SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLグループのブログ記事をご紹介します。

第390回 異なる文化間で公平なアセスメント

異なる文化間で公平なアセスメントを構築することの難しさと、それに対して何ができるかを学びます。

私はアセスメントセンター(本ページ下部の訳者コメント参照)を実施しており、観察用のシートに「発見した能力開発の領域について直接的かつ明確に言及していない。」と走り書きしています。この記録は、この受検者がこのコンピテンシーについて最高点をとることはできないことを意味します。結局のところ、私たちが求めているのは、あまり「回りくどい話し方」をせずに自分の考えを直接述べ、重要な点に明確に対処できるマネジャーです。しかし、私は心の中で「ちょっと待って。私は今、あまりにも『ドイツ的』に考えていないか?『直接』とはどういう意味だろう?」と考えます。その受検者が相対した「従業員」役は、メッセージを非常に明確に理解していました。

アセスメントセンターの次の演習は、コンピテンシー面接です。私のメモには「自分の貢献を明確にせず、『私』ではなく『私たち』を多用している」と書かれていました。私はまた不公平になっていますか?私はドイツの個人主義的な文化で育ち、幼い頃から個人の貢献や成功について話すように訓練されてきました。しかし、ほんとんどの国は集団主義的な文化であり、自分自身の成功を強調することはむしろ一般的でないことが多いです。このタイプの文化では、人々は自分自身をグループの一部とみなしているため、アセスメントの状況設定の中でもそのようにコミュニケーションをとる傾向があります。「では私はどうすればよいのか?私たちが求めている望ましい行動やスタイルは何だろうか?」私は考え、混乱しています。

上に挙げた2つの例は、異なる文化を持つ人々のアセスメントにおいて評価者が直面する課題の一部を浮き彫りにしています。実際、アセスメントセンターやディベロップメントセンターはあらゆる側面で文化の影響を受けます。文化的多様性により、バイアス(偏見)や誤解、ミスコミュニケーションが生じる可能性が非常に高いのです。

リーダーシップとフィードバックのスタイル

リーダーシップのスタイルは文化によって異なります。中国における優れたリーダーは、英国における優れたリーダーとは大きく異なり、リーダーシップスタイルの違いがアセスメントセンターやディベロップメントセンターでも同様に現れる可能性が高いです。西洋諸国では、部下が上司にフィードバックを行うことは歓迎されていますが(360度フィードバックなど)、アジアのほとんどの国では受け入れられません。私は、中国の組織に360 度フィードバックを導入しようとして失敗する顧客を多く見てきました。実際、ほとんどの文化では、ドイツ人のように率直かつ直接的にフィードバックを与えることはありません。文化によっては、コミュニケーションが一方向、つまりトップダウンでしか機能しない場合もあります。したがって、受検者と(受検者の)上司役とのやりとりを観察し、上司に公然と反対する受検者を高く評価するロールプレイ演習は、一部の文化にとって不利であり、公平な演習とは言えません。

グループ演習

複数の受検者を同時に評価することができ非常に効率的ですが、この手法は信頼性が低く、方法論に問題があります。他の受検者は訓練された評価者ではなく、1対1のロールプレイ演習などとは対照的に、望ましい(望ましくない)行動を引き起こす事前に定められたスクリプトに従うわけではありません。そのため、グループ演習の結果は実際には比較できず、他の受検者の力に大きく左右されます。さらに、若い頃から自分自身や自分のアイデアを「売る」ことを学ぶ人たち(アメリカ人など)もいれば、特に集団主義的な文化において目立たないように、集団のコンセンサスに従うようにと教えられる人たちもいるという、文化的な差異という問題を加えたら、予測妥当性はごくわずかです。

パーソナリティモデル

西側諸国で広く受け入れられているパーソナリティモデルは、他の文化ではあまり役に立ちません。たとえば、有名なビッグファイブは個人主義的な文化の影響を受けています。ビッグファイブはアセスメントセンターで使用される多くのパーソナリティモデルに影響を与えるため、ほぼ自動的に特定の文化グループに不利になります。研究によると、西洋文化では、特質、意見、目標、その他の非常に個人的な特徴が、一貫し安定したアイデンティティの基礎を形成していることがわかっています。しかしアジア文化では、このような連続性が、一般社員やマネジャーなどの役割によって形成される場合があります。したがって、研究によると、性格特性と行動の関連性は、アジア文化では西洋文化に比べて低い可能性があり、パーソナリティに関するアンケートの妥当性も同様であることが示唆されています。

組織が、最も基本的な検討すべき点の1つは、(将来の) 従業員やマネジャーが(通常は本社によって形成される) 組織文化にどの程度適応することを期待しているか、またはどの程度文化差を受け入れて、慣れた行動をとることができるようにするか。優劣はなく、どちらも、スタッフやリーダーを選抜または育成する際の組織文化とアセスメントに強い影響を与えます。

異文化を包括するアセスメントへ向けて

最も異文化に適用可能なアセスメントソリューションの1つは、より客観的で偏見の少ない人事決定を可能にするオンラインアンケートです。このための前提条件は、国際的に検証されていることです。SHLは、最もよく使用されるアセスメントツールであるOPQ(Occupational Personality Questionnaire)について、ローカル比較グループを提供しています。これにより、受検者を同じ文化的背景を持つ人々と比較できるため、異文化間のバイアスが軽減されます。(強制選択手法が社会的に望ましい回答を大幅に減らすことが研究によって示されているにもかかわらず、中国など一部の文化ではアンケートは一般的に普及しておらず、回答者は社会的に望ましい回答をする傾向があり、結果が歪められることを完全に防ぐことはできません)。

文化的バイアスを軽減できる可能性がある、もう1つの方法は、受検者と同じ文化をもつ、またはその文化での生活した経験を持つ評価者を用意することです。こうすることで、すべての文化が望ましい行動を発揮するチャンスが同じになるように、「単一文化」で評価するよりも行動指標を「より緩やかに」解釈することにも役立ちます。

私の意見では、異文化を包括するアセスメントというテーマは、これまで以上に重要度が高まっています。しかし、多くの場合、最初の重要なステップは、これらの複雑さを認識することです。さらに、異文化間で公平なアセスメントを課題としてだけでなく、時間とエネルギーを投資する価値のある貴重なものとして捉えることが重要です。

上述のアセスメントセンターでは、私は他の評価者と自分の考えを率直に共有しました。次に、リーダーシップやフィードバックのスタイルなど、求められる行動について明確な最低基準を定義しました。他のコンピテンシーについては、文化間の違いを反映するように、事前に定められた行動指標を少し緩やかに解釈することにしました。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2023/the-challenges-of-cross-culturally-fair-assessments/

アセスメントセンターとは、仕事場面を模した複数の演習(プレゼンテーションや部下との面談など)を通して、受検者の能力を多面的に評価する手法です。受検者の能力開発を目的と行う場合にはディベロップメントセンターと呼ばれます。

(文責:廣島晶子)

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