SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は、SHLグループのブログより、欧米でいま問題になっているThe Great Resignation(大量自主退職時代)に関する記事をご紹介します。

第343回 キャリアモビリティと能力開発が、大量自主退職時代の問題をいかに解決できるか?

「The Great Resignation(大量自主退職時代)」に対する答えは、キャリアモビリティ(可動性)と能力開発かもしれません。リーダーとして、あなたは、社員ひとりひとりの能力開発にどう皆を巻き込むことができるでしょうか。

2021年12月9日 クリスティーナ・イニゲス

世界中の、そしてほとんどすべての業界のリーダーシップチームが大量退職に苦しんでいます。パンデミック時代が大規模な辞職という現象を引き起こしました。理由はいくつかあります。人々が自分の価値観の優先順位を再検討して特定の風土に自分を合わせたくないと思ったり、また、特に女性は働くこと自体から離れたり、です。

管理職たちは、人員減や労働力不足、そして、既存スタッフのスキルアップや再教育が切実に求められる中で、いかに生産性を維持して目標を達成するか、という問題に立ち向かっています。

これは難しいように聞こえますが、解決できない問題ではありません。この問題を解決するために充てられる膨大な量の研究がありました!私たちは、何が人々を定着させるのか、どのように人々を引き込むのか、そして何が人々をやる気にさせるのか、を知っています。

リーダー(管理職)のせいで、そして、キャリアモビリティ/能力開発のせいで、人々が退職したり留まったりすることは昔からよく知られています。私の前回のブログでは、リーダーが共感を育んでチームとの信頼を高めるために採用できる、いくつかの戦略について述べました。今日は、キャリアモビリティと能力開発について述べます。

SHLは最近、Lighthouse Research and Advisoryと協力して、タレントモビリティがいかに収益に直接影響を与えるかに関する調査を行いました。2000人を超える人々(経営者と従業員の両方)を対象に、キャリアモビリティの所有者は誰か、成功指標は何か、そしてどのような障壁が存在するかについて詳しく調べました。

キャリアモビリティを実現する責任があるのは、管理職、幹部チーム、人事、従業員など、全員であるという回答が圧倒的多数でした。調査によると、もしキャリア開発の機会があれば、88%の従業員が仕事に長くとどまると回答しています。

これが、人々をどのように定着させるかという問題の解決に役立つ決定的な鍵です。すべての従業員の能力開発に全員が関与することに役立つ3つの戦略があります。

  1. 適切なリーダーシップ
    人々をマネジメントする感情知能に長けた人を採用しましょう。人々をリードするとは、課題を推進してワークフローを管理することだけではありません。実は、全体論的なアプローチですべての人の面倒をみることのほうがはるかに重要です。共感的なリーダーは、仕事を成し遂げることだけに集中するリーダーよりも、チーム内ではるかに多くの成功を後押しします。
    リーダーは従業員のキャリア、成長、能力開発に真剣に関心を持つ必要があります。何が従業員にやる気を感じさせるのか、従業員の能力開発機会はどこにあるのか、について好奇心を持ってアプローチすべきです。強みの領域を増やし、成長の必要な領域での変化を促すために、コーチングを提供すべきです。
    これは、心を読み取ることから起こるものではありません!信頼や、自由回答を求めるオープンエンドの質問、定期的な1対1のミーティング、そして何よりも、耳を傾けることを通して起こるものです。
  2. 適切なツール
    全員がモビリティに関与できるようにするもう1つのすばらしい方法は、SHL Mobilizeなどのツールを使用することです。このプラットフォームは、人事チーム、リーダー、経営幹部に、パーソナリティや意欲やポテンシャルを基に、自社の従業員の最適なポジションを見つけるよう促します。さらに、個人にとっても、自分自身についてもっと学ぶことを助け、自分の成長に役立つ意識を促進することができます。
    会社全体という大きな規模での全員のキャリアモビリティ!もちろん、これは他の2つの戦略と一緒に用いる必要があります。
  3. 適切な風土
    「風土」とは含みのある単語であり、それにアプローチする方法はたくさんありますが、ここでの意味は、キャリア開発とモビリティを自分のものとしてとらえるすべての人々に、一貫性と正常感を構築することです。モビリティをあなたが行うすべてのことに組み込んでください。常設の議題にし、能力開発を支援するツールとプログラムに投資し、より大きな意義と目的を求める従業員をサポートし、オープンで率直な会話を頻繁にあらゆるレベルで行ってください。この会話や能力開発行動が当たり前のことになればなるほど、モビリティを自分のものとしてとらえることがどううまくいくか、にすべての人が慣れてきます。
    最初は試行錯誤があるかもしれませんが、最終的には会社としてうまくリズムに乗れます。フィードバックを基に試してみようとするオープンな意志があれば、全員がキャリアモビリティを自分のこととしてとらえる風土を育む可能性が高まります!

大量自主退職時代は、雇用主から従業員に力を移動させました。パンデミックが人々に自分のキャリアや目標、労働条件を再考させたからです。この傾向は継続しており、従業員の定着がこれまで以上に重要であり、キャリア開発の機会を提供する組織が成功する組織である、という明確なメッセージを企業に対して発信しています。

リーダーとして、一歩下がって人事戦略を見直してください。スタッフに十分なキャリア開発機会を提供してきましたか?もしそうでなければ、それを作り出すためにあなたは何をできますか?従業員の話に耳を傾け、従業員の成長に役立つ適切なツールを用意し、適切な風土を確立することを始めれば、大量自主退職という不確実さを乗り切って、会社一丸でより強くなれるでしょう。
大量自主退職時代のインパクトのリスクを減らしながらどう収益を大幅に増やすことができるかについては、Lighthouse Research and Advisoryのリポートを読んでください。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文はこちらです。

https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2021/how-career-mobility-can-solve-the-great-resignation-blues/

著者はSHLのブランド・広報の責任者です。

欧米では離職する人が急増しており、”The Great Resignation”として話題になっています。昨年夏、アメリカでは離職率が過去最高の水準に達しました。リモートワークなど働き方が大きく変わった中、ワクチン普及と経済回復基調を受け、自分のキャリアを見直す人々が増えたことが要因である、とされています。日本ではまだそれほどの動きはないようですが、今後はどうでしょう。

本ブログによれば、「キャリアモビリティ」(人材の可動性)と「能力開発」が解決に向かう鍵です。伝統的な日本企業では社内異動や教育訓練機会は当たり前。それが大量自主退職トレンドの歯止めとなるのでしょうか。はたまた、昨今よく話題になるDX人材に代表される専門重視の動きが労働力流動化を後押しするのでしょうか。

(文責:堀 博美)

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