SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回から3回に分けて、SHLグループが出している白書『How the pandemic changed our adaptability and resilience』の全容をご紹介します。まず、調査の背景についてです。

第351回 SHL白書『コロナ禍は私たちの適応力と回復力をどのように変えたか?』(1/3)

サラ・マックリーン(SHLシニア・ディレクター)

パーソナリティ特性は、人の生涯を通じて比較的安定していることが知られています。たとえば、あなたがグループの中で主導権を握ったり、データや事実に基づいて決定を下したりすることを好むなら、それはほぼ一貫するようです。しかしながら、研究はまた、私たちの生活における大きな変化が私たちのスタイルを変える可能性があることも示しています。

私たちは、コロナ禍が私たちに与えてきた影響をさまざまに痛感しています。肉体的には私たちの健康やウェルビーイング、家族生活に対して、そして感情的には不安、不確実さ、ストレスを感じた結果、燃え尽き症候群やメンタルヘルスの問題が増えました。しかし、パーソナリティなどのコア属性や、さらにはそれらが私たちの働き方のスタイルにどう影響したかについての調査は、ほとんどありません。

2020年中に、SHLの科学者たちは4,574人のサンプルを使用して、職場におけるパーソナリティ傾向に対するコロナ禍の影響を調査しました。調査結果から、コロナ禍によって、適応力と回復力に関連するパーソナリティの自己報告値に一貫した変化があったことがわかりました(パーソナリティ検査OPQを使用)。

私たちがコロナウィルスとの共存に移行し、集団的トラウマから回復し始めるにあたり、この白書は、修復と再構築の道筋を見つけるプロセスにある個人と組織、特に大量退職の真っただ中にいる個人と組織に、5つの貴重な洞察を提供します。

一般に、人が成人期に達すると、そのパーソナリティはかなり安定します。しかし、臨死体験や家族の喪失、親になること、離婚など、人生を打ち砕くような出来事が理由で、パーソナリティ特性が変わる可能性があることを、研究は示しています。

これら極めて重大な出来事によるトラウマは、パーソナリティに大きな影響を与え、個人の行動や感情に長く続く影響を作り出す可能性があります。たとえば、戦争犠牲者と政治的に迫害された人についてのRutkowskiらの研究(2016)は、戦争などのトラウマ的な出来事を経験した人々が、その出来事の後に社会的内向性が前よりも高くなる傾向があることを示しました。これは、トラウマ体験が実際にパーソナリティに影響を与える可能性がある、という考えを妥当化するものです。

ここ2年間、コロナ禍が私たちの生活のあらゆる側面に大混乱をもたらし、世界は集合的なトラウマを経験してきました。私たちの研究チームは、コロナ禍が適応力と回復力に与えた影響を調べました(適応力と回復力はOPQからの合成尺度)。この研究は、コロナ禍前の期間(2019年10月〜2020年2月)の回答者4,574人と、ロックダウン後の期間(2020年3月〜8月)の回答者6820人のデータを使用して、アメリカで実施されたものです。この結果もまた、私たちの人生における重要な時期がパーソナリティの変化を引き起こす可能性がある、という考えを支持しています。

コロナ禍は、感情的にも肉体的にも、私たち皆に非常に多くの影響を与えました。この集団的トラウマが人々を近づけることができるのは確かに真実ですが、私たち全員が過去数年間同じような経験をしたと仮定するのは間違いです。コロナ禍は残酷かつ迅速に多くを奪い、何千もの悲しみを孤立させました。これらのユニークな体験には次のものが含まれます。

  • 健康の喪失:病気自体によって直接影響を受けた人々のことを考えてください。体調不良に苦しみ、おそらく長期的な症状や人生を変える合併症に対処し、そして、側にいた人を失うという惨状を経験した人々です。
  • ストレスの多い仕事状況:コロナウィルスに苦しむ人々の世話をしたり、必要な物資が必要な人々に届くようにしたりする重要な仕事において、非常に多くの人が最前線で働いてきました。その人たちは、毎日アドレナリンが上がるのを感じ、常に残業し、コロナ禍と戦うために自分たちのスキルを使い果たして感情的および肉体的に傷痕を引きずっています。
  • キャリアの保留:さらに、産業が崩壊し、家族が在宅学習する子供たちや体調不良のメンバーの世話をするため、多くの人々が仕事を失ったり、仕事を辞めざるを得なくなったりしました。生き残るために、選択の余地はほとんどなく、キャリアが中断されたり放棄されたりしました。非常に多くの人々が経済的困難に直面し、生きるためのお金を得る新しい道を見つけなければなりませんでした。
  • 節目の時期を逃す:それから、人生段階でユニークな影響を受けた世代があります。試験や資格取得を逃した人々。バーチャルに大学に通った(そして大学生活の社交的なところをすべて逃した)大学生。自宅のリビングルームから職業生活を始めた新入社員−彼らはキャリアを形成する上で非常に重要な、人とのやり取りや指導、知識と専門性の共有を逃しました。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

この白書は以下のURLから入手することができます。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/how-the-pandemic-changed-our-adaptability-and-resilience/
(ダウンロードするにはお名前や所属組織名などの入力が必要です)

また、この白書の概要は、当社タレントマネジメントソリューションサイトのコラム「コンサルタントの視点」でもすでに取り上げました。
https://solution.shl.co.jp/success/column/220408skiyota/

次回は、調査結果についてです。

(文責:堀 博美)

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