人事部長からの質問
管理職の育成や登用でアセスメントを実施する大企業が増えてきたと聞きました。何故ですか?
アセスメントによる能力評価点の方が、人事考課、各種筆記試験、面接等による能力評価点よりも、より妥当性が高いと感じる人が増えているからです。たとえば、傾聴力という能力は、心理検査のような方式ではまったくわかりません。いくらでも作為できるからです。もちろん、人事考課でもわかりません。なぜなら、この人は私の話をピントを外さず、しかも深いところまで聞いてくれた、は相談をもちかけた人しかわからない性能だからです。傾聴力を一番よく測定できるのは、現実の相談場面をつくり、アセッサー(専門的な評価技術者)が相談ごとをぶつけ、それに対する一つひとつの言動を観察、記録、分類、評価づけを行うアセスメントなのです。欧米系の企業が早くからその効用に気づいていた評価手法の意味と価値をようやく腰の重い日本の大企業も気づくに至ったということです。
文責:清水 佑三
若いうちに読んでおくべき本を教えてください。
このコラムで書いたことがあると思いますが、まだ大学院をでてすぐの頃、内野建夫という優れた経営コンサルタントのもとに弟子入りしました。その人の書庫は、私が関心をもつ古典で埋められていて、どうしてこんなに興味、関心が重なるのだろう、と思ったほどです。内野先生は、いきなりその書庫から一冊の本を取り出し、君、今のうちにこの本を徹底的に読め、将来きっと役立つ、とポンとある本を手渡しました。S.I.ハヤカワという一般意味論の泰斗というべきアメリカの学者が書いたもので、『思考と行動における言語』という本でした。読んでいくうちに、体が震えてくるような衝撃を度々受け、以後、この本を繰り返し、繰り返し読んでいます。お奨めしたいですね。アマゾンで買えます。
文責:清水 佑三
営業マン研修で費用対効果をあげたい(研修担当)
「上司から、研修効果を数字で測りたい。それができたら、君のプラス考課になる、とにんじんをぶらさげられました。さてどうしたらと困っています。」…非常に簡単だと思います。ポイントは二つあります。どっちかが欠けてもダメです。研修イベントの告知文を映画の予告編のように映像化して対象層に流し、その刺激で動く人だけに参加者を限定します。どんな内容の研修であっても、やらない人グループの営業数字に比べて参加組の営業数字の平均はあがります。もうひとつ。最も市場価格が高い外部講師に何から何まで任せてしまうのです。値段の高い、行列のできるプロは、リピートさせるべく工夫に工夫を重ねます。学校の先生のような一方的な話し方はしません。全員参加の、動きの激しい、スポーツイベントのような時間になるはずです。講師のギャラをけちらなければ、ここからも 数字を押し上げる効果が期待できます。もしこの提案を上司が拒否したら、上司の案でやります、と開き直ってください。絶対失敗します。
文責:清水 佑三
マネジャーとして必要な能力で地域差はあるのでしょうか。
「関東・関西ではマネジャーとして求められる能力は異なりますか?何となくですが、東京、大阪の合同会議をすると、東西で微妙な違いを感じるのです。」…かなり前のことですが、総合商社の東京採用組、大阪採用組の違いを分析しました。とても面白い結果がでて、東西の人事担当者とも、漠然と感じていたことがデータで裏付けられたとおっしゃっておられました。一言でいえば、東京採用組は、万事にソツがない優等生タイプ、大阪採用組は、人としての魅力をふんだんにもっているタイプなのです。この総合商社では、面接に現場の課長クラスを動員しているので、彼らのタイプの違いを反映していると思いました。顧客が求めるものが違う、それに合わせて採用する、結果としてそういう違いとなったのだと思います。SHLグループで、アジア・太平洋地区のそれぞれの拠点でマネジャーのコンピテンシーモデリングをすると、拠点別で違う結果がでてきます。回答はイエスです。
文責:清水 佑三