SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はデジタルビジネス雑誌workflowに掲載された記事をご紹介します。

第385回 ハイポテンシャル従業員の発見にAIを使う

ポテンシャルの高い(HiPo)従業員は、通常の従業員よりも高い価値をもたらします。ベストな人材を採用しその人たちのスキルを伸ばすためにどのようにAIが使えるか、見ていきましょう。

Howard Rabinowitz
2023年6月15日

NFLドラフトで199位に選ばれた選手がスカウトを驚嘆させる選手ではないことは明らかです。しかし2000年に199位に選ばれたのは、ほかでもない、トム・ブレイディでした。

そう、トム・ブレイディ、チームを7回のスーパーボウル優勝に導いたクォーターバックです。どういうわけか、鋭い目を持つプロのスカウトは彼の大きな才能を見逃しました。

ポテンシャルの高い(HiPo)従業員、つまり組織内で2段階上のレベルに昇進してリーダーシップの役割を担う可能性、能力、意欲を持つ従業員を見分ける際、企業は同じ間違いを犯すわけにはいきません。Gartner社の調査によると、HiPo従業員は、他の従業員、さらには業績の高い従業員よりも91%多くの価値を組織にもたらします。これは重要な違いです。業績の高い従業員のすべてが高いポテンシャルを備えているわけではありません。実際、CEB社の調査によると、業績の高い従業員のうち、HiPo従業員はわずか15%(6人に1人)です。

このふるい分けのプロセスを支援するために、多くの企業が人工知能(AI)に注目しています。組織心理学者によって開発された適性、態度、行動アセスメントからのデータを活用し、AIはどの従業員が真のリーダーシップの可能性を持っているかを判断して、企業がリーダーシップ開発のための希少なリソースをより効果的に投入できるようにします。さらに、AIツールは、HiPo従業員がそのポテンシャルを発揮するために必要なスキルを開発できるようコーチングします。

どの従業員が高いポテンシャルを持っているかの判断は、長い間、管理職の主観的な評価や「直感」に基づいた不正確な科学でした。さらに悪いことに、無意識の偏見が管理職の判断を鈍らせ、女性や少数派のキャリアアップを妨げる場合があります。

「対象者の人種や性別を無視するようAIを訓練することはできますが、それらを無視するよう人間の脳を訓練することはできません」と、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのビジネス心理学の教授であり、『I, Human: AI, Automation, and the Quest to Reclaim What Makes Us Unique』の著者であるトーマス・チャモロ・プレムジック博士は言います。「AIがHiPoのより公正で公平、多様かつ包括的な識別に使用される可能性があることは明らかです」。

SHL、Plum、TestGorilla、ghSMARTなどの人材分析会社は、AIを使用してHiPo識別のプロセスから暗黙のバイアスを取り除きます。その代わり、組織心理学者や行動心理学者が開発したアセスメントツールから収集したデータに依存しています。

SHLではAIがアセスメントプロセスのあらゆる側面に組み込まれている、と欧州プロフェッショナルサービス ディレクターのサラ・マクレラン氏は述べています。さまざまな職種、業界、企業規模の従業員を対象とした研究からAIがデータセットをトレーニングします。また、AIはSHLの予測機械学習アルゴリズムを構築するものでもあり、テストプロセスを分析したりもします。

「私たちは単に正解数と不正解数を見ているだけではありません。答えに到達するために受検者がとったアプローチも分析しています」とマクレラン氏は説明します。

その結果が、知的能力、昇進意欲、組織へのエンゲージメント、という3つの領域における従業員のポテンシャルの予測的な評価です。チームをマネジメントする適性があるか?管理職やリーダーの役割に昇進したいという真の意欲があるか?長期にわたって組織に貢献してくれるか?

マクレラン氏の指摘によれば、特定のリーダー役割を果たす可能性があるかどうかに関する27の重要な要素のうち21について、SHLのアセスメントで女性が男性よりも優れた成績を収める傾向があり、AIのデータ駆動型成果によって女性にとっての昇進機会が平準化される見通しがあります。

しかし、アルゴリズム設計における暗黙のバイアスの可能性が実証されていることを考慮すると、少なくとも現時点では、アウトプットをモニターするために人間が関与する必要がある、とマクレラン氏とチャモロ・プレムジック氏は共に警告します。その従業員とじかに接している管理職からのインプットを考慮に入れたり、アウトプットに多様性と公平性が確保できているかどうかをデータサイエンティストが調べたりすることが必要です。

「人間とテクノロジーが一緒にやれば、片方だけの場合よりも、より正確で包括的なものが生み出されます」とチャモロ・プレムジッチ氏は述べます。

ポテンシャルの高い従業員が特定されたら、リーダーとしてのポテンシャルを発揮するためのスキルを開発するのに役立つ新しいAIツールの出番です。人間的なタッチが必要なスキルについてもそうです。

ハーバード ビジネス スクールのアンソニー・メイヨー教授は、2003年から2021年まで同大学の主力であるハイ・ポテンシャル・リーダーシップ・プログラム(HPLP)の参加者3,000人以上を研究しました。感情知能やコミュニケーションなどのソフトスキルが、HiPosがトレーニングを必要とする分野のトップ3に常にランクインしていました。

「これらのスキル開発は、多くの場合、挑戦です」とメイヨー氏は説明します。「結果重視で自立しているなど、彼らがリーダーの役割に就くきっかけになったものが、さらなる成長の妨げになる可能性があるからです。考え方の転換が必要です」。

従来、ソフトスキルのリーダーシップコーチングは、1対1のメンター制度や1週間の研修合宿を通じて行われてきましたが、メイヨー氏が指摘するように、「コストと規模を考えるとそれは不可能です」。

それでは、新しいテクノロジーはメンター制度を拡張して民主化できるのでしょうか?最近の研究では、10カ月の集団生活でソーシャルスキルの向上において、AIチャットボットが人間のコーチと同様に効果的であったことが示されています。他の研究では、トレーニーが、人間のコーチに対してと同じようにAIと「前向きな協力関係」を築くことができることがわかっています。

ChatGPTのような生成AIプログラムを含む自然言語処理の進歩により、チャットボットのコーチング能力が加速している、とチャモロ・プレムジック氏は言います。「ウェアラブルが私たちに十分に動いているのか椅子に長時間座りすぎているのかを教えてくれるのと同じやり方で、AIは私たちの行動に関するフィードバックを提供してくれるのです」。

例えば:管理職としてトレーニング中のHiPoが電子メールや文書を送信する前に、AIコーチに依頼して、メールや文書内の感情的なトーンを確認し、より共感的な言葉を提案してもらう。また、AIコーチにオンライン会議をモニターしてもらい、参加者たちが肯定的な反応をしたかどうか、誰に話しかけたか無視したか、誰の話を途中で遮ったか、評価してもらう。

ただ、AIリーダーシップ コーチング ツールという新しい産業が現れつつありますが、感情知能と真の共感を効果的に育成するという点ではAIは「まだそこまで来ていない」、とチャモロ・プレムジック氏は述べています。

ポテンシャルの高い従業員に向けたAI自体のポテンシャルは、まだ十分に活用されていないようです。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

記事の原文はこちらです。
https://www.servicenow.com/workflow/it-transformation/hipo-employees.html

人事におけるAI活用についての記事、いかがお感じになったでしょうか。人事の世界にもDXの波が押し寄せてきています。

この「SHLグローバルニュース」のコラム、私が担当するのは今回が最後となりました。2008年6月の第1回から約15年間、ご愛読ありがとうございました。このコラムが少しでも皆さまの興味を惹き、お役に立っていたならば幸いです。

(コラム自体は引き続き継続します。どうぞご期待ください。)

(文責:堀博美)

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