堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は、サクセッション・プランニング(継承計画)をテーマとした調査結果に関する記事です。

第101回 あなたの上司は明日も仕事にきますか?

SHLの調査によれば、この1年間、英国企業の約半数でリーダーシップに予定外の変化があり、それがビジネスに弊害をもたらしました。ほぼ5社に1社(19%)が『リーダーシップや方向性がなかったため損失や成長鈍化があった』、ほぼ3分の1(32%)が『社員のやる気が下がった』と述べています。この調査はサクセッション・プランニング(継承計画)に関するもので、英国に本社を置く様々な業界企業の人事意思決定者258人が回答しました。

調査対象者のほぼ半数が『リーダーシップの予定外の変化が社員や会社の成長にマイナスの影響を与えた』と回答しました。しかしながら、『CEOの継承計画を実施している』と回答したのはわずか3分の1(32%)。ほぼ同数の企業(28%)が『CEOの交代には半年以上かかる』と述べているにもかかわらず、です。

CEO継承計画を実施している企業のほうがリーダーシップの移行期間に株価の乱高下が少ない、というFTIコンサルティング社の調査結果があります。CEO継承計画と会社の業績の間に明らかな関係がある、ということです。

CEO以外の職について、『重要な役割を見極めようとしている』企業は88%、『継承計画を実施している』企業は85%です。メラニー・ロング(SHLシニア・マネジング・コンサルタント)は次のようにコメントしています。『人事リーダーが社内の継承計画の重要性を認識していることがわかったのは心強いですが、CEOについての計画が抜けています。英国企業を取り巻く市場環境は引き続き厳しく予測不能なものでしょうから、CEOの役割は非常に重要です。トップ人材の交代は簡単なものではありません。我々のデータによれば、真に有能なリーダーとなれるポテンシャルをもつ人材は英国でわずか10人に1人です。』

人事リーダーは社内で継承計画を実施する必要があることを理解しています。調査回答者のほぼ半数が、『技術者・専門職』や『初級管理職』の継承計画を実施しています(それぞれ48%、43%)。興味深いのは『大学新卒者』について実施している企業が23%あることです。5分の1強が自社内でリーダーシップを育成するという採用戦略をとり、早い段階からポテンシャルの高い新卒者を囲い込んで育てようとしています。

『競争の激しい人材マーケットにおいて、企業はその「エンジン・ルーム」のための継承計画に焦点を移しているように思われます。革新的で、価値を創造し、結果を出せる人材です。しかしながら、リーダーを失うことのマイナスの影響を考えれば、継承計画は、トップかその下の階層かに関わらず、重要な役割についてポテンシャルのあるリーダーを見極めることに焦点を当てるべきです。ビジネスにおけるリーダー人材は将来の成長と革新の礎です。将来のリーダーがどこから現われるのかを分析して知ることが大変重要です。』とロングは述べています。

人事リーダーがリーダーシップ・パイプラインについて社内の下の階層から高いポテンシャルを持つ人材を見極めようとしている理由の一つは、その人たちのほうが上司よりもリーダーシップ・ポテンシャルを持っているからかもしれません。SHLデータによれば、ジュニア職のほうがシニア職よりも有能なリーダーになる素養をもっています。『我々の調査結果やデータから、企業がリーダーシップ・ポテンシャルの問題に真剣に取り組んでいることがわかります。最終的には、企業が自社の社員を客観的に捉え、次世代のリーダーがどこから現われるのかを理解できるようなプロセスを持つ必要があります。』とロングは結論しています。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

タイトル原題は「Is your boss coming back to work tomorrow?」。なんだか違和感のあるタイトルです。リーダーが突然、会社に来なくなる、という事態は日本では少ないでしょう。終身雇用を前提とした日本では、多くの企業が何らかのサクセッション・プランを実施しています。次世代リーダー育成のための研修やローテーションなど、長期的に考えやすい環境であると言えましょう。ただ、CEO(社長、経営トップ)についてはどうでしょうか?

一ヶ月ほど前の日経ビジネスで「社内道場」の特集がありました。「社内大学」開講のニュースもよくみかけます。修羅場に放り込むことで社員の起業家精神を鍛えようというものです。高度成長期やバブル期のように企業がどんどん成長している時はいやおうもなく社員にその時点の能力以上の仕事が与えられ、経営的発想や行動が身についていったものですが、現在ではあえてそういう場や仕組みを作っていかないとリーダーが育たない、という危機感でしょうか。

この記事で取り上げた調査リポートには、最後に「効果的なサクセッション・プランニングを行うための6つの戦略」というページがあります。次回の本コラムではこの戦略をご紹介いたします。

文責:堀 博美

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