堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HP、プレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

引き続き、SHL白書「タレント・アセスメント・テクノロジーの台頭」の和訳の連載です。

第251回 SHL白書「タレント・アセスメント・テクノロジーの台頭」(連載4)――シリアスなゲーム

行動を直接観察するシリアスゲームの開発は、実証済みアセスメントにゲームの要素を含めるよりも複雑で、手間やコストがかかります。

これまで、シリアスなゲームのデザインをビジネスに応用したものとして最もよく見られたのは、教育研修やスキル開発の場面でした。行動変容や問題解決、イノベーションをテーマとしたものです。

選抜場面におけるシリアスゲームの有用性や予測力についてはあまりわかっていません。職務パフォーマンスを予測できる新しい革新的な「ゲーム」であることを証明するには、シリアスゲームの開発に大きなコストや手間、大量データが必要です。特に選抜での活用は受検者本人の人生や会社の経営に直接大きな影響を与えますが、シリアスゲームの基本的なデザイン要素のいくつかは逆効果になるかもしれません。問題のひとつは練習効果です。

練習効果

シリアスゲームの核となるデザイン特徴の一つは、問題解決の戦略として試行錯誤しながらの学習を促すことです。繰り返して何度もプレイすることを認めます。我々の研究や経験からわかっているのは、人は何度かプレイするとそのゲームが上手くなるということです。練習でパフォーマンスが向上するならば得点は安定しませんから、そのアセスメントはまずいです。また、練習効果は受検者が採用されようとテスト受検戦略を変更してパフォーマンスを上げることにつながるため、この得点の不安定さは問題です。

さらに、日常的にデジタルゲームをプレイする人に有利になる可能性もあります。市場に出回っている他のゲームに似たゲームを開発したならば、それら類似ゲームをたびたびプレイする人は、そうでない人よりも高い得点をとるかもしれません。選抜アセスメントの目的は、望ましいビジネス成果につながるコンピテンシーやスキル、能力について受検者を評価することです。プライベート場面でのゲーム頻度など、職務パフォーマンスに関係しない特徴によって有利もしくは不利になるようなゲームデザインは許されません。

投資効果

職務の内容や要件、企業理念やミッション、商品ポートフォリオなど、特定の目的に合わせてアセスメントをカスタマイズしたいと考える企業ユーザーは多いです。しかしながら、組織の変化のスピードや急激なテクノロジーの進化の結果、シリアスなゲームの有効期限は限られるかもしれません。現在の組織環境を反映し、目的にフィットし続けていられるようにするため、この種のツールは絶え間ないアップデートが必要で、それには多大な投資が必要です。

ゲームには見栄えのよさと面白さを期待しますから、高い水準のデザインが求められ、絶え間ないテクノロジーの進化についていくためのコストは大きいです。開発コストは、どのようなゲームデザイナーが必要か、どんなタイプのメディアを用いるか、によります。マルチメディアのテクノロジーは寿命が短くなりがちで、頻繁なアップデートが必要です。例えば、America's Army(www.ameriasarmy.com)はアメリカ陸軍がリアリスティック・ジョブ・プレビューを目的として企画制作したゲームですが、最初の開発以降、何度もアップデートされてきました。

シリアスゲームのアップデートにはより進化したインターフェイスやアニメーションを取り入れるためのものもありますが、多くのものがかかる選抜アセスメントではゲームのリアルさを確保するための、職務や仕事環境の変化を反映するような調整も必要です。そのような頻繁な改訂の必要性を最小限にするためには、多くの職務で使えるような、汎用的で職務に特化しないものにしなければならないでしょう。しかし、汎用的な形式は結果的に職務との関連性が低いと見られることになり、受検者の反応は悪いかもしれません。職務における変化を反映するアップデートをしなければ、アセスメントの寿命は短くなります。

さらに、コンピテンシーやスキル、能力の測定方法の等質性を維持できるようなやり方でシリアスなゲームやゲームの全要素を各国の文化に合わせて変えるのは、困難で高価でしょう。それと比べると、既存アセスメントをひとつかふたつのゲーム要素を含むようなアセスメントに包み変えるほうが、よりストレートで手間やコストもかかりません。

シリアスゲームの妥当性

シリアスゲームやゲーム度の高いアセスメントから大量のデータが得られるので、予測変量と基準変量の関連は改善されていくだろう、と主張する研究者はいます。

しかし、シリアスなゲームを使って職務パフォーマンスの予測に成功したことを示す研究はほとんどありません。成功する可能性はありますが、研究期間や膨大な投資、幾分かのリスク(受検者からのマイナス反応など)が必要でしょうから、我々はシリアスゲームを追及することに投資効果があると断言できません。

伝統的アセスメントやゲーム要素の少ないアセスメントと比べての、シリアスなゲームの機会均等面での不利な影響や増分妥当性についてもまだ結論づけられません。不利な影響のリスクを低減するためには、年齢や性別、民族によるシリアスゲームの得点差を最小限にする必要があります。ゲーム構造やユーザーインターフェイスの複雑度を減らし、プレイ方法を学習しやすくしなければなりません。そうすることで、事前のゲーム経験によるバイアスの可能性は減り、グループによる差異が問題になる可能性も減ります。

現時点では、選抜で、シリアスゲームを使うよりも、妥当性が確立されたアセスメントをゲーム化するほうが有望です。妥当性を証明するデータがないことや開発コストが高価であることを考えると、アセスメントのプロバイダーはこの技術を活用する前によく考えるべきです。仕事をうまくやれる受検者であったとしても、シリアスゲームのインターフェイスになじみがなければ、アセスメントで悪い結果となるかもしれません。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

選抜場面でのシリアスゲームはお薦めできない、という結論です。

実は弊社にもシリアスゲームがあります。「めくる・わかる」という商品です。グループワークのボードゲームで、内定者フォロー研修などでご活用いただくことを意図しています。グループ間で対戦しながら、自己理解・他者理解を深めていただくことを目的としています。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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