堀 博美のSHLグローバルニュース

当社はイギリスに本社を置くSHLグループとライセンス契約を結んでいます。SHLグループは世界40カ国以上に拠点をもち、30以上の言語で商品やサービスを提供する世界最大のアセスメント・サービス・プロバイダーです。

SHLグループはオンラインでSHL Global Newsletterを発行しています(季刊)。ニューズレターには特集記事やトピックス、活用事例、新商品のご案内などが掲載されています。

このコーナーでは、ニューズレターの中から、日本で人事アセスメントに携わる私たちにとって役に立ちそうな記事を選び、ポイントを日本語に翻訳してご紹介していきます。また、グループのHPに掲載されている活用事例なども適宜おりまぜていく予定です。イギリスを始めとする世界各国で、いま、人事の世界でどんなことが起こっているのか、何が話題になっているのか、を垣間見る契機となれば幸いです。
(ニューズレターはグループのHPで購読申し込みをすればどなたでも受け取ることができます。)

第1回として取り上げるのは、2008年1月号の特集記事「Generation Y : Understand the impact on recruitment」です。この記事の筆者はChris Hogan氏。イギリスのオックスフォードシャー在住、民間企業に20年間勤務した後、独立、ライターとして人事管理や評価に関する著作を多数発表しています。

第1回 Y世代は、採用にどんな影響を与えるのか?

「Y世代」は短い在籍期間で次々と転職するため、職務に合った人材を見分けることのできるツールを使うことがきわめて重要である。

Y世代が注目を浴びている

新聞の日曜版「仕事」のコーナーには、「面接の際はスーツを着用すること」などのヒントがよく掲載される。これらのアドバイスはまずは外見を整えるという意味で優れた方法だが、特に、最近「Y世代」と呼ばれる、野心的で考え方の自由な人々に向けられているようだ。彼らは現在労働市場を移動しており、これまでの世代とは根本的に異なるキャリア志向を持っているように思われる。

Y世代が企業組織に与える影響や、それがいいものなのか、もしくは、問題なのかについて、巷ではかびすましい。昨夏の英国新聞サンディ・タイムズでジャーナリストのメリー・ブレイドは次のように述べている。「Y世代の人は、独立心が旺盛で革新的で創造的。自分たちが活き活きできる環境を提供する覚悟のある会社に就職したいと思っている。」

Y世代は何を欲しているのか?

先日ロンドンで開催された「Y世代に聞け」と銘打ったフォーラムで、SHLはY世代者の嗜好やワークスタイルについての調査結果を発表した。調査結果から、多くの人が伝統的な会社組織、その採用方針や人事管理施策にしっくりあてはまらないことがわかった。Y世代者はよく旅行してきたし、今後も旅行したいと思っている。ファッションも年長の管理職が眉をひそめるようなもの。柔軟に働く覚悟はあるが、会社にも柔軟さを許容してもらいたいと思っている。

Y世代コンサルタントのサイモン・ウォーカーは、Y世代者の才能のたづなをどうとるかについての議論がここ1年半大きくクローズアップされている、と述べる。「問題は、Y世代者が伝統的な組織で働くことに魅力を感じないということです。働かなくてはならない場合、彼らは自分たちの価値観や嗜好が正当に評価されないと感じます。」

問題はただ世代間の衝突に関するものだけではない。人材をひきつけ、引き止めておくことは経営にとって重要である。ベビー・ブーム世代が職場から消えつつある昨今、会社がこれらの空席になった管理職やリーダーのポジションの後任をどう埋めていくか、にますます関心が寄せられている。

ステレオタイプ化に注意

「Y世代に聞け」データは、Y世代者の仕事に対するアプローチがかなり大きく異なっていることを示した。しかしながら、表面化ではわれわれ他の世代の者と同じだという証拠もある。

SHLシニア・コンサルタントで心理学者でもあるエレン・バードは次のように述べる。「Y世代独自の考え方というものは確かに存在しますが、それは、生まれつきではなく、育った環境によるものです。学習された行動であり、テクノロジーを使ったコミュニケーションや仕事をより快適に行うために生まれたものです。それゆえ、彼らの年齢やステレオタイプに焦点を当てるのではなく、その個人のスキルや適性を見分けることができることが重要なのです。」

言い換えれば、適性テストや心理テストが、Y世代者は他の世代の人と同様に、様々なスキルや性格特徴や強みや弱みをもっていることを示す。また、職務と人のマッチングのための職務分析の重要性も強調される。

バードは続けて言う。「この年齢層の全員がY世代者のプロフィールに適合するとみなしてはいけません。募集プロセスをオンライン化することがより多くのY世代者をひきつけると思うならばそれはそれでかまいません。しかし、既存のその他の応募方法も残すべきです。」さもないと、Y世代の特徴に当てはまらない有望な若者が漏れてしまう。18〜30歳の全員がiPodを持ち歩いているわけでもWEBサーフィンを楽しんでいるわけでもない。そして、その年齢層以外の人の中にもY世代のステレオタイプにぴったり当てはまる人はいる。

新しい才能に投資する

興味深いことに、「Y世代に聞け」調査で、大卒者の92%が職場で即戦力になれるスキルをもっていると答えた一方、彼らを面接した人事部長でそれに賛同したのはわずか54%であった。その原因となった社会的経済的トレンドが何であれ、1990年代後半のITブームのときと同じような、才能をめぐる新しい戦争が始まるようだ。そのための最善の準備をする会社が勝つ。

労働環境におけるY世代の出現という年齢層の移行は、会社組織が管理職やリーダーになれる人々を早急に見分け、能力開発しなければならない、ということを意味する。

「リーダーたちの定年退職が迫っていることに企業が気づいたら、その後任者を見分けるために心理測定評価がかけがえのない役割を果たすことができる。」SHLプロダクト・コンサルタントのレイチェル・オースティンは言う。

幸運なことにY世代は変化を恐れない。職種をまたぐプロジェクトや会社全体のプロジェクトなど、会社がチームの内外で人を異動させなければならない場合、彼らはその困難に非常にうまく対処できる。

Y世代を巻き込む

Y世代の会社への「エンゲージメント(関与)」に注目が集まっている。SHLはそれを測定・分析するツールを開発中である。レイチェルは次のように述べる。「エンゲージメントについての新しい質問紙は、定期的に使用されるべきツールです。エンゲージメントを測定し、モニターすることで、人は組織の中で成長する。エンゲージメントの多寡の理由を理解することにも役立ちます。」

「来年、エンゲージメント質問紙とOPQデータの相関をみるつもりです。そうすれば、どの組織、どの役割で、どのパーソナリティの人がより会社組織に関与するのか、がわかります。それによって、採用や育成にふさわしい人材を見分けることに役立ちます。」

Y世代の傾向のひとつは、短い在籍期間で会社を移動することである。それゆえ、職務に合った人材を見分けることのできるツールを使うことは理に適っている。能力開発のプロセスのスピードが上がれば社員はより短い期間で会社の役に立つ人材になることができ、能力開発にかけた投資を素早く回収できる。

Y世代のメンバーは才能と情熱にあふれている。が、彼らは現在に生きている。給与や福利厚生、教育研修など全てを新しく見直す必要がある。今は社員もどんどん変わるのだから。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

Y世代とは欧米のマーケティングで使われる用語で、1975年以降に生まれた世代を指します。日本で言えばいわゆる団塊ジュニアの次の世代。15〜25歳の青年期にPHSや携帯電話、インターネットなどをコミュニケーションツールとして活用してきた世代です。今や会社の中堅どころ、はやいところでは管理職への昇進が検討されるころでしょう。これらの人材をどう生かすか、が人事の重要テーマであることは世界共通のようです。上の世代の私から見ても確かに自分たちにはない才能やひらめきを感じます。一方、会社に対して見切りをつけるのが早い、もったいないなあ、と感じる場面も多々。

また、記事の後半に出てくるワーク・エンゲージメント(work engagement)は、近年産業心理学の分野でよく取り上げられる概念です。簡単に言えば「自分の仕事に対して活力に満ち完全に打ち込んでいる状態」(Hallberg & Schaufeli(2006))です。似たような概念としてinvolvement やcommitmentがあります。それぞれ日本語での定訳はいまだありませんが、個人の側からみた人事管理を考える際のキー・コンセプトとなりそうです。

文責:堀 博美

バックナンバー

2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年

学会発表論文