SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLグループのブログから知的能力テストに関する記事をご紹介します。

第383回 知的能力テストはやはり意味があるのでしょうか?

これまで言われているほど知的能力テストは職務パフォーマンスを予測していないという最近の研究結果に対する、SHLの見解です。

Sabia Akram
2023年7月27日

長年に渡って、知的能力テストは受検者の職務適性を評価するために使用されてきました。知的能力テストの成績が将来の職務パフォーマンスと直接相関していることが研究によって示されてきたためです。しかしながら、最近のメタ分析研究は、知的能力テストは当初確立されていたほど総合的な職務パフォーマンスと高く相関していないことを示しています。
一方、知的能力テストは特定の人種/民族グループに不利な影響を与える(アドバースインパクト)という点についての懸念もあります。したがって、インクルージョンの観点から、知的能力テストを選抜で使うべきかどうかについて疑問が生じます。
これらの最近の研究結果と懸念点を考慮すると、知的能力テストはもはや役に立たないということなのでしょうか?私たちはそれらを捨て去るべきでしょうか?
もちろん違います!

知的能力テストは、公平性・妥当性・信頼性が確保されるよう開発されて正しく使用されれば、人材のアセスメントにとって優れたツールです。受検者の能力を客観的に測定し、職務パフォーマンス全般、特に知的能力が必要な職務におけるパフォーマンスをよく予測します。
知的能力の関わるコンピテンシー(たとえば、素早く学ぶ能力)がその職務にとって重要であることが職務分析によって特定された場合、それらは、「知的能力テスト」と「行動ベースのコンピテンシー評価」の組み合わせで測定できます。「行動ベースのコンピテンシー評価」自体はアドバースインパクトを示しませんから、2つを組み合わせることで、選抜プロセスにおいてアドバースインパクトの可能性を軽減すると同時に、プロセス全体の予測的妥当性を高めることができます。
SHLはしっかりしたテスト開発プロセスを採用しています。SHLのテストは、厳格なレビュー、広範なトライアル、包括的な分析を経て開発されており、高品質でバイアスのないコンテンツのみを使用しています。実際、私たちは最近、質問の内容が特定グループの人々に対して偏っていないかどうかを判断するために、個々の質問レベルの成績の違いを調査しました。年齢、人種、性別、障がいの有無による差を分析した結果、バイアスを示すものとして特定された項目はほとんどありませんでした。さらに、これらの項目を削除することでテスト全体の差に影響を与えるかどうかを調べましたが、ほとんど影響はなく、私たちは質問レベルでの差がテストレベル全体でのさらなるアドバースインパクトにつながることはないと結論付けました。(が、公平性の観点からそれらの項目はやはり削除されました。)

しっかりした科学的設計の原則に従い、その設計においてダイバーシティ&エクイティ&インクルージョンを確保することが、知的能力テストの有用性の1つの側面であることは間違いありませんが、もう1つの側面は、それらのテストが責任を持って適切に使用されるようにすることです。SHLのお客様が当社のアセスメントを責任を持って利用できるよう、バイアスを最小限に抑えながら知的能力テストを最大限に活用する方法について、「すべきこと」と「してはいけないこと」をいくつか用意しました。

「すべきこと」:

  • 知的能力テストと実際の職務との関連性を検討してください。知的能力はその職務にとって重要ですか?そうでない場合は、代わりに、行動評価、構造面接、職務サンプルなど他のツールを使用して、その職務の主要なコンピテンシーを測定することを検討してください。
  • 選抜プロセスに総合的なアプローチを採用し、職務に焦点を当てたアセスメントの一部として知的能力テストを組み込んでください。その職務にとって重要なスキルは何ですか?
  • 最初のふるい分けでは、成績上位者をとるのではなく、最低限の目安を設定してください。アセスメントの段階で受検者プールの3分の1以上を失わないようにすることで、アドバースインパクトを最小限に抑えます。

「してはいけないこと」:

  • 大量採用、特に初級レベルの職務の採用で、知的能力テストを単純なふるい分けツールとして使用してはいけません。
  • 包括的な職務分析がない場合、または知的能力がその職務にとって重要であるという強力な証拠がない場合は、知的能力テストを使用してはいけません。
  • 貴社の人材アセスメントプログラムに、画一的なアプローチ(どの職種、どの職位にも当てはまるようなアプローチ)を採用していけません。

人材アセスメント分野のリーダーとして、SHLは貴社の人材アセスメントの意思決定をサポートする膨大なツールを持っています。
知的能力テストが貴社に適しているかどうか、どのようにすればわかるのでしょうか?当社にご連絡いただければ、上記の疑問を解決するお手伝いをし、知的能力テストを活用して最適な応募者を公正に選抜する際のベストプラクティスに関するご相談を承ります。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

記事の原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2023/are-cognitive-ability-tests-still-relevant/
(訳では一部、専門的な内容を省略しています。)

記事の中で触れられている「最近のメタ分析研究」とは、
Paul R. Sackett, Charlene Zhang, Christopher M. Berry, & Filip Lievens (2021)による
『Revisiting Meta-Analytic Estimates of Validity in Personnel Selection: Addressing Systematic Overcorrection for Restriction of Range』です。
https://pdfs.semanticscholar.org/915a/a40e852d5975086111dcd359967400cc5150.pdf

この研究結果から、知的能力テストの予測力が従来語られているよりも低いのではないか、との疑問が出されています。

従来の採用選抜慣習で最も多いのは、知的能力テストで予備選抜して面接で決定というプロセスです。知的能力偏重ともいえるこのやり方を再考する時かもしれません。

SHLグループの最新ツール、Job Focused Assessmentは、知的能力テストをスキルや経験を評価する検査と組み合わせて適性を判断しています。

(文責:堀 博美)

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