堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

2012年7月27日〜8月12日、ロンドンでオリンピックが開催されます。今回ご紹介するニュースはそのオリンピックに関連して、4月27日付けの電子版Guardian紙の記事です。

第100回 オリンピックで仕事を休めるか?

マイケル・フォーサイス(仮名)は不幸な男である。子供の時からオリンピックのファンなのに、先日、2012年のロンドンでのオリンピック期間中、仕事を休んではいけないと言われたのだ。

1984年にカール・ルイスが1回のオリンピック大会中に4個の金メダルを取ったジェシー・オーエンの記録と並んだのを見た時から、マイケルは人生をオリンピックに捧げてきた。

『私はシティ地区の資産管理会社に勤務していますが、上司から、チケットを持っていないなら、オリンピック期間中に有給休暇をとってはいけないと言われました。チケットが発売されたとき私は海外で働いていて、買うことができなかったのです。しかし、2週間休暇をとってテレビで観戦し、雰囲気を味わおうと思っていました。その代わりにほぼ毎日午前7時から午後5時まで仕事とは。フェアじゃありません。』

オリンピック期間中、寛大な会社も多いだろうが、現在の雇用法では、会社には何とかチケットを手に入れた人からの有給申請を許可する義務はないし、フレックス勤務やボランティア休暇などの特典提供を強いられることもない。つまり、大会中、勤労者の権利向上を期待している社員は、ショックを受けることになる。社員の多くは、イースト・ロンドンでオリンピック選手ががんばっているのを見るのではなく、自分自身が上司とフェンシングをしていることになるだろう。

以下、読者の皆さんが、この夏、直面するかもしれない状況について述べていこう。

休暇

フルタイム勤務者は最低28日間(祝祭日含む)の休暇をとる権利をもつ。しかし、状況によって会社は申請を拒否することができる。

Landau Zeffertt Weir Solicitorsのフィリップ・ランドー弁護士は次のようにコメントする。『大会は1年で最も休暇が集中する時期に行われます。休暇を申請する権利はありますが、休暇日数の少なくとも2倍の日数、事前に会社に通告しなければなりません。』

子供のいる社員は8月のほとんどを早々と休暇申請する可能性があり、それが事態を一層難しくしている。

服務規定では、会社は、申請された休暇日数と少なくとも同じ日数以上前であれば、休暇申請を拒否できる。たとえば4日間の休暇申請を拒否する場合は、4日前に社員に告げなければならない。しかし、オリンピック期間中は通常以上の休暇申請が予想されるため、不運な社員はオリンピック選手のプレーを見るのではなく、同僚の決裁箱の中身を処理する、という状況になるかもしれない。

ランドー弁護士は続けてコメントする。『会社にとってもやりにくい問題です。単純に早く申請された順番でいくか、誰の休暇を認めるかについて何らかの方針を定めるか。どんなやり方をするにしても、一貫した、かつ、差別的でない適用をすべきです。』

遅刻

出勤しなければならない人にとって、大会会場へ向かう人々の渋滞による遅刻も問題だろう。ロンドン交通局の予想によれば、地下鉄はいくつかの駅で少なくとも30分遅れ、特に、ジュビリー線でストラトフォードやO2アリーナの主要イベントに向かう人と通勤者がぶつかるロンドン・ブリッジ駅ではそれ以上遅れる可能性がある。バスの路線や時刻も影響を受けるだろうし、道路変更が自動車通勤者を混乱させる。

困るのは首都で働く人だけではない。国中で多くのイベントが催されるため、地方の労働者の通勤も混乱する可能性がある。

政府ウェブサイトのgetaheadofthegames.com は、労働者に、通勤に影響があるかどうかを調べ、トラブルを避けるよう前もって計画することをアドバイスしている。さらに、会社側へは、可能な場合は徒歩または自転車の通勤を社員に勧めるようアドバイスしている。

ランドー弁護士は、理解のない会社は遅刻で給与を減額できると述べる。『別途合意のない限り、社員には、職場にいない時間分の給与を受ける権利はない、というのが基本姿勢です。』

マイケル(仮名)は、彼の会社は休暇取得と同様、遅刻にも厳しい、と言う。『金を稼ぐことが全ての業界ですから、社員が姿を見せなければそれが直接収支に響きます。たとえそうでも、もっとやりようがあるはずです。大会期間中の遅刻は許されない、定刻どおり必ず机についているよう早めに家を出ること、と警告するEメールが全社員に届きました。遅刻した人は懲戒処分を受ける、というわけです。』

病欠

病気でもないのに有給休暇をとってはならない−特に大会に行くのならば。机についているべき時に群衆の中で歓声をあげている姿がテレビで放映されるかもしれない。ランドー弁護士は次のように述べる。『本当に病気でない限り、上司にうそを言うのは甚だしい違法行為です。一日の病気であれば、実際に仕事に来られないほどなのかどうか上司にはわかりませんが、リスクは残ります。』

皆がとても楽しみにしているオリンピック競技の時に本当に病気になったら、必ず証拠として医者から診断書をもらおう。それが懲戒処分を食い止めることに役立つかもしれない。また、ソーシャル・メディアのサイトに不注意にコメントするなど、病気ではないと疑われるようなことは絶対にしてはならない。

いい上司

うれしいことに、自宅勤務やフレックス勤務を許可する会社も多い。メロディ・キング(ヘルスケア関連ソフトウェア会社Ascensus 商品マネジャー)の会社は、社員に高い自由度を与え、皆がオリンピックを楽しめるよう会議の時間をずらしたりしてくれる。

メロディは次のように述べる。『来月、会社はウォータールーに移転予定で、オリンピックによる遅刻が予想されます。私は自宅勤務を許可されており、出社する日でも通勤ラッシュの混乱を避けるために、定例チーム会議はいつもの早朝から午後にずらされます。何時間も電車ですし詰めにならずに会議に参加できるのは本当にうれしいです。

『私はVPN(仮想プライベート・ネットワーク)を使ってオフィス・ネットワークに接続できる、暗号化されたラップトップを持っています。他にも電話会議やスカイプなどのテクノロジーを利用しています。』

ステファン・リード(人事アセスメント専門会社SHL最高経営責任者)は、オリンピックの自転車ロードレースのルートがテムズ・ディットンの本社のすぐ前を通ることになっており、社員にはフレックス勤務を許可するつもりだと述べる。『我々は事業継続計画(business continuity plan)を持っています。オリンピックに向けて準備、練習を繰り返してきました。全員がラップトップとインターネット接続、スカイプを装備していますので、お客様に優れたサービスを継続することができます。

社員にはオリンピックを楽しんでもらいたい。申し出たものには休暇をとらせますし、出社している社員が見られるよう大画面テレビを置く予定です。好ましくない欠勤が蔓延するようなリスクはとりたくありません。』

契約によって、社員は決められた時間に会社に到着し、決められた時間勤務する義務があるが、よい面として会社側も社員の契約時間を変更する権利を持たない。

国際法律事務所Taylor Wessing雇用チームのパートナーであるNiki Walkerは次のように述べる。『代わりに、会社は、勤務日数を圧縮したり、コア時間を変更したり、始業時刻や終業時刻をずらしたりしてくれるかもしれません。ただ、あなたのロンドン支社の同僚が自宅勤務を許可され、あなたが許可されないからといって苦情を申し立てても、ある支社の社員に一時的に許可された手段を全国に広げなければならないという法律はありませんよ。』

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

お気づきのように、今回の記事は人事やアセスメントに直結したテーマではありません。引用部分にSHLメンバーのコメントが掲載されている、というくらいの関わりです。本コラムも今回で第100回を迎えました。少し息抜きの意味をこめて取り上げた次第です。4年に一度の祭典、運動オンチの私でもなんだかわくわくしてきます。

なお、原文は長い記事なので一部省略しました。全文を読みたい方は、こちらから確認できます。どうぞご了承ください。

文責:堀 博美

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