SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLグループのブログ記事をご紹介します。

第398回 公平な競争の場の実現を支援する

SHLのインクルージョンへの取り組みの1つとして、一般的でない経験を持つ候補者に対しても平等な革新的なアセスメントをクライアントと共同で開発した事例をご紹介します。

エリック・ポップ
2024/8/29

本事例のクライアントは、ホームレス、不安定な家族構成、薬物乱用、搾取、投獄歴、障害などの困難な状況に陥っている人々に様々な行政サービスを提供しています。クライアントは、サービス対象者と同様の経験をうまく乗り越えた人を採用したいと考えていました。そのような経験をすることで、共感や変わろうとするモチベーションへの理解など、職務に関連するスキルや態度が育まれ、職務で高いパフォーマンスを発揮できるだろうと考えたためです。

人生経験や社会的アイデンティティから仕事のパフォーマンスを予測することは、新しい概念ではありません。個人の経歴が人々の仕事における違いを説明するという原則に基づいて構築されたバイオデータのアセスメントは、1900年代初頭から使用されてきました。ただし、歴史的にバイオデータのアセスメントは、一般的に肯定的とみなされる経験と肯定的とみなされるグループとの関わりに焦点を当ててきました。典型的な項目は以下の通りです。

  • 「過去6か月間に何冊の本を読みましたか?」
  • 「あなたは学校でスポーツチームのキャプテンをしていましたか?」
  • 「あなたの両親は、STEM(科学、技術、工学、数学)分野への関心を深めることをどの程度勧めましたか?」

しかし、今回の対象となる応募者層は一般的にこうした肯定的な経験を積むために必要なリソースがありませんでした。STEM(科学、技術、工学、数学)プログラムがある学校へ通うリソースが不足している場合、親があなたにSTEMへの関心を深めるように促すことはまずありません。それどころか、今回の対象層の多くは良くないグループとのつながりを強いられていました。
したがって、このプロジェクトの目標は、文化的にしばしば偏見の対象となるけれども仕事に関連したスキルを開発する機会となるだろう経験を活用し、仕事のパフォーマンスを予測するバイオデータ項目を特定することでした。同時に、より一般的な経験を通じて同じスキルを育んだ可能性のある人々を排除しないことも必要でした。

クライアント、対象となる経験を持つ現職者、SHLの三者がもつ、それぞれの知見とスキルを活用し、公平な競争の場を作ることができるアセスメントが実現しました。対象となる経験を持つ人と持たない人の間で平均得点に大きな差がないことが示されました。

現職者のプライバシーや尊厳、そして幸福を守ることに関係者全員が尽力したことで、現職者が自分の体験談を率直に語ってくれ、仕事に関連したスキルの開発、そして最終的にはアセスメントの開発そのものに有益な知見が得られました。科学的に厳密なプロセスで開発されたアセスメントによって、すべての候補者に対して平等に、仕事に関連したスキルを発揮する機会を提供できるようになりました。

最終的に、クライアントは一般的ではない背景を持つ人とより一般的な背景を持つ人が同等の得点をとることができ、職務パフォーマンスを予測できるアセスメントを手にすることができました。

このプロジェクトはSHLでの18年間で私が関わったプロジェクトの中で最も困難で最もやりがいのあるプロジェクトの1つだった、と言わざるを得ません。困難な人生経験を持つ人々に、その経験を通じて培ったスキルを活用して、就職活動において平等な機会を提供するためのアセスメントを開発するためにリソースを費やす組織の一員であることを嬉しく思います。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2024/helping-level-the-playing-field-developing-a-lived-experience-assessment/

科学的なアセスメントによってインクルージョンを実現した、非常に興味深い事例でした。

(文責:廣島晶子)

タレントマネジメ
ントコラム 日本エス・エイチ・エルの人事コンサルタントの視点

バックナンバー

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年

学会発表論文