堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は第133回でご紹介した英国人事専門誌HR Magazineの記事の後半をご紹介します。

第135回 人事リスク上位8位と、その対処方法(後半)

どんなリスクか
もしあなたの部署が顧客データを扱っているならば、スタッフによるその紛失や詐取はどんなことをしても防がねばならないものです。しかし、KPMGの2012年『データ紛失バロメーター』によれば、データ紛失事故は2011年から40%増えています。「顧客データは非常にセンシティブでかけがえのないものです。流出すればブランドにダメージを与え、莫大な罰金が科せられます。」(情報管理会社アイロンマウンテン 人事SVP アン・ベスト氏)

人事にどう関係するか
スタッフがセンシティブなデータを担当するならば、人事は導入やトレーニングを通じて社員の意識を十全にしなければなりません。また、詐取する可能性のある人を雇用しないようにすることも人事の責任です。

今、何をすべきか
雇用の際の身元調査のプロセスを再吟味し、一定期間後の再調査を検討しましょう。ベスト氏は、情報管理担当のラインマネジャーにトレーニングを実施し、チェックリストを渡すようアドバイスしています。「セキュリティの風土を築きましょう。オフィスにあるスクリーンセーバーにはフィッシングやパスワードの情報があります。セキュリティについて考えさせることが基本です。」

どんなリスクか
ウォートン・スクールのピーター・カッペリ教授は次のように述べています。「合併や買収は、『人』という点であらゆる種類のトラブルをもたらします。特に、人材が全てである専門サービス企業のようなビジネスではそうです。」 M&Aの過程では、TUPE(事業譲渡と雇用保護規則)から余剰人員退職金やディスエンゲージメントまで、人に関連するリスクが山積です。

人事にどう関係するか
M&Aに関連するリスクの多くは、長期で見れば最終的に人事に戻ってきます。雇用法やTUPE手続きの遵守は人事の責任ですが、新しいスタッフに配慮してエンゲージメントを築くことや、トレーニングや導入のプログラムを整えること、両社員間の仲介なども考えなければなりません。統合に関する課題は真っ先に取り組むべきものであり、さもなければ、余剰人員や採用、極端な場合は雇用裁判などで買収額の倍を支払うことになる危険があります。

今、何をすべきか
人事部が M&Aプロセスから閉め出されることがよくあります。ですから、交渉が進んでいるようなら、なぜ人事が来るべき変革に関与しなければならないのかを主張しましょう。統合では人材戦略に焦点を絞ります。予想される障害を検討して先々の計画を立てます。変化についてラインマネジャーと相談し、できるだけオープンなコミュニケーションを保ちます。

どんなリスクか
2011年施行の英国贈収賄防止法について、2013年のアーネスト・ヤングの調査によると、その存在を知っているのは56%の会社しかありませんでした。どんな法律違反もそうですが、当該法へのノン・コンプライアンス(遵守しないこと)はビジネスにとって高くつきます。事実、贈収賄を防止できなかった民間企業への罰金には上限がありません。

人事にどう関係するか
ポリシーとプロセスの問題に戻ります。コンプライアンス・チームと協力して、潜在的なリスクへの社員の意識を高めることは人事の責任です。

今、何をすべきか
トレーニングのプログラムにコンプライアンス問題に関する適切な情報を必ず入れます。必要であれば法的アドバイスをもらいます。

どんなリスクか
一言、馬肉スキャンダル(訳者註:2013年1月、牛肉100%と表示されたハンバーガーパテに馬肉が混入していたことをアイルランドの食品検査官が発見したことをきっかけに、同様な表示偽装が次々と発覚。ヨーロッパ全土にまたがる問題に広がった)。管理しきれないほどサプライ・チェーンが大きくなりすぎた時に何が起こりうるか、の教訓です。また、昨年、アップル社製品の一部が社員を奴隷のように働かせている会社で製造されていることがわかった時、アップル社がその会社をすぐに変えたことを思い出してください。

人事にどう関係するか
「会社がその場をうまくやり過ごすことはもうできません。今は何でもツィッターでリアルタイムに流れます。」(Skanska建設 フランシス)。どんなスキャンダルも評判に大きな傷をつけるものに変わる可能性があり、それが社員のエンゲージメントや定着、人材募集に影響を与えます。加えて、労働力のアウトソーシングに関する問題は人事の問題です。

今、何をすべきか
劣悪な労働環境の改善を訴えるthe Staff Wanted Initiativeプロジェクトは、SEE方式の活用をアドバイスしています。SEEとはScrutinise(精査)、Engage(関与)、Ensure(確保)の頭文字の略です。スタッフや採用・人材エージェントとの関係を精査してモニターし、従業員と協力して潜在的な問題を明らかにし、勤務地がどこであれ適切な労働環境を必ず提供するようにします。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

人事にとってのリスクランキング、上位8個でした。タイトルを一覧にします。

  1. 重要スキルの不足
  2. 承継計画
  3. 保険とデータ
  4. 倫理と行動
  5. 知的財産の紛失・侵害
  6. M&Aリスク
  7. コンプライアンスと規制
  8. サプライ・チェーンのリスク

非常に幅が広いですね。人事部門が担うべき機能が多岐にわたることがあらためて理解できました。上記のうち、3と8については日本エス・エイチ・エルが直接お手伝いできる領域は限られそうですが、他の6つはどれも人事アセスメントツールからの情報が非常に役立ちます。

文責:堀 博美

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