調をそろえ、将来についてのインスピレーションを抱くことができました。我々はまた、自分たちのチームに対して、行く手にある課題とチャンスについてのコンテキストを提供し、今度は彼らにインスピレーションを与えることができるようにもなりました。

テクノロジー・ツールは進化しています。我々の働き方や学び方も進化しなければなりません。人々の一体感への欲求と、ビジネス背景のますます急速な進化の両方にとって、より協同的なチームを作り、より豊かで継続的な学びを促し、素早く変化する世界にある膨大なチャンスをつかんで活用するための冒険の旅に社員全員を巻き込むことが必要です。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

コンテキスト(context)とは「文脈」と訳されることの多い単語です。「文中での言葉の前後関係」から、「場の状況のこと、状況の背後にある事情」を指します。コンテキスチュアル・リーダーシップ(contextual leadership)は2005年にアンソニー・メイヨーとニティン・ノーリアによって提起された考え方ですが、進化・発展するビジネス環境を理解し、その発展のトレンドを最大限に活用する力、と私は理解しています。

これまで時代とともに様々なリーダーシップ論が注目を集めてきました。変化のスピードがますます急速化する現代、この「コンテキスト」という言葉に頻繁に出会いそうです。

(文責:堀 博美)

バックナンバー

2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年

学会発表論文