SHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はオンライン版ワシントンポストにCEBジーン・マーティンが連載しているコラムからご紹介します。原題は The case for reaching out to non-traditional IT talent です。

第207回 IT専攻学生以外をねらえ

過去数十年に渡るすさまじいテクノロジーの発展によって多くの職務が生まれました。
あまりに職務の数が多いため、テクノロジー人材が足りません。今日のアメリカの求職数500万件中、IT関連が50万件強。どの職種よりも多い数です。

ほぼ全ての産業で日常業務にテクノロジーが組み込まれており、テクノロジー人材は、テクノロジー会社だけでなく、アメリカ経済全体に渡って強く求められています。事実、IT職の需要の3分の2は、ヘルスケア、製造、銀行など非テクノロジー産業からです。結果として、すべての産業の会社が人材争奪戦で競わされています。

これは経営者にとっては恐ろしい現実ですが、新卒者であれ社会人経験者であれ、IT分野に入ろうと考えている人にとっては前途有望なニュースです。過去の経験にかかわらず、もしその人たちが迷っている理由がITの学位や背景がないことであれば、飛び込むべきです。

現在のIT職のほぼ40%は4年制テクノロジー学位がなくてもできます。数多い初級、中級レベルのIT職でうまくやっていくために必要なスキルは、高校卒業者が研修やオンラインコース、コーディングの集中講座、コミュニティカレッジの授業などを受けることでマスターできます。

残念なことにIT職の採用は伝統的に4年制のテクノロジー学位を持つ集団に対象者を絞り、それ以外の多くの有資格候補者を検討範囲から除外しています。4年制大学のコンピューターサイエンスの学位がIT職での成功の前提条件だ、という考えは間違った仮定であるばかりでなく、ポテンシャルの高い応募者プールを大きく狭めることになっています。

テクノロジー人材の争奪戦に勝とうとする経営者にとっての最大のチャンスは、どこでどのように人材を求めるか、です。IT職の空席を埋めるために、経営者は採用活動を改革し、新しいルートから採用しやすくする必要があります。IT職マーケットで競争優位を保ちたいならば、経営者は非伝統的な人材プールから候補者を募る計画を立て、惹きつけ、評価し、能力開発しなければなりません。

マスターカード社とセントルイスのNGO組織であるローンチコードの提携のようなパートナーシップが良い例です。この提携は、伝統的な資格の有無にかかわらない現地の非常に優秀な求職者をマスターカード社に紹介します。NGO組織によって選抜された候補者が企業に提示され、企業はその候補者を採用するか、または、有給の試用期間を申し出るか、の選択権を与えられます。ローンチコードは候補者がその職務の遂行能力があることを示せるようなツールやプラットフォームを与えます。このパートナーシップを通じて、マスターカード社はスキルのあるIT人材を得ることができ、ローンチコードは新進のテクノロジー人材をやりがいある職務につけることができます。

非伝統的な背景からテクノロジー人材を雇用する企業では、IT職の空席への人材供給が増えることに加え、定着率も改善しています。実際、フォーチュン500社を対象とした調査では、非伝統的な集団から採用された候補者は、伝統的な採用方法を通じて採用された候補者に比べ、自然減以外の退職が45%少ないです。その最大の見返りを得るのが継続的なトレーニングを提供する企業であることは言うまでもありません。

手短に言えば、ベスト・カンパニーはIT人材プールの幅を広げるために次の4つのことをやっています。

  1. 非伝統的な人材源から採用するという意識を作り出し、支援する。
  2. それらの人材源が応募するルートを作る。
  3. 資格ではなく、適性を評価する。
  4. 継続的なトレーニングと能力開発を提供する。

テクノロジーは、今日、仕事をどう進め、企業がどう競争力を保つかの重要な要素です。そのため、ビジネスの成功にとってIT人材はますます重要になり続けるでしょう。しかし、4年制のIT学位を持つ候補者を探すだけでは、組織は必要な人材を見つけることはできません。より広く網を投げ、IT職採用で非伝統的な背景からの候補者を含めるよう変えることによって、企業は必要なテクノロジー人材を見つけることができ、同時に、個々人に見合った雇用機会を促進して、全体として経済を発展させることができます。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

大学での専攻や資格を重視する欧米諸国では、採用にあたって「過去」を重視してきたと言えます。しかし、ビジネスを取り巻く環境は常に変化しています。そこでは「過去」よりも「未来」、個々人のポテンシャルや適性を軸とした採用にギアチェンジする動きが始まっているのではないでしょうか。

(文責:堀 博美)

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