SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループのネット配信「SHL Newsletter」や広報誌「SHL News」、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

前回から、SHLグループChief Scientist のEugene Burkeによる「職場の安全管理に関するSHL白書」をお届けしています。3回連載のうち今回が2回目です。

第73回 安全のDNAを分解する(2) 〜職場事故はなぜ起き続けるのか?

事例1 警備サービス会社:リスクの評価

最初の事例を紹介する前に、確率の概念について整理しましょう。これまで述べたように、リスクとは、結果の認知に関するもの――あるものがうまくいくかいかないかの確率をどう判断するかの問題です。例えば、あることが起こる可能性が半々だと思うとき、確率は五分五分、もしくは、1対1であると言います。これは、コインを投げて裏が出るか表が出るかの確率と同じということです。

仮に一連の出来事を観察していて、そのうち80%が望ましい結果である場合、確率は80:20、つまり、4:1です。財務投資の場面なら、その確率で見返りがあれば、ほとんどの人はその投資をよしとするでしょう。

安全の問題に戻り、人が事故を起こす確率について考えましょう。我々が主張したいことは、『安全に関する5つの行動(以降、「セイフティ・ファイブ」と呼びます。)に関連する気質データがあれば、この確率に関する知識を大きく改善できる』ということです。最初の事例がこの点をよく描いています。

ある世界的な大手警備サービス会社が、同じように安全監査や定期的な教育研修を実施しているにもかかわらず、あるグループばかりに事故が集中する理由を検討していました。

「セイフティ・ファイブ」に関する簡単な行動アンケート調査を社員のサンプルに実施し、車両事故や対人攻撃、半年間の勤怠記録との関連を分析しました。分析結果は、行動アンケート調査で高リスク者と分類された人が、サンプル全体と比べて、車両事故で5倍、対人攻撃では3倍の確率で関与していることを示していました。さらに、高リスク者は半年間の無断欠勤が2.5倍でした。つまり、セイフティ・ファイブに欠ける人のほうが、職場での事故や非生産的な結果の源である可能性がかなり高かったのです。

セイフティ・ファイブ総合点と、職場における事故などの関係

車両事故 なし(A) 1回以上(B) 確率(A:B)
高リスク者 80% 20% 4:1
全社員 95% 5% 19:1
対人攻撃 なし(A) 1回以上(B) 確率(A:B)
高リスク者 51% 49% 1:1
全社員 74% 26% 3:1
無断欠勤 なし(A) 1回以上(B) 確率(A:B)
高リスク者 80% 20% 4:1
全社員 90% 10% 10:1

(註:高リスク者=セイフティ・ファイブ総合点の低い人)

事故や対人攻撃が起こる一般の確率を考慮に入れると、結果の本質が浮かび上がります。サンプル全体で、車両事故の確率は19:1、職務中の対人攻撃の確率は3:1です。

事故の可能性が低い環境でも、また会社が安全管理や研修やコミュニケーションを積極的に行っているにもかかわらず、セイフティ・ファイブの低い人が事故や事件に巻き込まれる確率ははるかに高いものでした。

何故でしょうか。SHLの安全モデルの研究をさらに進めたところ、セイフティ・ファイブの高い人は、自分の仕事、安全が重要な課題に慎重に取り組むことがわかりました。一方、低い人は衝動的に行動する傾向があり、手順から逸脱して行動の結果まで考えません。

安全管理を改善するためにこれら研究データをどう利用できるか、については本論文の後半で説明します。その前に、次の石油会社の事例を見ましょう。この事例では、様々な現場における、行動的リスクの頻度と事故歴の関係に焦点を当てています。

事例2 石油会社:行動的リスクと事故歴

ふたつめの事例は、北海で石油採掘装置を操作する国際的石油会社です。数多くの安全施策を実施した後、この会社は、SHLの行動アンケート調査が事故歴の高い現場を識別できるかどうかを検証し、どの特定職場グループがよりリスクを犯す傾向があるかを明らかにしたいと考えました。

3つの現場で2年分の事故記録571件が収集され、重大さの程度によって「軽度/中度/重度」に分類されました。「重度」事故の数は比較的少なかったのですが、「中度」事故の多くは「重度」事故になったかもしれないようなニアミスであるとのことでした。よって、「重度」と「中度」をまとめ、事故は現場ごとに「重+中度」と「軽度」に分類されました。

さらに、資産(装置など)に影響する事故だったか、社員や請負業者に怪我があったかどうか、なども調べられましたが、分析の結果、事故データをこれら特定タイプに分けても全体でまとめても、現場のリスクプロファイルは同じであることがわかりました。それゆえ、3つの現場の事故歴と行動的リスクの間の関係を評価するために、全体プロファイルが使われました。

行動的リスクのデータはSHLの行動アンケート調査を用いたオンライン調査で収集されました。回収率は高く(最初の2週間で65%の調査が回収されました)、社員に好意的に受け入れられていたと考えられます。社員や請負業者195人のデータが、勤務地や役職、専門分野などのデータとともに集められました。

次のグラフに、現場ごとの、行動的リスクのレベル(行動的リスクが高いと分類された回答者の割合)と、2年間の事故歴(重+中度事故の割合)を示します。

SHL安全モデルによる行動的リスクと、過去2年間の事故歴の比較

現場Bで2年間に起こった事故の、「重度+中度」と「軽度」の割合はだいたい60%:40%、すなわち、1.5:1でした。それに比べ、現場Cでは基本的に逆で、30%:70%、だいたい1:2でした。

行動的リスクのデータは、事故歴データとはっきり関連しています。現場Bでは、調査対象者の40%が高リスク者でしたが、現場Cでは20%です。つまり、現場BとCを比べると、社員や業者が高リスク者とされる確率は2:1です。

我々はその後、具体的に、行動的リスクのレベルが社内でどう分布しているのか、明らかにされた人的リスクに対処するためにどの行動に焦点を当てるべきなのか、など分析を進めました。本論文の次のセクションでは、このような行動アンケート調査から得られたデータをどう利用すれば、会社の安全管理を強化したり人的リスクを緩和したりできるのか、について述べます。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

前回の記事で説明した、安全に関する5つの行動(セイフティ・ファイブ)を用いてのデータ分析事例2つをご紹介しました。文中に出てくる「行動アンケート調査」はDependability and Safety instrument(DSI)としてグループで商品化されています。

文責:堀 博美

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