堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はオンライン版ワシントンポストのリーダーシップに関連するサイトに7月21日付で掲載された記事をご紹介します。

第188回 アクセンチュアが毎年の人事考課とランキングを一掃

アクセンチュアCEO Pierre Nanterme氏 はワシントンポストに対して、社内プロセスで「大きな改革」をする準備を静かに進めていると話しました。「社員数33万の企業が業績マネジメントプロセスを変えることを想像してみてください。すごいことです。過去やっていたことのほぼ90%を一掃しようとしています。」

同社は9月からスタートする2016年度から、ランキングと年に一度の考課プロセスをやめ、社員が現在進行中の業務について上司から時宜を得たフィードバックを受け取るという、より流動的なシステムを導入します。

アクセンチュアは、強制的なランキングや時間のかかる書類仕事、管理職にも社員にも生まれるフラストレーションにこりごりした少数だが著名な大手企業のリストに加わることになります。CEBの調査によれば、フォーチュン500社のうち6%の企業がランキングをやめています。

これらの企業は社内/外の調査から、結局、時間やお金、努力の全てが自分たちの主目的、すなわち「社員の業績改善推進」を究極的に成し遂げていないということがわかったと言います。

3月にはコンサルティングと会計の大企業デロイトが新しいプログラムを試行していることを発表しました。アクセンチュアのように、ランキングが消え、考課プロセスは年間を通して徐々に展開されます。デロイトはまた、考課の中でたった4つの簡単な質問(うち2つは単純に「ハイ・イイエ」で答えるもの)を使う実験をしています。

マイクロソフトはほぼ2年前にランキングをやめました。社員を相互に比較して判断するシステムのメリットを長く説いてきただけに特に注目を集めました。

アドビ、ギャップ、メドトロニックもまた人事考課プロセスを変えました。

アクセンチュアの決断についてNanterme氏は次のように述べています。「正規分布に従って強制的に序列化するなどのランキングはやめます。人をその人の職務において評価したいのです。ワシントンで働く誰かやバンガロール(インド)で働く誰かなどと比較するのではありません。それは関係ありません。その人についてやるべきです。」

多くの大手企業はまだそこに飛び込んではいませんが、ほとんどが現在のシステムには不備があることに気づいています。CEBの調査では、管理職の95%が自社の人事考課のやり方に満足しておらず、人事リーダーのほぼ90%がプロセスは正確な情報を生んでいないと答えています。

「人事考課でベストな社員はナルシスト的で自分の売り込みがうまい社員である傾向があります。彼らは将来、あなたの会社が前に進むために必ずしも必要な社員であるとは限りません。」(CEB人事施策リーダー Brian Kropp)

Kroppの研究から、プラスの評価を受けた社員でさえプロセスからのマイナス効果を経験していることがわかりました。エンゲージメントをなくすきっかけになったり、創造性や成長へのオープンネスを妨げたりすることがよくあります。

CEBはまた、平均的な管理職が人事考課関連の活動に年間200時間を費やしていることを明らかにしました。トレーニングを受けたり、フォームに記入したり、社員に結果を伝えたりです。これらの時間を合計し、人事考課システム自体のコストを加えると、一万人規模の会社は人事考課の実施に年間およそ3500万ドルを費やすことになります。

「このプロセスは重すぎ、コストがかかりすぎます。そして、結果は芳しいものでありません。」(Nanterme氏)

しかし興味深いことに、新しいアプローチを展開するという決定は通常、このコストを抑えることにあまり関係ありません。古い評価システムを新しい評価プロセスに変えても時間やコストはあまり節減できない可能性がある、とKroppは言います。そうではなく、メリットはそれらの投資のリターンです。「最も賢明な会社は、自分たちが費やしている時間と資金から最大の価値を得るにはどのようにしたらよいか、と考えています。」(Kropp)

アクセンチュアが自問したのがこの質問です。そしてその答えが、社員の貢献の価値を後から測定しようとする業績マネジメントを変えなければならない、ということでした。その代りに、社員を将来の業績向上に向かわせる定期的なサポートが必要でした。

「リーダーシップ術は測定や評価に時間を費やすことではありません。人を選ぶことです。そして自分が適切な人を選んだと思ったら、その人に自由と権限を与えて改革をリードします。測定は非常に簡単なものでよいのです。」

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

日本では年末賞与の時期に向けてそろそろ定期考課を実施する企業も多いのではないでしょうか?

欧米でその人事考課をやめる先進企業が増えてきたという今回の記事ですが、よくよく読んでみると、評価自体を完全に撤廃するというものではないようです。後追いで業績を振り返り相対評価でランキングをつけるというやり方から離れ、将来に向けて現在の仕事でより高いパフォーマンスを上げるためのコーチングサポートに軸足が移りつつあるということではないでしょうか。

文責:堀 博美

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