SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLグループHPのブログから、サクセッションプランニング(Succession Planning:後継者計画)についての記事を一部抜粋してご紹介します。

第366回 後継者計画が成功するためのベストプラクティス

後継者計画が仮の人員交代計画を作るエクササイズになっていませんか?真に組織の価値を高める、戦略的な計画に転換する方法を見ていきましょう。

マルナ・ファン・デル・メルヴェ

2022年11月10日

ここ数年で、人材を取り巻く環境は劇的に変化しました。人々は世界的なパンデミックを乗り切り、自分にとって仕事が何を意味するかを再評価してきました。一方、組織は「大量自主退職時代」の後遺症と、より流動的でグローバルな人材プールに向き合っています。仕事の未来と、組織が自分たちをどのように位置付けるべきかについて様々な議論がなされる中、組織がタレントマネジメント戦略をどのように再編成できるかが、長期的な成功の鍵となります。

タレントマネジメントへのアプローチはスキルベースへと変化しており、事業リーダーには、部門を超えて人材を見ることとすべてのレベルで組織としての能力に焦点を当てることが求められています。人事には、対話とテクノロジーを通じて、個人が自分のキャリアを方向付け管理できるようにすること、個人には、経験と能力開発を通じて自分のキャリアに責任を持ち追求すること、が求められています。

スキルベースのアプローチを反映するには、人材を効果的に識別し配置できるような組織文化と構造が重要です。同様に、将来起こり得るシナリオに向けて計画を立て人材を準備することは、タレントマネジメント戦略を実行し成功させるための重要な要素です。

後継者計画は、タレントマネジメントにおいて戦略的な重要性が高いにもかかわらず、事業リーダーから付加価値や期待される投資収益率が得られないと批判されることがよくあります。こうした事態は多くの場合、後継者計画が架空の人員交代計画を立てるだけになってしまい、長期的に価値を生み出さないという、よくある落とし穴によって起こります。

  • コンテクストの欠落
    後継者計画は、人事が開始する活動であるため、組織のコンテクスト(背景・文脈)や長期的な戦略が欠落していることが多くあります。そのような場合、後継者計画が将来の組織能力に貢献することはありません。
  • リーダー職に焦点を当てる
    後継者計画は、リーダー職の人員交代計画と同じである場合、失敗します。リーダー職は事業にとって重要かもしれませんが、持続可能性を確保するために、すべてのレベルで価値を推進する要因を検討する必要があります。後継者計画は、すべてのレベルにおいてリーダーシップパイプラインや準備ができている状態を作り、支援するものであるべきです。
  • 過度に人に焦点を当てる
    後継者計画は誰かが退職するという「最悪のシナリオ」の対応策と捉えられる傾向があります。そのような場合、人員交代計画になってしまいます。重要なスキルギャップに対応するための柔軟性と機敏性を生み出すために、スキルと職務に関する後継者計画に焦点を当てるべきです。
  • 1 対 1 のマッピング
    後継者計画が1対1の交代に焦点を当てている場合、柔軟性を生み出すことや将来のシナリオ変更を考慮していません。1対1ではなく、後継者プールを作成することで、個人と組織の両方により多くの機会が生まれます。
  • 手作業
    後継者計画は、煩雑で時間がかかり、手作業であることが知られています。多くの場合、会話によって進み、スプレッドシートに記録されます。データとテクノロジーを活用していない後継者計画は、効果がなく、時代遅れになるリスクがあります。
  • 主観的な意見に基づく識別
    後継者は、欠陥のある基準に基づいて識別されており、成功しないことがよくあります。多くの場合、リーダーの意見に依存して後継者を識別し、後継者の準備状況と育成基準に達していることを裏付ける客観的なデータがほとんどありません。
  • 他のタレントマネジメント戦略から切り離されている
    後継者プールが作成・保持されていない場合、後継者計画は付加価値を生み出すことができません。後継者は、異なる職務を引き受ける準備ができていない、もしくは、外部にチャンスを求めて組織を離れてしまっています。

よくある問題点と落とし穴を克服するための、ベストプラクティスをご紹介します。

  • 後継者計画は、組織の戦略および能力と密接に連携する必要があります。人員交代計画から、重要なスキルに基づいた後継者育成への転換です。
  • リーダーだけでなく、組織のすべてのレベルにわたる重要スキルと職務を含める必要があります。これにより、健全なパイプラインと、事業の持続可能性の鍵となるスキルに焦点を当てたアプローチが可能になります。
  • 人材データとテクノロジーは、後継者候補を識別して管理するための重要な要素です。重要な基準についての客観的かつ一貫した測定結果を提供します。
  • 状況の変化に適応し、進捗状況を確認して改善を繰り返す、継続的なプロセスであるべきです。
  • 後継者計画は、後継者プールを確実に作成しサポートするために、より広範なタレントマネジメント戦略に統合されている必要があります。

後継者計画は、組織が長期的に成功するための準備を整える上で戦略的に重要な役割を果たします。ただし、この価値を解き放つには、組織のコンテクストと密接に連携し、より広範な人材戦略に統合されており、客観的で維持可能なデータに基づいている必要があります。関連するテクノロジーへの投資も必要です。それにより、変化に機敏に対応し、事業全体にわたって後継者の識別と配置について透明性を確保することができます。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2022/planning-and-setting-up-for-succession/

「後継者計画」という表現ですと、リーダーの欠員補充計画という印象を与えてしまいがちですが、それでは価値を生み出せないと著者は主張しています。今後より適切な新しい表現が生まれてくるのでしょうか。

(文責:廣島晶子)

タレントマネジメ
ントコラム 日本エス・エイチ・エルの人事コンサルタントの視点

バックナンバー

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年

学会発表論文