堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HP、プレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLグループのHPに紹介されている事例をご紹介します。

第260回 事例:FSCS ハイポテンシャル者の発見と育成

FSCS(Financial Services Compensation Scheme:金融サービス補償機構)は、2020年のビジョンを達成するために、幹部候補者の発見と育成に取り組んでいます。

FSCSとは:
  • イギリスにおける2000年金融サービス市場法の成立に伴って、2001年に設立
  • 全ての規制金融商品を一元的に処理する、世界で初めて補償機構
  • 原資は業界に対する賦課金
  • 従業員数200名弱
課題:
  • リーダー人材についての主観的な見方
  • リーダー人材のパイプラインの限界
  • 環境変化に対応できるリーダーの育成
結果:
  • 客観的な情報をもとに、適切な人材に時間と資金を投資
  • 重要コンピテンシーにリーダーシップトレーニング予算を配分
  • 従業員が当事者意識を持って自身の能力開発に取り組む
  • 管理職層への社内登用が増え、社外からの採用が低減

FSCSは外部事業環境の変化に直面しており、社内の風土がそれについていっていないのは明らかでした。

「プロセス主導のやり方を弱め、より革新的で機敏な風土に変える必要がありました。とりわけ、アウトサイドインの顧客経験の気風を築き、公の信用と信頼を高める必要がありました。FSCSの記章が金融サービス業界内の品質保証と見られるようになるという我々のビジョンを達成するために。」(David Blackburn(人事部長))

風土を変えるには、異なるタイプのリーダーが必要でした。変革志向で、新しい働き方に柔軟に対応できる可能性のあるリーダーです。しかし、社内に適切な人材がいる、という自信がありませんでした。

「リーダー人材は主観的に決めていました。プロセスを厳しくし、今までのやり方を変えるためのアクションを取る必要があることは明らかでした。FSCSはデータに基づいて論理的に考える人が多い組織ですから、より客観的で事実ベースの取り組みが新しいやり方への同意を得ることに役立つと私にはわかっていました。」(David Blackburn)

FSCSがSHLと取引を始めたのは2014年です。まず、求められる風土変革に必要な行動レビューから始め、SHLのユニバーサル・コンピテンシー・フレームワークに基づいて自分たち自身のコンピテンシーを作成しました。

「これらはすでに組織にうまく組み込まれましたので、自然の流れで、将来のリーダー候補者を見つけるための客観アセスメントをどう導入するかの検討となりました。経営層レベルと管理職層レベルの両方です。「能力」「意欲」「エンゲージメント」に焦点を当てたハイポテンシャル・モデルは、我々が組織内のハイポテンシャル者の定義について話し合う際の簡潔で一貫した共通言語となりました。しかし、もっと重要なことは、SHLのハイポテンシャル・ソリューションが対象者の強みと弱みの発見だけでなく、それを超えて、継続的なサポートを提示していることです。」(David Blackburn)

高業績の管理職25名に対して、最初のパイロット・プログラムが実施されました。客観アセスメントを使ってポテンシャルのレベルが明らかにされました。この集団が、自分の職務とFSCSの風土変革とに重要なコンピテンシーを真に開発できるよう、SHLがプログラムの対象者全員に1年間の「Development Coach」(オンラインのコーチング・プログラム)へのアクセスを提供し、継続的なOJT学習をサポートしました。

リーダー人材の見方が主観から客観に移行したことで、当初考えていたよりもリーダー・パイプラインに問題がありそうなことがわかりました。

「パイロット・プログラムの対象者25名中、我々の風土変革を推進するリーダーシップ・ポテンシャルを持った真のハイポテンシャル者は、たった一人しかいないことがわかりました。リポートを詳しく見ると、このグループは、計画や実行などのマネジメントコンピテンシーはとても強いのですが、戦略的思考や影響力やコミュニケーションなどで大きなギャップがありました。まさに、なぜ我々が経営レベルのリーダーシップ・パイプラインを持っていないのか、その理由が確かめられたのです。」(David Blackburn)

この情報を基に、FSCSは、リーダーシップ開発予算をどう投資するか、より狙いを絞った意思決定ができるようになっています。

「以前はスタッフを外部のリーダーシップコースに送っても、その投資の効果は見えませんでした。今は各人に開発の必要な特定のコンピテンシーにより狙いを絞り、それを本人の日常の仕事に組み込むことができます。管理職が能力開発や成長を部下との会話の中心におくために、アセスメントデータは非常に貴重なものになってきています。以前は1対1の会話は全て課題に関するものでした。今では会話ははるかに豊かであり、各人が自分の成長に責任を持つようになっています。」(David Blackburn)

そして、結果は徐々に報われ始めています。

「プログラムの結果、管理職層への社内昇進を増やすことができるようになってきました。3分の2のポジションが社内からです。まだ経営層レベルのパイプラインでやるべきことは残っていますが、そのレベルでも近い将来に社内昇進が現れるための枠組みはできている、と私は自信を持っています。」(David Blackburn)

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

ビジョンを達成するために今いる将来のリーダー候補者に何が足りないのか、からスタートしたリーダー育成は参考になりそうです。Developmet Coachは現時点では英語版のみですが、クラウドベースのアプリケーションです。実際の職務遂行経験の中から学びを推進できるようなしくみになっています。

(文責:堀 博美)

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