堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループのネット配信「SHL Newsletter」や広報誌「SHL News」、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は、SHLグループChief Product OfficerであるPaul Levettが広報誌SHL Newsに寄せたエッセイをご紹介します。

第68回 ベストな人材を採用するチャンスをつかめ

背景

我々が未曾有の経済不況から回復しつつあることは確かですが、いくつか名残があります。特に次の3点が、採用プロセスだけでなく、会社の評判そのものにマイナス影響を与える可能性があります。

  • かつてないほどに年長で有能な、多くの失業者がおり、彼らはほぼどんな仕事でも喜んで就職しようとしています。
  • 退職予備軍−優秀な同僚が去るのを見送り、ボーナスがカットされるのを見てやる気を失っている社員は、もしチャンスがあれば、自分も退職したいと考えています。
  • 空きポジションを素早く埋めるよう圧力をかけられる人事部門は、社外に目を向けています。レベルの高い応募者が数多くいるからです。(このこともまた社員のやる気を失わせます。)人事部門はさらに、不合格の候補者に対し知らず知らずのうちによそよそしい態度になっているかもしれません。

ソーシャルメディアが発達した現代、自社のやる気を失った社員からや、採用で嫌な経験をして不合格にされた候補者からのネガティブなニュースは、速いスピードで広がります。会社の評判に対するリスクは明らかです。

しかしながら、リスクの裏にはチャンスがあります。不況の余波の中、人事部門は、会社の評判に関して、今やマーケティング部門と同じくらいの影響力を持ちます。

それでは、どうすれば、これらのリスキー要因をあなたに有利になるようにすることができるのでしょうか? 社内的には、会社は自社の社員を個人レベルで理解しなければなりません。1対1のコーチングやメンタリングのプログラム、キャリア・プランニング施策が、エンゲージメント・プロセスを始める方法です。採用プロセスに巻き込むことも、ある社員を再エンゲージするのに必要不可欠でしょう。社外的には、公平で専門的、表面的妥当性が高く、候補者にフィードバックをきちんと与えるような採用プロセスが、もはや「あった方がいい」ものではなく、「欠くことのできない」ものなのです。

世界有数の通信会社Everything Everywhere社がSHLと協力して創り上げた新卒採用プログラムは上記の考え方を取り入れたものです。7つのプログラムのそれぞれに対し、昨年度は4000人の応募者がありました。オンラインによる応募の段階で能力テストVerifyを受けさせ、候補者の適性を評価します。続いてTalent Screenerでシナリオに基づいた一連の質問を提示し、候補者に対するrealistic job previewとすると同時に候補者の適合度を評価します。この方法によって候補者はEverything Everywhere社と率直でオープンな対話をすることができ、心の中で自分が応募する仕事に自分を置きやすくなります。

Everything Everywhere社は各プログラムでベストな人材を採用したいと考えていますが、同時に、採用経験が嫌なものであった場合、不合格になった全ての候補者がブランドの評判に有害な影響を与えることも認識しています。少なくとも候補者の3人に1人は同社の顧客でもあり、ポケットの中に同社の製品を持ち運んでいるのです。よって商売上の反動は顕著でしょう。

人事部の進むべき道はシンプルです。与えられたチャンスをつかみ、空席を素早く埋めなければという誘惑に抵抗する一方で、採用プロセスに高いレベルの専門性と透明性を取り入れましょう。社内候補者のことも忘れてはいけません。そして、一度入社させたら社員のエンゲージメントを確保するよう努めます。

人事チームは今や、会社の評判を守ることと密接な関係を持ちます。そして、その責任を前向きに受け入れて適切に対処すれば、会社にとってのメリットははかりしれません。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

Everything Everywhere社はイギリスの携帯通信大手プロバイダーであるOrange社とT-mobile社が2010年7月に合併して生まれました。それぞれのブランドはそのままという戦略をとり、契約者数は合わせておよそ3000万人とイギリス最大です。

日本ではまもなく新卒採用選考のオンシーズンを迎えます。学生にとっては深刻な就職難、企業側にとっては少数厳選採用、と厳しい環境です。記事にある「採用プロセスの専門性と透明性の確保」はそのまま我々にもあてはまる意味深い示唆であると感じます。

文責:堀 博美

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