堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にユーザー向けネット配信、HP、プレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLグループHPに掲載されているブログの記事をご紹介します。

第275回 デジタル人材にとっては、「誰が」よりも「どのように」が重要

デジタル化が加速し、仕事環境が急速に変化する中、人材発掘への新たな要求が突きつけられています。しかし、アジリティ(機敏性)で充分なのでしょうか?

議論の余地はありません。自動化が全産業を再形成し、AIが台頭するにつれ、今後の仕事はデジタル化の大きな波によって動かされることに反論する人はほとんどいないでしょう。どの会社もデジタル技術を活用して、新しいビジネスモデルを作り、新しい売上や価値を生み出す機会を追求しています。

これらデジタルビジネス戦略は機械だけでできるものではありません。人材によって可能になるものであり、ビジネス課題の中心に人を置きます。デジタル化によって、社員ができるだけ生産的であるよう確保する適材適所がますます重要になります。「デジタル人材の確保と定着が優先人事施策」と人事担当取締役の57%が回答したことは驚きではありません。

しかし、「適切な」人材はこれまでと今日、根本的に異なるものでしょうか?デジタル人材とはどんな人かについての話の多くはほぼ仮説か直感です。最もポピュラーな話のひとつ、「アジリティ(機敏性)が高業績デジタル人材の鍵である」の裏にある現実を見てみましょう。

一言で言えば、これは、「なんらかの状況でなんらかのテクノロジーを使う職務において機敏に(agile)うまく仕事を遂行する社員を定義する、理想的な人材像がある」という主張です。この汎用的なプロファイルを持つ社員を見つけて育成すれば、貴社のデジタルビジネス戦略がどんなものであっても成功することになります。一般社員についてだけではありません。このプロファイルをもつリーダーもまた、どんなデジタル文脈であっても機敏にうまくリードします。

この話にはいくつかのパターンがありますが、最も広く知られているバージョンは、ラーニング・アジリティ(素早く学ぶ能力・素早く学ぼうとする意欲)に関するものです。これは、「デジタル化に求められる他の全てのコンピテンシーを解き放つ鍵がラーニング・アジリティである」と主張します。それが、従来の、デジタル人材という「秘伝のたれ」に欠けていた材料だ、というものです。

しかしながら、現実はこの主張を支持しません。確かに、あいまいさや新しいやり方、異文化、変化に適応する能力は、今日の急速に変化する仕事環境において、どの社員やリーダーにとっても重要な特性です。組織は常に変化しています。社員の98%が、「過去4年間にビジネスに大きな変化があった」と回答しています。

しかし、真に機敏な社員、つまりどんな状況でも成功できる社員は古典的な「紫色の一角獣」です。そんな人は本来存在しませんし、機敏になるための充分な経験をさせるだけでそういう人を作り出すことはできません。そして、さらに悪いことに、社員が機敏さを身につければつけるほど、退職リスクが大きくなります。ついには、あなたが多くの時間と費用を使って、他の誰かのスター・パフォーマーを作ることになるでしょう。

さらに、もしあなたがラーニング・アジリティという欠けていた材料に焦点を当てるならば、それは賢明な投資ではないようです。最近の研究で、「社員が物事をどれだけ早く学ぶか」は、「学んだことをどれくらい効果的に応用するか」よりも、はるかに重要ではないことがわかりました。学んだことを応用できる社員が二重丸です。彼らは高業績者であるだけではなく、学んだことを使って他の社員の業績を押し上げるような生産的な関係を作り出します。

では、今日の急速に変化するデジタル環境において、社員に業績を上げさせるための答えは何でしょうか?そうです。やはり、適応してイノベーションを起こし、組織を前進させることができる社員とリーダーが必要です。しかし、答えは、「それが誰か」よりも、「どのようにして組織がそれを可能にしているか」です。実際、「機敏な人材」よりも、環境の新しい要請に容易に対応できる「柔軟で機敏な人材マネジメント」の方が重要である、と我々は学んできました。

これが、貴社のデジタル人材戦略を構築する真の出発点です。存在しない「紫色の一角獣」を求めて、既存の労働力を置き換える必要はありません。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

「アジリティ」という言葉、最近良く聞きますね。辞書では「機敏性、敏捷性」」という訳が一番に出てきますが、ぴったりの日本語がなくいつも苦労する単語のひとつです。「すばしっこさ」から「臨機応変さ」ひいては「頭の回転の良さ」の意味を含む、と私は理解しています。

「アジリティを持つ人は誰か」という議論よりも、「アジリティを持つタレントマネジメント」を構築するほうが重要だ、と本記事は主張しています。

(文責:堀 博美)

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