堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HP、プレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は経済誌Forbesのオンラインサイトから、リーダーシップ開発についての記事をご紹介します。筆者はNextBridge Consulting 社のEdith Onderick-Hareveyです。

第241回 リーダーは燃料切れ? なぜ文脈が重要なのか?

皆様の多くと同じように、私はリーダーの採用、能力開発、昇進の話し合いに関わってきました。その会話の中では、どんなリーダーにとっても成功要因と考えられるリーダーシップ・コンピテンシーが中心となることがよくあります。

数年前、私がある顧客のリーダーシップ開発プロセスを構築してマネジメントしていた時、以下のような質問から人材レビューの会話が始まりました。すなわち、「我々はこの人物をどんなタイプのリーダー職に対して能力開発するのか?」「そのリーダー職に必要なもので、かつ他のリーダー職で必要なものと異なるものは何か?」。素晴らしい問いです。

アドバイザリー会社CEBは、3年間に渡ってほぼ1万人のリーダーを調査した結果、文脈が重要であると結論付けました。調査によれば、リーダーシップの文脈を考えながらリーダーの採用・昇進を行っている会社のほうが成功しています。つまり、その役職でそのリーダーがどんな具体的な課題や状況に直面するだろうか?業績が好転したところなのか?コストの抑制が必要なのか?そのリーダーが新しい機能を構築することが必要なのか?経験者のチームを率いるのか、それとも社会人になって日の浅いメンバーで構成されたチームを率いるのか?調査結果から、成功したリーダーと業績不良のリーダーの違いは、その人のパーソナリティやスキル、経験が、その職務の具体的な課題にどれくらいうまくかみ合っているか、であることがわかりました。

上記のことが、私のお客様であるバイオテクノロジー企業で実際に起こったのを見ました。成長してきた技術があるポイントに達して、組織に、よりしっかりした構造を取り入れる準備ができた時、会社はプロセスを開発・導入したり意思決定の流れを整備しようと大企業出身の幹部を採用します。しかし、多くの場合、その幹部は2年と持たない。何故か?彼らが成功していた環境はすでプロセスがきっちりしていて厳密な意思決定が行われるものでした。その人はその仕組みを作った経験がないけれども、その仕組みのおかげで成功できていたのです。一方、そのバイオテクノロジー企業は曖昧さと起業家的な社風を持っており、プロセスを開発する経験を持った人を必要としていました。その幹部のパーソナリティやスキル、経験がその職務にうまくかみ合っていなかったのです。

このことはリーダーの育成方法に対して、何を意味するのでしょうか?もし我々がある人のパーソナリティやスキル、経験をその職務にマッチングさせることに焦点を当てるならば、我々はどのようにしてその人が新しいスキルを身につけたり新しい経験をすることを手助けできるのでしょうか?

能力開発は弱みを直すことに焦点を置きすぎました。そのせいで強みをさらに伸ばすことがおろそかになっています。弱みの克服と強みの開発に同時に取り組むことはできません。強みの開発は、どんな補完的スキルがあればその強みの効果を高めることができるかを考えることから始まります。自分の弱みに対処する能力開発活動を作ることだけに注目してはいけません。

ある人のパーソナリティやスキル、経験を整理して、成長機会を与えましょう。それは、「either/or」ではなく、「yes/and」で考えることです。

何年も前、私がある専門化学会社と仕事をしていた時、ある海外駐在者を別の地域に異動させることについて話し合いました。彼が優れたチームリーダーであることは知られていましたが、アジアのその地域での経験がありませんでした。我々は、彼がチームリーダーとしての強みを生かし、かつ、異なる文化の中でリードするという経験を開発できるよう、彼をそのポジションに異動させることを決めました。

ある人の経験やスキルがその職務の文脈にぴったり一致していなくても、成功したり成長機会になったりするに十分なほど近い可能性はあります。

かつて私はあるバイオテクノロジーメーカーのリーダーから、彼が採用した人の中で最も優秀な人たちの何人かがビール会社出身である、と聞いたことがあります。そうです、ビール会社なのです。実際、両者には共通点がたくさんあります。規制業界であること、ほんのわずかな汚染が商品をダメにすること、安全性を何よりも重視すること、品質水準に厳密なこと、など。全く業界は違っても必要なパーソナリティやスキル、経験は似ており、その人たちは新しい業界について学ぶことができます。

ある職務に完璧にマッチするスキルや経験、パーソナリティ特性を全て持っている人はいないでしょう。ですから、リーダーには能力開発の機会が必要です。しかし、機会そのものがギャップを埋める方法としてみなされ、結果、その人がその職務で失敗することにつながるというのはよくあることです。組織はその考え方を変えなければなりません。経験は、意図的でよく考えられたコーチングやメンタリング、サポートと一緒に与えられる場合にのみ、素晴らしい教師となります。

その人が脱線するのを待つのではなく、どんなサポートが必要かを積極的に探してそのサポートを与えることが、成功確率を大きく増やします。その人の能力開発の必要な分野は何か、その職務がその能力開発にどう役立つか、あなたが進展具合をどうモニターするか、について具体的に話し合ってください。異動の前に、そしてその人がその職務に就いている間中ずっと、サポートを提供してください。

どんなリーダーにも失敗経験があります。失敗が最良の学びの機会であると言う人も多いです。しかし、リーダーとしての大きな失敗がキャリアの妨げとなったり、会社の勢いを遅らせたり、エンゲージメントと売上の両方に影響を与えたりこともあります。リーダーの職務の文脈を評価する共通言語とプロセスを創り出し、それらリーダーが消えていくことを減らしてください。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文はこちらです。
https://www.forbes.com/sites/forbescoachescouncil/2017/10/09/leaders-running-out-of-fuel-why-context-matters/#2da05a032852

本コラムの前回の記事で、リーダーシップ開発について人事が改善すべきこととして3つ挙げました。その最初のポイント、「文脈特有のリーダーシップ・プロファイルに焦点を当てる」で述べた内容に関連しての今回の記事です。筆者の実務経験に基づいてのわかりやすい文章だと感じています。

(文責:堀 博美)

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