SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループが季刊で配信している「SHL Global Newsletter」などの中から記事をピックアップ、日本語に翻訳してご紹介するものです。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はある国際的な大手銀行が、SHLツールを活用して一人当たりの採用コストを37%削減した、という事例です。

第19回 ケーススタディ:大手国際銀行A行

背景

ヨーロッパに本社を置く国際的な大手銀行A行は、新卒の採用選考に膨大な時間と費用をかけていました。毎年の新卒採用数は約250名です。新卒市場が洗練されていく中、優秀な学生を獲得するためには選抜プロセスを改善し続けることが必要です。その必要性は認識しながらも、A行はコスト上昇を懸念していました。特に問題になったのはアセスメントセンター実施のコストです。人事担当者や上級管理職からかなりの時間とエネルギーを奪ってしまいます。

問題意識

A行が明らかにした目標は次の3つです。

  1. オンラインによる採用システムを改善する。それによって、欲しい人材を他社よりも先に識別し、確保する。
  2. 就職先としての魅力度を上げる。学生と早期にやり取りし、PRの機会とする。
  3. 内定者の質を向上させると同時に、一人当たりの採用コストを低減する。

これらの要件を満たす解決策をSHLが提案しました。

解決策

採用プロセス早期の段階で、コストを上げることなく応募者の質を上げるための鍵は、応募者のポテンシャルを的確に示す、コストパフォーマンスの良い適性テストを実施することでした。SHLの提案に従って、A行は第一次選考に「AccessAbility」の計数テストを導入しました。このテストは非常に短時間で実施できるオンラインテストです。受検者は自分の都合のいい時間に実施できます。問題項目は膨大な項目プールから引っ張られてきますので、受検者によって異なります。

結果

「AccessAbility」の導入によって、A行は採用プロセスの早期に優れた学生を確保できるようになりました。この点は、アセスメントセンターに呼び込んだ学生の合格率が40%アップした事実にも現れています。また、面接を担当した管理職の多くが、明らかに不適格な学生に会うことが少なくなった、と人事へコメントしてきました。

また、このオンラインアセスメントとコミュニケーションを通して、A行は非常にプロフェッショナルで高度、先進的だと学生に印象付けることができたと考えられます。

最後に最も重要なことは、「AccessAbility」導入によって、一人当たりの採用コストが1200ポンド節減できたことです。SHLへの支払いを計算に入れても、37%以上節減できたことになります。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

急激な景気悪化を受け、採用コストの削減はどの企業でも真っ先に取り上げられるテーマだと思います。日本でもオンラインによる適性検査の実施はかなり浸透してきました。当社の玉手箱シリーズを始めとするWebテストの受検者はすでに紙テストのそれを大きく上回っています。コストパフォーマンスだけではなく、企業側の実施管理の手間なく結果をすぐに得られるという実務上のメリットも大きいのではないでしょうか。

反面、受検者が自分の都合の良い時間や場所で受検できることから、カンニングや代理受検などのリスクがあります。それを防ぐためには、テスト実施の趣旨や意味を受検者にきちんと説明することが大切です。何の目的でテストが実施されるのか、結果はどう使われるかなど、受検者が理解していれば、むちゃな行動は抑制されます。また、テスト後のプロセスで、評価結果を確認できるような別のしくみを用意することも重要です。

この事例では適性テストの後、アセスメントセンターを実施しています。アセスメントセンターは実際の職務に近いシミュレーション演習課題を複数与えてその行動を多面的に評価するものです。日本の採用場面では会議場面を模したグループ討議演習がよく用いられます。そのように、適性テストや面接だけでなく、行動を客観的に評価できる何らかのステップを入れることが有効だと考えられます。

文責:堀 博美

タレントマネジメ
ントコラム 日本エス・エイチ・エルの人事コンサルタントの視点

バックナンバー

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年

学会発表論文