堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HP、プレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

引き続き、SHL白書「タレント・アセスメント・テクノロジーの台頭」の和訳の連載です。

第252回 SHL白書「タレント・アセスメント・テクノロジーの台頭」(連載5)――メディア形式について

このセクションでは、アセスメントで使用される様々なメディア形式の検討点を述べます。メディアをうまく使うことによって、企業は、高い妥当性と優れた受検者反応という目標を達成できるかもしれません。

ゲーム化されたアセスメントは動画で行われると連想しがちですが、使えるメディア形式はいくつかあります。例えば、全て文章で場面設定し、どんなアクションを取るかを受検者がタイプ入力して回答するシリアスゲームも考えられます。この形式は1980年代にパーソナルコンピューター用に作られた初期のアドベンチャーゲームのいくつかで使用されました。利用できる主なメディアの選択肢には、文章、オーディオ、静止画像(写真、絵など)、マルチメディアがあります。マルチメディアは2-Dや3-D動画やライブアクションのビデオなどです。それぞれの形式に長所と短所があります。ひとつのアセスメントにこれらをミックスすることは可能ですが、統一感の欠けた「フランケンシュタイン」アセスメントにならないようよく考えてください。

使用メディアの選択は様々なアセスメント特性に影響し、企業によってこれら特性の優先順位は違います。ですから、企業がメディア形式を決める前に、どのアセスメント特性が最も重要なのか、優先順位をつけることが重要です。どのメディア形式を採るかを決める際は、これら様々な特性に対するその形式のインパクトを互いに比較考量し、コストとのバランスを取ります。あるメディア特性が優先度の高い特性を向上させる場合もあれば、重要特性のひとつを向上させるが別のものを阻害する場合もあります。鍵となる特性のいくつかについて以下に説明します。

心理測定的特性

心理測定的な検討の焦点は、特定のメディア形式が、正確な測定と優れたパフォーマンス予測に貢献するか、もしくは、妨害するか、です。一般に、もしあるメディア形式が無関係な要素を持ち込む場合は、その形式は正確な測定を妨害します。無関係な要素とは、受検者のアセスメント成績に影響するが、対象となる成果を予測しないものです。他方、もしあるメディア形式が無関係な要素を取り除くならば、それは正確な測定を向上させるでしょう。例えば、文章ベースのアセスメントにおける成績は、受検者の読むスピードと理解力の影響を受けます。もしそのアセスメントが測定しようとしている行動が高いレベルの読解力を必要としないならば(例:小売店の販売職)、文章の多いゲーム要素は正確な予測を阻害するかもしれません。文章の多いゲーム要素とは、導入や途中の記述や細かい成績表、パフォーマンスのフィードバックなどです。オーディオやアニメーション、ライブアクションビデオを使うと、読む必要性は減るでしょう。ただ、これらメディアタイプは他の無関係な要素を持ち込むかもしれません。例えば視覚的なメディアでは、アセスメントシナリオにおける人物特徴を決めなければなりません。文章ベースのシナリオでは単純に「ある客が店に来ました」と述べるだけです。その客をアニメーションで描く場合は、人種や性別、年齢、服装、体格、髪の色など全て提示されます。それらの特徴のどれかが、受検者のシナリオへの反応のし方に影響を与えるかどうか、注意深く検討しなければなりません。無関係な特徴を最小限にするメディア形式を選ぶべきです。

妥当性

数少ない研究のいくつかは、伝統的なアセスメントと比べて、メディアベースのアセスメントは同等もしくはより高い妥当性を持つことを示しています。ある研究では、ビデオベースの状況判断力テストが、同内容の文章ベースのバージョンよりも職務パフォーマンス予測においてより高い妥当性を持つことが見出されました。この妥当性の増加分は、ビデオベースの判断力テストが文章ベースのものよりもその職務に似ているためかもしれません。アニメーションを使ったアセスメントの妥当性を比較した研究はほとんどありません。

差別に関する「不利な影響」

ビデオベースの状況判断力テストは、文章ベースのものよりも、知的能力アセスメントとの相関が低いことがわかっています。その差異はビデオベースのアセスメントでは候補者の読む必要性が低いためかもしれません。この相関の低さの結果、ビデオベースのテストは文章ベースのテストよりも少数民族グループに対する「不利な影響」が小さいと思われます。アニメーションのアセスメントに関しても、この面でより多くの研究が必要ですが、「不利な影響」はより小さいと考えられます。

受検者のエンゲージメント

同じ状況判断力テストの項目を、ビデオ、2-D、3-Dの3つの形式で見せる実験で、被験者は、2-Dや3-Dのアニメーション・バーションよりも、ビデオベースのバージョンのほうがより引き込まれる、と答えました。2つのアニメーション・バージョン間での違いはありませんでした。この結果から、アセスメントプロセスでの受検者のエンゲージメントを高めるためには会社はアニメーションよりもビデオを使う方がよいかもしれません。

メディア形式に対する受検者の反応

さきほど述べたように、職務関連性は受検者のアセスメント公平性認知に影響します。状況判断力テストで、受検者は、文章で提示されるよりも、3-Dアニメーションで提示された項目の方がより職務に関連するとみなすことがわかりました。また、様々なメディア形式を使ったアセスメントを相互に比較した際、2-Dや3-Dアニメーションよりも、ビデオベースのほうがより職務に関連していると見られました。職務関連性に関して2-Dと3-Dアニメーションの間に差は見られませんでした。

受検者の公平性認知のもう一つの側面は、自分の知識やスキル、能力を示す機会です。研究結果では、3-Dアニメーションの使用はアセスメントで力を発揮する機会についての受検者の認知を高めませんでした。それでも、パーソナリティ検査を含むテストバッテリーの中に3-Dアニメーションを含めると、(文章によるパーソナリティアセスメントと比べて、)自分のパーソナリティを示す機会があるという受検者の認知が増えました。数は少ないですが最近の研究によると、他のアセスメントのバッテリーの中にメディアを駆使したアセスメントを含めることは、文章によるパーソナリティアセスメントの受検者認知を向上させるかもしれません。

いろいろな研究が、受検者は概ね、文章だけのアセスメントよりもマルチメディア要素を含むアセスメントを好むことを示しています。様々なメディアタイプ間での一般的な好みについて質問されると、回答者は概ねビデオベースアセスメントを第一位に、次に3-Dアニメーション、そして2-Dアニメーションと順番をつけました。現実度やそのアセスメントを使う会社に対する肯定的な印象についても、同じパターンが見られました。

表面的妥当性

表面的妥当性とは、アセスメントが状況に関連しているよう見える程度です。状況判断力テストの表面的妥当性の認知は、文章よりもビデオ形式で実施される方が高いということが研究からわかっています。肯定的印象、提示される情報、現実度、一般的な好みの評定を合成したものを基にすると、1番がライブアクション・ビデオ、2番が3-Dアニメーションになりました。両方とも文章ベースの内容よりも上位です。ですので、多くの場合、マルチメディア形式は表面的妥当性を高めるようです。ただし、報告書執筆など文章を扱うことが極めて多い職務では、文章ベースのアセスメントの方が表面的妥当性が高いかもしれません。

アクセスのしやすさ

公平性やダイバーシティ、関連法令順守の観点で、会社は、障がい者がアセスメントにアクセスできるようにするためにどんな調整が必要かを検討する必要があります。文章ベースのアセスメントではスクリーン・リーダーが使えるでしょう。静止画、アニメーション、ライブアクションビデオは調整が難しいかもしれません。おそらくクローズドキャプション(字幕)や音声描写などが必要でしょう。

実務的検討点

マルチメディアのアセスメント内容の設計プロセスは、文章ベースのアセスメント内容よりも複雑です。マルチメディアの場合、台本や視覚情報、聴覚情報で内容に命が吹き込まれなければならないからです。台本ができたら俳優を選んだり場面を作り上げたりします。このプロセスは通常、ライブアクションやアニメーションの専門制作会社と共同で行われます。このためアセスメント開発プロセスに時間とお金がかかります。また内容に修正が必要になることが多いかもしれません。例えば、別の文化に合わせてローカライズする、俳優を新しくする、ファッションの流行に合うよう服装を変える、会社のブランドを入れ替える、などです。文章ベースのアセスメントは視覚要素や聴覚要素に対応する必要はありませんから、通常、アップデートしやすいです。アニメーションはライブアクションビデオよりも柔軟に内容のアップデートができる傾向があります。

会社のイメージ

会社は膨大な労力と支出を使って望ましい会社イメージを作り上げ、維持します。会社イメージは応募者予備軍の惹きつけに影響します。会社によっては、自社のイメージに合った特定のメディア形式を使うことを選ぶかもしれません。文章ベースのアセスメントでは古臭い会社に見られるかもしれないと考える会社もあれば、文章ベースのアセスメントの方が安定感というメッセージを伝えられると考える会社もあります。応募者がアセスメントに何を期待するかも影響します。法律事務所に入るために文章ベースのアセスメントを受けることをためらう応募者はいないでしょうが、最新テクノロジーの会社の入社試験でそのようなアセスメントが出されると驚くかもしれません。

ダイバーシティ

多様な背景の人々から採用を行いたい会社は、そのダイバーシティを反映するようなアセスメントを行いたいでしょう。文章ベースのアセスメントが言葉による描写で人物背景情報を伝える一方、マルチメディア形式はより自然にダイバーシティを反映できます。マルチメディア形式では、民族や性別、年齢、その他の特徴の多様性を表すような俳優やアバターを選ぶことができます。場面背景に登場する脇役のダイバーシティも加えることができます。この点ではアニメーションの方がライブアクションビデオよりも有利です。追加人物にあらたな出演料がかからないからです。ただし、アニメーションを使ってダイバーシティを示す場合、ステレオタイプ的な好ましくない描写にならないよう注意してください。

(© CEB. Translated by the kind permission of CEB SHL Talent Measurement Solutions. All rights reserved)

訳者コメント

新しい時代のアセスメントについてのこの連載、ここまでで一区切りで、次回が最終回でまとめとなります。皆様、いかがお感じでしょうか?

(文責:堀 博美)

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