堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はCEB研究者がTalent Management Magazineに寄稿した記事をご紹介します。イノベーターの特性についての記事です。

第174回 イノベーターのDNA

全てのビジネスリーダーは成長を推進するためにイノベイティブな商品やサービスにつながるような新しいアイデアを求めます。「イノベーション」はなんだか流行語になっていますが、世の中ときちんと向き合おうとしている会社にとっては疑いなく不可欠な要素です。

イノベートする能力は必ずしも単一のスキルではありません。技術の適用から新商品・新サービスの開発まで、マーケティングから日々の操業まで、組織全体を必要とするものです。

イノベイティブ・プロファイル

組織がイノベーションからのリターンをうまく実現できるためには少なくとも3つの条件があります。まず、イノベーションへの投資を刺激、支援し、目に見える価値に変換するプロセスが必要です。2番目に、イノベーションを促進、支援する社会的経済的条件が必要です。そして、3番目に必要なのが適切なスキルを持った人材です。

人的資源の最後の点、すなわち、「適切なスキル」はさらに深い検討に値します。特に、今日の仕事環境がどう構成されているかを考えるとそうです。

イノベーションとは、創造性や知的能力以上のものです。真のイノベーターになりそうな人とはどんな人材でしょうか?

CEBはこの問いに答えるべく調査を実施しました。その結果、イノベーションを推進する行動群が2つあることがわかりました。

ひとつめは焦点や洞察で、異質な情報源から重要情報を拾い出してアイデアをまとめる個人の能力に関連します。この行動群には、計算されたリスクをとることを厭わないことや、目標達成に粘り強く取り組むこと、アイデアを顧客ニーズの解決に結びつけることができることも含まれます。

ふたつめの行動群はネットワーキングやコラボレーションに関するものです。共通の目的や成果を達成するためにチームでどう協力し合うか、だけではありません。この行動群には、ビジネスに関わる重要関係者と積極的にコミュニケーションをとり、耳を傾け、相談することも含まれます。CEBの研究は、真のイノベーターとは、ネットワークをうまく活用して情報を把握して見極めるだけでなく、自分のアイデアを売り込んで必要な支援や資金を得ることができ、また問題になりそうなことにうまく対処できる、ということを示しています。

イノベイティブな業界

CEBデータベース2700万件を2012年に分析した結果、上記の行動群を持つ人は17人に1人(5.9%)しかいないことがわかりました。

同じ2012年のデータは、業界別の傾向について興味深い知見を示しています。17業界中、イノベーター人材が最も多いのはテクノロジー業界でした。他の上位の業界は、専門サービス、食品、飲料、たばこ、小売、消費財でした。公的機関は中位です。

一方、イノベーター人材が少ない業界は、石油ガス、エンジニアリング、電話通信、銀行です。これら業界の問題は、イノベーションの人に関する側面についての明確な指針や、効果的なイノベーションを成し遂げるに必要な自在を見極める方法を持っていないことである、と我々の研究は示しています。

イノベーションをより推進するために、企業は上から下までの階層でアイデア創出の風土を醸成すべきです。そのためには、次の3点に着目しなければなりません。

まず、人事チームが、職務に求められる技術スキルや知識だけでなく、効果的なイノベーションを推進する行動も理解することが重要です。焦点や知見、説得力、社内ネットワーク活用力などです。イノベーターたる社員を掘り起こし、採用して能力開発する際に、これらの行動は評価すべき重要な要素です。

イノベーターの業績をどう評価して報いるかも重要です。先の2つのイノベーター行動群を行動ベースの面接手法に組み込んでいる企業もあります。

2番目に、人事チームは、自社の重要な「イノベーター人材」の他と比較しての強みについてしっかりした知識を持つことが必要です。どこにイノベーションのギャップや余剰があるのかを知ることは、新しい社員を採用する際に重要です。能力開発の立場からも大切で、能力開発の部署が、既存チームに効果的なイノベーション行動を構築することに焦点を絞ったプログラムを創り出すことができます。

能力開発はまた、新進イノベーターが明快さや焦点を育て、しっかりしたネットワークを築いたり、コミュニケーションスキルや説得力を高めたり、国内外のネットワークを活用して会社の風土の舵取りをしたりすることを助けます。人材レビューの中で、CEOや取締役、ビジネスリーダーたちは、強いイノベーションが求められる職務に誰をつけるかを決める際、定期的に「イノベーション・ポテンシャル」の得点を検討すべきです。

3番目に、イノベーター・チームの構成に人材データを活用することが重要です。イノベーター人材はあまりいません。しかし、行動指標のうち5つ以上で優れている人からなるチームは1.5倍有効であることを、CEBの研究が示しています。人材データを使うことで、人事チームは、相互に補完し合うイノベーターたちのチームを創り出すことができ、その上司にそれらの人材をどうマネジメントするかについてヒントを与えることができます。そうすることで、イノベーションへの投資と労力が報われる可能性が増します。

多くの企業にとって、行動を補完し合うバランスのとれたチームを動かすことが、イノベーションを推進するための最も近道です。イノベーションスキルのある人を採用して能力開発するという時間のかかる努力に乗り出すとしても、「イノベーション・チーム」を計画することで企業は能力を組み合わせて即時のリターンを得ることができます。

世界中の企業がより少ない資源に適応して進化し、成長しようとしている中、イノベーションの能力は必須です。イノベーションの等式の「人」の部分を正しく把握することは、企業のイノベーションがうまくいくかどうかを判断する重要要素です。

真のイノベーターは大多数の企業が気付いているよりもずっと少ない、ということは驚くべきことではありません。企業は、今日のビジネス環境の中でイノベーションをもたらすのに必要なスキルと行動特性を要素に入れて、正しい眼鏡を通して自社の社員を見なければなりません。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

少し長い記事ですので、途中省略しました。
イノベーションを推進するためには、個人の資質だけでなく、ネットワーキングやコラボレーションに関連する行動を見ることが重要である、と指摘しています。

文責:堀 博美

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