堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は、Human Resource Executive誌(2012年11月号)の記事をご紹介します。企業における人材アセスメントの現状と未来について、アメリカの人事コンサルティング会社Human Capital Source社CEOのJac Fitz-enz氏が寄せた記事です。

第114回 アセスメントを考える

『アセスメントは自分の直感よりちょっとよいくらいだ』と主張する管理職がいる。『何もやらないよりはよい』というわけだ。私の意見は少し違う。まず、まずい構想による妥当性のないアセスメントならば何もやらないよりも悪い。間違った結論に飛びついて危険な行動に出るようなことになるからだ。他方、うまく設計された妥当性の高いアセスメントは、ローリスク・ハイリターンの人材開発投資につながる洞察をもたらしてくれる。ただし、解釈者はデータに集中すべきである。データを歪曲して自分の仮説を確認するようなことをしてはならない。最後に、アセスメントと能力開発が関連付けられた時、真に投資見返りを最大化できる。

フィールドの明確化

アセスメントには基本的に2つのタイプがある。知的能力と行動である。

記憶想起や高次の思考力などの知的能力を測定するアセスメントは重要である。これは事実と客観性の世界である。社員の業務遂行能力を調べることは組織の成功に欠かせない。

行動のアセスメントは、自分や他者、優先順位、結果、変革のマネジメントに関連するコンピテンシーに焦点を当てる。仕事の重要な側面であることは確かだが、測定はより難しい。知的能力は行動特性ほど仕事環境の違いによる影響を受けない。どのように作業するかを教えることは、対人行動の複雑さや結果を理解させることよりも容易である。

行動アセスメントは対人能力という主観的な領域の解明を目的とする。ビジネスで軽視されがちなのは、価値観や態度、信念からくる行動である。コミュニケーションやリーダーシップのスキルに優れていても、動機が破壊的な人はいる。独裁者がそれである。人々を動かすことはできるが、間違った方向に動かす。肯定的な価値観や倫理観は優れたビジネスリーダーの特徴である。「あなたは正直ですか?」と人に直接尋ねても意味がない。しかしながら、人々の価値観を示す指標を探ることができるように設計されたアセスメント・ツールはある。ビジネスの競争的側面や様々な経営不祥事が大きく報道されていることを考えると、倫理面の傾向を無視してはならないと考えられる。

アセスメント・ツール

シアトルのコンサルティング会社Institute for Corporate Productivity(i4cp)が2011年に実施した調査では、回答者にどのアセスメント・ツールが効果的かを尋ねた。業績と最も相関するアセスメントを判断することが目的である。

従業員1000名以上の企業で、25個のツール中13個が業績と負の相関、6個が正の相関だが有意差なし、4個が業績と高い正の相関であった。調査結果は同社白書High-Performance Executive Assessmentから入手できる。

同社シニア副プレジデントのJay Jamroq氏は、人のポテンシャルやパフォーマンス、組織適合性について比較的客観的な読みをするためにアセスメント・ツールを活用するよう提言している。ただし、質の低いツールや不適切な活用はメリットよりもデメリットが多い、と警告する。

変化への対応

市場は急激にかつ絶え間なく変化している。世界経済、競合、テクノロジー、顧客、社員など、ほぼ週単位で変化しているようだ。私は、DDI、Hogan Assessments、Kenexa、Lominger、PDI Ninth House、Questionmark、SHLなど主要ベンダーのリーダーを取材した。私が関心を持ったのは、この急激に変化する環境においてアセスメントがどのように「関連性」を保つことができるか、である。ツールの妥当化に莫大な投資をしたアセスメント会社はこれらの変化にどう対応しているのだろうか?

Eugene Burke氏(SHL chief science and analytics officer)は、「関連性」はアセスメントの信頼性の決定的要因だと同意する。アセスメントがどのように提示され、実施されるか――例えば、受検者が楽しく受検でき、顧客のブランドイメージに合うような、双方向ビデオやアバターによるアセスメントなど――という面もひとつである。しかし、『究極的な「関連性」は解決すべき問題は何かということ。望ましい結果からスタートして、そこから遡ってベストなアセスメントを見つける。SHLは顧客の成功を予測する決定的行動を見極め、それらの行動にアセスメントを対応付ける。その情報をもとに、既存アセスメントの組み合わせで対応するか、よりカスタマイズされたものを作成すべきか、顧客が決断できる。管理職が理解できる言葉で行動や結果について話すことが、アセスメントで見極められたデータや人的情報の「関連性」に対処する鍵だ。アセスメント結果を顧客にどのようにリポートし、人の能力についての組織分析にどう組み込むか、ということ。』

Ryan Ross氏(Hogan Assessment Systems)は、彼の会社の研究部門は基準関連妥当性など様々な研究を通して顧客のソリューションのパフォーマンスを毎年評価している、と述べる。顧客にとっての成果や予測の正確さを継続的に見ていくことによって、同社は急激に変化する環境についていっている。これは、過去のパフォーマンスに安住せず、予測力や信頼性を維持するための基本である。

Karis Ahlberg氏(Kenexa)が述べるには、パーソナリティや経験、知的能力、状況判断テストを組み合わせることによってアセスメントはより様々なものを含むようになってきた。さらに、変革風土や個人適性を測定することの重要性を認識する企業が増えてきた。

他のベンダー企業の専門家もまた、現在の研究をもとに常にアップグレードしていくと話す。アセスメント・ツールの活用を検討する際の基本的な質問は、それがどのように設計・開発・妥当化されたかである。テスト項目が当該の行動や環境に関連していることが示されなければならない。この記事に紹介したベンダーたちは妥当性や関連性の維持に大きく投資しているが、そこまで熱心でないベンダーもいるだろう。

潜在的な問題点

よくある間違いは、不勉強なコンサルタントが、有名だがその顧客の特定のニーズに合っていないツールを紹介することによって自分のアセスメント知識を示そうとする場合である。同様な問題は、コンサルタントがそのツールの設計意図を超えて活用場面を広げようとするときにも起こる。多くの管理職はそのような提案を評価するための経験や知識がない。

アセスメント・ツールに関するi4cpの調査結果では、回答した610社の77%が自社内で作成した360度ツールを使っていた。それらの会社はその結果データがニーズを満たしていることをどう確認しているのだろうか? また68%がMyers-Briggs Type Indicatorを使っていた。測定範囲の限られたこのツールを能力開発計画の一部としてどう使っているのだろうか? この種の活用は時に組織を二分するカルト的信奉者を社内に創り出すこともある。

未来

アセスメントはセンシティブな領域である。行動アセスメントは高額で時間がかかり、パーソナリティに触れるため取り扱いが難しい。しかし、ビジネスの予測分析の一部としての活用が始まりつつある。

ブルームバーグ・ビジネスウィーク・リサーチ・サービスはビジネス分析の現状について世界930社を対象に調査した。主な結果は以下のとおり。

  • ビジネス分析で使われるツールの1位はやはりスプレッドシートである。
  • 分析は部署内で使われる。会社全体で統合されることは少ない。
  • 経験に基づく直感が、今でも、意思決定を推し進める要素である。
  • アクセスや正確さ、一貫性の問題に対処するための1位はデータである。
  • 結果をどう活用するかを知っている適切な人材が不足している。
  • ビジネス分析の活用の成否に、風土が重要な役割を果たす。

ソフトウェアツールやタブレット、モバイルデバイスなどの急増はアセスメント手法の変革を推し進めている。紙テスト(さらにはコンピュータ画面のテスト)の代わりに、ゲームやアバターなどのツールが若い世代を特に惹き付ける。ビジネスのスピードは速く、人々は伝統的な時間のかかるアセスメント・ツールにかける時間がない、または我慢できない。

この記事の最初に、アセスメントと能力開発は関連していなければならない、と述べた。この2つのサービスを提供する人々は、投資や施策について話し合う会議に参加すべきだと思う。会議は事業目的を明らかにすることから始まるだろう。そこから、2つのサービスを統合してそれを事業目的に結びつけるようなプログラムを作ることができる。ビジネスでよくある傾向は、各部門が他部門と連携を取らず自部門のことばかりに集中してしまうことである。それではだめだ。

最も重要なことは、アセスメント・リポートが他と比較してのベンチマークや投資効果の数値以上のものに成長しなければならない、ということである。SHLのバーク氏は、リポートのデータは顧客に対し、どんな選択肢があるか、それらがその顧客のニーズになぜ合っているのか、を告げるべきであると述べる。アセスメントは、奥の部屋で行う定期的なレビューから、最終的には、ローリスクの賢い意思決定を支援する分析ツールとして、経営陣がアクセスして活用できるようなものに進化していかければならない。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

少々長くなりましたが、全文の訳をご紹介しました。

人事アセスメントの結果が人事部内のみの話題から、経営戦略会議における重要な情報として活用されるようになるために、どのようなデータをどのように加工して提示できるのかが我々ベンダーにとっての大きなチャレンジであると考えています。

文責:堀 博美

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