堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループのネット配信「SHL Newsletter」や広報誌「SHL News」、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLのホームページに関連ニュースとして掲載されている情報の中から、London Evening Standard紙電子版の記事をご紹介します。採用にコンピューター技術を活用することの功罪についての記事です。

第88回 ごめんなさい。コンピューターが「だめ」と言っています。

採用プロセスに関わる人には無意識のうちに、自分たちに似た社員を選ぶというバイアスがあります。これはミニ・ミー・シンドローム(mini-me syndrome)と呼ばれるものです。各自のイメージで採用するというこの本能は、組織の将来のミックスを制限してしまいます。ですから、応募者の選考にコンピューターを使うことは、面接官が気に入ってくれたからではなく、自分の能力で目立つことのできる応募者にとって歓迎すべきことでしょう。

しかしながら、コンピューターを使用することについて根深い懐疑的な見方もあります。人材派遣業協会の先日の人材採用カンファレンスにおいて、適切な候補者を見つけるツールとしてコンピューターによるプロセスは鈍感すぎる、という議論がありました。出席した著名な採用専門家の幾人かが、「仲介機能の排除」、すなわち、テクノロジーを利用して採用仲介業者をはずすことは、人による判断に取って代わるものではない、と述べました。

しかしながら、時に何万通もの履歴書が殺到する大手企業では、大量の応募用紙をふるい分けするためにコンピューターのオンライン・プログラムを使わざるを得ないこともしばしばです。

科学的アプローチ

採用判断に科学を持ち込むことも、プロセスをより公平にしながら、会社が優秀な候補者を見つけることに役立ちます。毎年世界中で2500万件のアセスメントを実施する人材アセスメント会社SHLは、採用側がベストな候補者を見分けることを支援するため、データとインテリジェンスに科学的に基づいたTalent Analyticsデータベースを立ち上げようとしています。

SHLのCEOディビッド・リー氏は次のように述べています。 「大多数の企業は人が最も重要な資産であると認識していますが、競合会社と比べて自社の社員にどれくらいの将来ポテンシャルがあるのかについて真の洞察を持つ企業はほとんどありません。」

「インテリジェンスへの要請はどんどん高まっています。採用と能力開発を支援するインテリジェンス、さらに最も重要なのは、競合や業界全体の中でそれらの意思決定を測るためのインテリジェンスです。」

SHLは、世界中の全業界で、オペレーション・スタッフから幹部リーダーまで、仕事場面における社員の実効性に関するピープル・インテリジェンスのデータを30年間捉えてきました。

SHL主席科学者のユージーン・バーク氏は次のように述べています。 「今いる社員のクローンを作ることはビジネスにとって非常に危険です。ですから、企業はより科学的で偏りのないプロセスにしようと我々に支援を求めてきます。世界が変化しつつあることを認識しており、現在の人材が将来うまく適合するかどうかを検討しなければならないと考えています。テクノロジーはまた大量の応募をさばくこともできます。」

「我々が仕事をしたある会社の大卒応募者は数年前4.5万人でしたが、いまは10万人です。そのため、経歴や資格を見る前、採用の一番始めにオンラインのアセスメントを置いています。候補者が何を知っているか、ではなく、候補者がその知識で何をやりそうか、を見たいからです。公平で事実に基づいたアプローチによって、企業は人材についてより賢明になることができます。」

「組織を何らかの方向に再設計しようとしている企業があれば、達成すべき重要な目標を決断した企業もあります。新しいグローバル・マーケットにおいて、顧客とのやりとりのしかたやリーダーシップに変化があることもあります。」

「効率化の推進やチームワークの改善が必要であったり、革新的になる必要があるのかもしれません。そのためには社内の人材戦略に変化が必要です。」

「次のステップは、自社のトップ人材、競合会社や他業界の人材に目を向けて、必要な人材の特徴を検討することです。そして、それらの要件に合う能力を持つ人を見つけなければなりません。『can do』『will do』『will fit』のミックスです。『can do』は通常、能力テストで、『will do』はパーソナリティ検査で、『will fit』は典型的な仕事場面を用いた状況判断アセスメントで測定できます。」

将来のスターを発見する

Analyticsは、社員の誰が次のリーダーシップ・レベルでうまくやれそうかを明らかにすることで、人材のパイプラインを構築することに役立ちます。

バーク氏は続けます。「データベースを活用して高い業績を上げそうな人を見つけることができます。あるケーブル会社では、従業員3000人のうちの上位4分の1の人々が、コンピテンシー学習が19%速く、売上が25%多く、自分の部下を3倍うまくマネジメントする、ということがわかりました。」

「このように、この情報が高業績者の候補を見つけるために役立ちます。また、シミュレーション演習を通じて社内の人材をたな卸しすることで、社内の後継計画を立案する役にも立ちます。」

そして、コンピューターが「OK」と言うことも

大手企業はいまや、どの候補者が自社に最も適しているかの感じをつかむため、オンラインのシナリオ・テストを作成しています。5〜7項目くらいの短いテストで、その候補者が会社にうまく当てはまるかどうかを見分けます。

バーク氏は付け加えます。「コンピューターは『だめ』といっているわけではありません。アセスメントは応募者の強みと弱みを明らかにし、採用企業が探している能力を持っているかどうかを検討するものです。」

「応募者がその役割に適していなければ採用側にリスクですし、応募者自身にとってもリスクです。応募者は別の仕事環境により適しているかもしれないのですから。」

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

応募者トラッキングシステムやオンラインのアセスメント・ツールの近年の進歩はめざましいものです。SHLが実施した2011年グローバル・アセスメント・トレンド調査では、回答463社中81%がオンラインによるテストを実施していました。

コンピューターによる判断の危険な点は、結果が多くの場合、数値として表されることでしょう。判断のロジックがブラックボックス化してしまっては問題です。道具としてうまくつかいこなすノウハウが求められます。

文責:堀 博美

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