堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今求められるリーダー像としてCEBが提唱する「エンタープライズ・リーダー」について、今回は3回連載の最終回です。人事によるリーダーシップ施策がどう変わらなければならないか、3つのポイントにまとめています。

第186回 エンタープライズ・リーダー(3/3)

リーダーシップ投資において変更すべき3点

1.リーダーシップに関する考え方を変える。個々のコンピテンシーを評価・開発するだけではダメ。

現在のリーダー世代は、一人で成果を出して成功してきた先輩や上司を見て自分のスキルを磨いてきました。長年リーダーたちはそうやって上をまねてきましたが、その考え方自体を変えてもらわなければなりません。人事部長にとっては、アセスメントや能力開発の予算を「スキル」だけではなく「考え方」に投資することによって、エンタープライズ・リーダーの数を12%まで増やすことができます。

自分の考え方を変えなければならないとリーダーたちに気づいてもらうために、ゼネラル・エレクトリック社(GE)はExperienced Leaders Challenge(ELC)という研修プログラムを開発しました。このプログラムは、リーダーの行動が組織風土にどう影響するかを自分で発見するためのエクササイズで始まります。例えばミュージシャンの観察。奏者ひとりひとりがばらばらに自分のやり方で演奏した場合、グループダイナミクスや結果がどう変わるかを見ます。受講者にはエクササイズの後、自分の経験を持ち帰って同僚と共有し、自分が学んだこと、その意味についてとことん話し合うよう促されます。

続いての「ビジネス単純化課題」は自己発見エクササイズでの気づきを確かめるものです。「単純化」することで顧客サービスや業績の向上、煩雑な事務手続きの低減につながるようなビジネスプロセスをリーダーに特定してもらいます。エンタープライズ・リーダーシップを進めるためには、課題は単純なコスト削減以上のものでなければなりません。さらには、企業戦略に関連し、複数のグループに関わるものでより大きな事業価値を解き放つものであることが重要です。

GEのCEOジェフリー・イメルト氏は、この「単純化」プロジェクトで会社は2億5000万ドル節減できたと報告しています。個別のプロジェクトから上がった利益以上に、新しいリーダーシップの考え方がプロジェクト全体で達成された成功の基礎となっています。

2.協力しやすくするために「見える化」に投資する。

エンタープライズ・リーダーは独自の情報を持っています。誰から助けをもらえ、誰を助けることができるか、知っています。残念なことにほとんどのリーダーは、いつギブしていつテイクするのか、いつプルしていつプッシュするのか、を理解するために必要な情報を持っていません。そういう情報を集めるのは時間もお金もかかるからです。自分自身のビジネスに集中するあまり、適切な情報を見つける余裕がなく、適切なレベルの透明性を作り出すことができません。そして、彼らが会社全体に焦点を向ける際、行動のピントがずれてしまって、チャンスを逃したり、努力が無駄になったり、挫折したり、という結果になってしまいます。

いくつかの企業は、リーダーの総体的な強みと弱みを「見える化」することでこの問題を解決しています。リーダーが気軽に共有し、それに基づいて行動するような情報です。様々なリーダーの能力がビジネスニーズにどう適合するかを示すことで、エンタープライズ・リーダーの数は9%まで増やせます。「見える化」とは各リーダーの個人的な強みと弱みを公表することではありません。様々なリーダーやチームの能力が企業の戦略目標や成熟段階にどう合致しているのかを積極的に説明することです。

デザイン会社IDEOは、毎年のビジネス・レビュー・プロセスを通して、リーダーが会社全体に貢献できる機会を自分で見つけて促進できるようにしています。まず、各地のリーダーが前年の自部署のプロジェクト・ポートフォリオ・レビューの方向性を決めるフレームワークを作り出します。そのフレームワークをもって、その地域の社員がチームで結果を評価します。各チームの成果をその地域の前年の総合的なレビューに組み込み、それを使って翌年のニーズや機会を予測します。

この社員主導のポートフォリオ・レビューは、その地域のリーダーの翌年の計画に直接送り込まれるだけではありません。重要な点は、リーダーがそれを使ってその地域の「物語」を作り出すこともできることです。「物語」は、翌年に自分たちがどういうところでインパクトの大きなサポートを提供できるかを他のリーダーやチームに知らせる、公式のルートです。リーダーはポートフォリオ・レビューの結果を3分間のビデオクリップに編集し、専用のサイトに掲示します。最終的に、その地域の「物語」を通じて、全社のリーダーや社員がどこにスキル・ギャップが出つつあるのかのパターンを素早く見つけ、互いが連携することでそのギャップを埋めるよう動くことができます。

3.報酬についてのリーダーの見方を変えるために、リーダーの評価を変える。

リーダーの97%はエンタープライズ・リーダーシップのカテゴリーに入るような目標を少なくとも一つは持っています。それなのにリーダーたちは、同僚を助けることは自分自身の利益を脅かすと言います。他者の仕事への貢献が給与に反映される、と述べたリーダーは3分の1にすぎません。全社レベルの協力に関する目標は、リーダーを行動に駆り立てるほど具体的でなかったり、リーダーがそれらの目標を達成する様々なやり方をすべて網羅するほど正確でなかったりすることが多いです。貢献は隠され、報われません。

人事部長はエンタープライズ・リーダーシップに光を当てて、給与に反映させる必要があるとわかっています。しかしながら、エンタープライズ・リーダーの数を一気に増やすには、それに関連する基準の数や重みを増やす代わりに、報酬についての認識を根本的に変えなければなりません。

ある小売会社は、リーダーが協力して作成・共有する目標管理制度を導入しています。同僚の目標の中で自分がインパクトを与えることができる点を見つけ、それに従って自分の目標をカスタマイズします。

次のステップ:人事部長が今できること

人事部長というものは年月をかけて自分が作り上げてきたリーダーシップモデルを簡単に変えたり捨て去ったりすることを嫌がるものです。幸いにもエンタープライズ・リーダーシップは新しいコンピテンシーモデルを必要としません。リーダーが自分のスキルをうまく活用することを妨げるような、理性的・経済的バリアを取り除くことが焦点です。人事部長は以下の行動をとることで、自社のエンタープライズ・リーダー育成をスタートすることができます。

  • データ主導のアプローチを使って、自社のエンタープライズ・リーダーシップを評価する
  • 自社の、エンタープライズ・リーダーシップを阻害する理性的・経済的・心理的バリアを明らかにする
  • 同僚の幹部やCEO、取締役たちに、将来のリーダーシップ・ニーズやバリア、解決策を伝える
  • 理性的バリアが最も大きい部署で、新しいリーダーシップ・ソリューションを試す
  • 社内全体で、エンタープライズ・リーダーシップへの投資を展開する

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文は以下のURLから入手できます。(ダウンロードにはお名前などの入力が必要です。)
https://www.cebglobal.com/sites/exbd/top-insights/leadership/the-insight/index.page

めまぐるしいスピードで変化する現代、リーダーシップのキーワードは「ネットワーク」と「ファシリテーション」です。

文責:堀 博美

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