堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループのネット配信「SHL Newsletter」や広報誌「SHL News」、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回もユーザー向けグループ広報誌「SHL News」最新号(2011年春号)から、近年注目されつつあるプレゼンティーイズム(presenteeism)に関する記事をご紹介します。タイトル「幽霊退職」の原語は「ghost turnover」。記事にもあるように、社員が退職を決意しながらも後ろ向きの理由でその職にとどまっている状態を「幽霊」という言葉で表現しています。

第70回 英国労働力の意欲欠如が「幽霊退職」に拍車

官・民組織の社員・管理職1000人を対象とした先日のSHL調査で、回答者の半数近く(47%)が「他に選択肢がないため、嫌な仕事にとどまっている」、5人に1人が「余剰人員として解雇されたいと思っている」と回答しました。社員が退職を決意しながらも景気が不透明なためにその職にとどまっているといういわゆる「幽霊退職」は、実際の社員の動きよりもビジネスにはるかに大きなダメージを与える可能性があります。

調査によれば、動機づけの問題は多くの企業で見過ごされています。「仕事で重んじられていると感じる」と答えた人は半数だけ(53%)でした。この数値は官営組織でさらに低く(48%)、一方、民営組織では59%でした。このような英国労働力に蔓延する不幸にもかかわらず、調査回答者の50%以上が「職を失うかもしれないと思って義務として要求されている以上に長時間働いている」と回答しました。この仕事慣習が「プレゼンティーイズム」を生み出しています。プレゼンティーイズムとは、成果や生産性に関係なくとにかく出社していなければならないと社員が感じている状態です。

しかしながら、英国ビジネスにとってよいニュースは、この高レベルの不満が不況による避けられない結果では決してないということです。優れたラインマネジャーは社員の意欲に大きな影響を与えることができます。「自分の上司は経済危機に非常にうまく対処している」と考える人の77%が、自分は「仕事で重んじられている」と感じており、マネジャーがスタッフをサポートするためのスキルやトレーニング、ツールを持っていることの重要性を浮き彫りにしています。それに対し、「自分の上司の不況への対応は非常にまずい」と考える人については、その85%が「仕事で重んじられていない」と感じ、83%が「やる気がない」、半数以上が「新しい仕事を積極的に探している」と回答しました。

調査結果は、ラインマネジャー自身にもっとしっかりしたサポートを与えることが、彼らの動機づけ能力を社内に開放する鍵であることを示唆しています。マネジャーは困難な時代に自分の部下にサポートを提供する責任を負っているとよく期待されますが、人員整理やリストラを経験したマネジャーの3分の1強(37%)は、その期待に対処できる用意ができていないと感じています。

SHLマーケティング・ソリューション担当副社長Sean Howardは調査結果について次のように述べています。『経済のマクロの影響を一企業がコントロールすることはほとんどできませんが、自社の管理職が困難な時代にどう対処するかをコントロールすることはできます。ストレスに満ちた状況に対処できる用意ができていると感じ、やる気のない社員にどう報い、どう元気づけるかがわかっている管理職が、部下たちをエンゲージさせ続ける可能性をより強く持っています。』

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

労務管理においてアブセンティーイズム(absenteeism)という言葉は以前からありました。習慣的/長期的な欠勤により、業務生産性が著しく低下している状態です。対するプレゼンティーイズム(presenteeism)という用語は、2006年ハーバードビジネスレビュー誌の特集で取り上げられて以降、徐々に使われ始めています。出勤(present)しているのだけれども、体調不良や精神的な理由から仕事の生産性が非常に低い状態のことです。「欠勤」という明らかに目に見えるものでないため、会社に与える影響やコストはabsenteeismの数倍に及ぶと試算されています。

この記事では、調査結果から、presenteeismの問題に対処するにはライン・マネジメントが鍵であると指摘しています。多くの企業で行われている管理職研修について、近年、その内容を改めて見直そうという動きをよく目にします。自身の強み・弱みを客観的に捉えるための自己分析、ストレス・コーピング、コーチング技法など、管理職にしっかりしたサポートを与えることの大切さが再確認されつつあるのだと思われます。

文責:堀 博美

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