堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回から3回に渡り、SHLグループが統合されたCEBの『グローバル・リーダーシップ』に関するエグゼキュティブ・リポートをご紹介します。CEBという社名はCorporate Executive Board companyの頭文字をとったもので、企業幹部に経営面でのアドバイスを提供する会員制企業です。北米、ヨーロッパ、アジアなどグローバルに事業展開しており、世界トップ企業を中心に16,000名を超える会員数を誇ります。本部はワシントンD.C.にあります。

第136回 CEBリポート:グローバル・リーダーシップ・パイプラインの強化(1/3)

2030年までに、世界GDPの半分以上が現在「新興市場」と呼ばれるエリアで生み出されることになると言われています。伝統的先進国経済の成長が不安定で遅い現代、企業は生き延びるためにこれら成長率の高い市場に踏み出なければなりません。本調査に回答したCEB会員企業の60%が今後3年間にグローバル展開を増やすことを計画しています。

効果的なグローバル戦略を構築して新しい市場で成長していくためには、強力で効果的なグローバル・リーダーシップが必要です。CEBが90社12,000人以上のシニア・グローバル・リーダーのビジネス・パフォーマンスを分析したところ、優れたグローバル・リーダー(複数の様々な地域でうまく事業運営できる人)とそうでない人との間に特筆すべき違いがあることがわかりました。優れたグローバル・リーダーが3年連続で業績目標を達成する割合はそうでない人の約3倍です。しかし残念ながら、優れたグローバル・リーダーは稀で、シニア・リーダーの5人に1人ほどでした。グローバル・リーダーの適切なパイプラインがなければ、ほとんどの企業は苦戦し、多くが最終的には失敗するでしょう。

企業はリーダーシップ開発プログラムのツールややり方を再検討しています。しかし、グローバル・リーダーシップ・パイプラインの強化に関するほとんどの企業の戦略には大きな不備がある、と我々は考えます。グローバル・リーダーシップは他のリーダーシップと同じであると間違って考え、マーケットをまたぐマネジメントに必要な特別スキルを欠くリーダーを作り出している企業があります。もしくは、逆の間違い、すなわち、グローバル・リーダーシップが全く別のスキルや能力であると考え、企業の総体的なリーダーシップニーズと食い違うプロファイルのリーダーを作り出している企業もあります。この2つの極端な考えのバランスをとることがベストです。重要なコアスキルやコア能力をもち、かつ、複雑なグローバル環境で効果的に動くこともできるリーダーを見つけ、育てていくことが重要です。

優れたグローバル・リーダーは少数

業績目標達成率で定義される「優れたグローバル・リーダー」の地域別割合

グローバル・リーダーシップの問題

グローバル・リーダーの発見は企業にとって永遠の課題です。グローバル・リーダーの問題の根源は、これらの役割が著しく複雑であるということです。単一マーケットの責任を担うリーダーと比べ、典型的なグローバル・リーダーはやるべき仕事が多く、一緒に働く人数も多く、しかし、権威は少なく、また、仕事に必要な情報が不足しています。

CEBが12,000人以上のグローバル・リーダーの仕事の特徴を分析した結果、次のことがわかりました。すなわち、グローバル・リーダーは他のリーダーと比べて:

  • 自分が直接マネジメントしないが一緒に仕事をする人が17%多い。
  • 正確なマーケット情報を持つ確率が32%低い。
  • 責任範囲が74%広い。
  • 利害関係者が160%多い。

役割の複雑さはこのように劇的に増加しますから、自国マーケットで大成功したリーダーでさえ、グローバル・リーダーに異動したら苦労するでしょう。経営者は、伝統的な意味で強力なリーダーであるだけでなく、より複雑なグローバル職で頭角を現すための適性やスキル、能力も持つリーダーを見極めなければなりません。しかしながら、大多数の企業はその人事決定を誤った仮定に基づいて行っています。

グローバル・リーダーシップ・パイプラインを強化する4つのステップ

何が優れたグローバル・リーダーを作り出すかについて理解するには、何が劣ったリーダーを作り出すかから始めることが必要です。優れたリーダーとそうでないリーダーを比較したところ、一般的に言われている仮定のいくつかは間違っていることがわかりました。

  • 優れたグローバル・リーダーに事前の国際経験は必要ない。
    優れたグローバル・リーダーの半数以上は、最初の海外赴任でした。
  • 現地の言葉に流暢なことが業績を決定しない。
    言葉はコミュニケーションを促進しますが、正しいコミュニケーションを保証するものではありません。
  • 担当マーケットの文化を深く知っているからといって成功率が上がるわけではない。
    文化理解は有益です。幹部の文化知識の欠如がビジネスのやり取りを妨げる例は数多くあります。しかし、我々のデータは、文化的な流暢性だけが、短期・長期のビジネスの成功に適した行動を確保するものではないことを示しています。
  • 優れたグローバル・リーダーとそうでないリーダーの間で、属性(年齢、レベル、勤続年数など)に違いはない。
    我々の研究では、多くの優れたグローバル・リーダーはその職にダイレクトに雇用され、一般のローカル・リーダーより若かったり勤続年数が少なかったりすることもありました。

以上のような仮説としてよく出される条件が成功を予測するものではないことを考えると、いったい何が成功に結びつくのでしょうか?グローバル・リーダーの数を増やすためには、グローバル職務そのものを再考し、能力開発されるべき重要能力を見極め、必要なサポート体制を提供することが必要です。優れたグローバル・リーダーを見つけ、ひきつけ、構築するために、企業は次のことをやらなければなりません。

  1. グローバル職がキャリアアップの機会であることをはっきりと示す。
  2. グローバル職の負担を減らすために、転勤についての選択肢を検討する。
  3. 必須の影響力スキルを構築するために、ストレッチ役割を用いる。
  4. サポートのためのグローバル・ピア・ネットワークを構築する。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

本リポートでは、グローバル・リーダーを「自国以外のマーケット(多くの場合、複数)に責任を持つリーダー」と考えています。一般的によく言われる仮説が間違っているという指摘は改めての発見でした。次回からは、パイプライン強化のための4つのステップそれぞれについて詳しく論じています。

なお、本リポート原本(Strengthening the Global Leadership Pipeline)は以下のURLからダウンロードできます。ご興味のある方はぜひご覧ください。
http://www.shl.com/shl-is-ceb/insight/leadership/

文責:堀 博美

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