堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

リクルーターに関するCEB白書を連載してご紹介しています。前回までで、今後のリクルーターのあるべき姿は「人材アドバイザー」であると問題提起し、人材アドバイザーに求められる能力を行動レベルで論じてきました。今回は、それらの能力の評価と開発についてです。

第197回 CEB白書:リクルーターを人材アドバイザーとして再定義する(4)

人材アドバイザーの能力がどんなものかわかったら、次は、それらの能力を持つリクルーターをどうやって見つけて採用するか、です。目星をつけられるような単純で目に見える指標はありません。また、調達や人事、営業などの経験があることがイコール、人材アドバイザー適性のあることではありません。

データから人材アドバイザーになるために特定の経験が必要なわけではないことがわかります。特定スキルをどう行動に生かすか、なのです。

人材アドバイザー能力の多くは状況に特有なもので判断に依存するものですから、観察ベースのアセスメントが鍵です。しかしながら、リクルーター候補者の能力評価にロールプレイなどのデモンストレーションを使っている企業は48%だけです。

ハーツ・ヨーロッパの事例:リクルーター評価選抜の「Show me」モデル

ハーツ・ヨーロッパは、リクルーティング機能をより戦略的なものに創り上げるために、リクルーターの現在のチームに真の戦略スキルを持つ人材を投入することにしました。革新的な調達スキルを持ち、相手との効果的な関係を深耕し、雇用側マネジャーと渡り合ったり相談したり交渉したりするリクルーターが欲しかったのです。

そういう人を見つけるには普通の面接手法では不十分である、とハーツ・ヨーロッパは思っていました。履歴書や面接、推薦状のチェック。これらの手法のどれも単体では、過去の経験を重要な戦略スキルに対応付けたり、候補者が職務の中でそれらのスキルをどう活用できるかを示したりできません。

そこで、ハーツ・ヨーロッパは選抜プロセスにデモンストレーションの要素を加えました。模擬設定に対してリクルーター候補者に採用計画を準備してプレゼンテーションさせ、自分の戦略スキルを示してもらいます。候補者は5日間で、調達経路概要、人材プールリポート、選抜プロセス案、採用サイクルの時間とコスト見積もりの4つの文書を準備します。そして、雇用側マネジャーと人事ビジネスパートナーから成るパネラーグループに対してそれらの計画をプレゼンテーションします。

候補者は提言やプレゼンテーションのスキルで評価されるだけでなく、パネラーグループとどの程度真剣に渡り合い相談するかによっても評価されます。例えば、以下のような点です。

  • 様々な経路や選択肢を独創的に評価し、競合への対抗意識を持って受動的な候補者をも追い求めているか、もしくは、ただ単に空きポジションを掲示して代理店に接触し、積極的な候補者が現れるの待つだけか?
  • 伝統的な人材プールを見ているだけか、もしくは、業界の外の隠れた人材源から推薦しているか?
  • 選抜プロセス案は筋道だっており、かつ、現実的なものか?
  • 時間とコストの見積もりには、職務レベルや求めるスキルの希少性、ビジネスにとってのその職務の重要性など、複雑な変数が織り込まれているか?

各プレゼンテーションの前にハーツ・ヨーロッパのアセッサーは厳しい質問を用意します。非現実的な期待や理不尽な要求、リクルーティング機能への無配慮などを反映した質問です。候補者が予想外の逆境に落ち着いて説得力をもって対応できるかどうかをアセッサーは見ます。

つまり、このプロセスは抽象的な職務シミュレーションではありません。現実的な職務プレビューです。候補者は「できる」とただ主張するのではなく、実際にやらなければなりません。そして、候補者に自分が企業風土に合っているかどうか考えさせる一方で、ハーツ・ヨーロッパは候補者の適性を判断できます。

面接プロセス中のこのデモンストレーションの要素には時間が余計にかかりますが、しかし結果はそれだけの価値があります。実証された戦略スキルを持つリクルーターを入れることで、ハーツ・ヨーロッパは過去1年間で、人材斡旋会社への費用を100万ドル近く削減できました。新しいリクルーターたちは自ら範を示すことで、またチームの他メンバーをコーチングすることで、リクルーティング機能の戦略的有効性のレベルを引き上げました。

人材アドバイザー能力をリクルーターの役割に組み込む

ここまで、我々は人材アドバイザーの行動と能力で何を見るべきか、そしてデモンストレーション・ベースのアセスメントを使って評価・選抜することに焦点を当ててきました。ここからは、これらの能力をリクルーターにどう伝えて、自分たちの役割期待に組み込ませるかを考えましょう。

「測定できないものは改善できない」という古い決まり文句が正しいならば、人材アドバイザーの行動を示すリクルーターはわずか19%、というデータも驚くことではありません。多くの業績マネジメントシステムでは、戦略的な理想に到達するようリクルーターが鼓舞されることも、到達して褒められることもありません。

リクルーターの半数以上が、空きポジションを埋めるまでの時間や人数など、プロセスエキスパートの指標で結果責任を持たされます。しかし、雇用側マネジャーの決定への影響度や事業部の業績などビジネスインパクトに反映される人材アドバイザー能力の結果責任を持たされるリクルーターははるかに少ないです。持たせるべきなのでしょうか?CEBの答えはイエスです。プロセス指標に加えてビジネスインパクト指標への結果責任をリクルーターに持たせることで、リクルーターの業績は25%高まります。

つまり、インパクトを作り出すためには、測定されなければならず、そして、リクルーター自身にその結果責任を持たせる必要があります。

JPモルガンの事例:リクルーター・スコアカード

JPモルガン・チェースはリクルーターに対して、業績マネジメントシステムや強力なマネジャーなど質の高い人事管理リソースを提供してきました。しかし、それらの大部分はプロセス効率化に向けられ、リクルーターの戦略的影響力の開発には当てられていませんでした。

ここまで議論してきたとおり、オペレーショナルプロセスのエキスパートになるだけでは、リクルーターとして道半ばです。JPモルガン・チェースはプロセスの専門性と戦略的な有効性を兼ね備えたリクルーターを能力開発したいと思っていました。そのためには、優れたリクルーターとしての行動に対してリクルーターに結果責任を持たせる必要がありました。

しかしながら、コンピテンシーモデルの中に戦略スキルを入れるだけでは、リクルーターの賛同と行動変容を得るには不十分です。リクルーターはまたオペレーションと戦略の間に焦点をどう配分するかについてかなり具体的なガイダンスを必要としていました。

そこで、会社はそのためのリクルーター・スコアカードを作成しました。新しいスコアカードには戦略指標(重要な戦略的コンピテンシーに関する雇用側マネジャーのフィードバックなど)が組み込まれており、伝統的なプロセス/コンプライアンスの指標(補充率と時間など)と並べての比重が定められています。戦略的な有効性(図表5のシャドー部分)が各リクルーター・スコアカードの中で最大40%まで占めています。

 

図表5 リクルーター・スコアカード

これらのスコアはデータ主導であり、詳細まで明記されているのでリクルーターがこれに基づいて行動できます。「コンサルタント的であれ」という漠然としたものではなく、このスコアカードは改善に向けて目標とできる具体的なコンピテンシーや行動を測定しています。

新しい指標(現在実験中)は新人の定着率です。この指標はリクルーターがラインマネジャーと協力して導入後90日間の定着率を高めるよう設計されています。能力開発の話し合いのベースとしてスコアカードを用いて、JPモルガン・チェースは四半期ごとにリクルーターを確認します。リクルーターが業績を上げるようにするだけでなく、必要なコーチングや能力開発を得られるようにもするためです。頻繁な確認はリクルーターとその上司に、オペレーション面だけではなく戦略面でも向上するよう焦点を当てさせることに役立ちます。

結論は、戦略的なリクルーター能力の開発は一度限りのイベントではないということです。繰り返し行うプロセスなのです。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

白書の原題は「Redefine Recruiters as Talent Advisors」。

https://www.cebglobal.com/shl/uk/forms/insights/redefine-recruiters-as-talent-advisors/
からダウンロードできます。(お名前などの入力が必要です。)

文責:堀 博美

バックナンバー

2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年

学会発表論文