堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は、CEBブログに掲載されているオン・ボーディングに関する記事をご紹介します。

第142回 まずいオン・ボーディングの隠れたコスト

営業を主体とする会社はベストな人材を発見して雇用することにかなりの時間とリソースを費やしますが、新人のオン・ボーディングについて考えることが後回しになっていることが多いものです。残念なことに、非効果的なオン・ボーディング・プランはこれらの貴重な投資を危険にさらし、退職率の増加や一人前になるまでの時間の延長につながります。

さらに営業担当者の役割は徐々に変化しており、そのため、営業機能は複雑化して成功に必要なスキルも変ってきています。

  • 洞察による営業(insight-selling)の出現:洞察による営業には、ビジネス感覚と高次の分析的思考スキルが必要です。それらは多くの新人営業担当者がもともと持ち合わせていないものです。
  • 社内の複雑化:営業担当者は多数の社内関係者と連携しなければなりません。取引内容が複雑になればなるほど多数の部署からの協力を得ることが必要です。
  • 商品や営業チャネルの拡散:今日のほとんどの営業担当者はいくつかの商品ラインに渡って営業することが期待され、市場に出る複数の戦略に関与することが多いものです。
  • 顧客の複雑化とサービスへの期待の高まり:買い手企業もまた複雑化しており、営業担当者はコンセンサスをとりながら営業を進めるために多様な意思決定者や影響力を持つ人々に対応しなければなりません。

これら4つの要素が、新人営業担当者が習得すべきスキルを劇的に変えています。会社はこれまでのスキルの習得レベルを上げるだけでなく、さらにまったく新しいスキルも追加しなければなりません。

新人営業担当者のオン・ボーディングに必要な時間はこの10年で32%増加しています。つまり、以前は9ヶ月で一人前になると期待できていたのであれば、今はさらに3ヶ月プラスされて1年かかることになります。これは、営業担当者が期待通り動けるようになる時点でさらに遠くなるということですから、会社にとって売上が喪失/延期されることにつながります。しかしながら、オン・ボーディングの期間が延びることには単に売上がなくなるということ以上のコストがかかります。

多くの企業は新人の採用とオン・ボーディングの初期コストが高いことを認識しており、採用コストや導入研修、基本給などのコストは考慮に入れています。

しかし、大多数の企業がプランに入れていないのは、新人の中に一人前になるまでにより多くの時間がかかる人がいる場合の追加コストです。CEBはこれが月6万ドル以上になりうると見積もります。これも、この金額が後で取り戻せるとわかっていれば許容範囲でしょうが、新人のほぼ40%については、追加コストによって一人前になれるのか、それともその前に退職してしまうのか、わかりません。

投資の見返りが見えないことに加え、業績の上がらない営業担当者は営業組織全体に影響します。上司や同僚の時間を奪ってしまうため、チーム全体の足を引っ張ります。さらに、顧客を遠ざけたり、ニーズを誤ってとらえたり、関係を壊してしまうような営業担当者は、顧客の眼から見て、あなたの会社の信頼性に回復不能なほどの(もしくは少なくとも非常に高額な)ダメージを与えます。

新人営業担当者が一人前になるためにより多くのスキルを習得することが期待される一方、業績不振の直接的、間接的なコストが、より早く一人前にさせなければならないと言うプレッシャーを増やします。このような状況では、非効果的なオン・ボーディング・プランを持つ余裕は会社に全くありません。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

「on board」とは船や飛行機に乗っている状態です。つまり、オン・ボーディング(on-boarding)とは、会社を乗り物に例え、新しい乗組員(=新規社員)を迅速かつスムーズに機能させるためのプロセスです。本コラムの第61回第62回でオン・ボーディングの重要性やメリット、実務上のヒントなど詳しく論じました。この機会に再度ご確認いただければ幸いです。

新しい年を迎えました。年を重ねるにつれ一年があっという間にすぎていく感じがします。充実していると時間が短い? それとも、ミヒャエル・エンデの小説「モモ」に出てくる「時間泥棒」のせいでしょうか? 

文責:堀 博美

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