堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回から3回にわたって、CEB SHL Talent Measurement Solutions が提供しているエンゲージメント・サーベイについての情報をご紹介します。

第146回 社員調査を再考する‐エンゲージメントを超えて(1/3)

もしあなたの会社が不況後のトレンドをほぼ映し出しているならば、社員のエンゲージメントはこれまで以上に高くなっている―2年前よりも13%up―でしょう。社員は会社によりコミットし、より懸命に働き、より忠実になっています。

しかし、このコミットメントや情熱、ロイヤリティが、会社に本当に関わる方向に生かされているでしょうか?

CEB調査によれば、答えは多くの場合NOです。そして、社員調査は、高いレベルのエンゲージメントが事業業績に影響を与える他の要素を測定しきれていません。

はじめに

エンゲージメントはこの10年間、社員マネジメントでよく取り上げられてきたテーマです。人事担当やコンサルタントは、エンゲージメントのレベルを定義し、測定し、改善すること、さらにエンゲージメントが事業業績に与える影響を測定して見える化することに多くのエネルギーと意識を集中してきました。

長年に渡るCEBのエンゲージメント研究−エンゲージメントを規定する属性やエンゲージメントに影響する要素についての研究―がGlobal 2000 companiesの数百社の社員調査プログラムの基礎となりました。この数年間、CEBは世界中で2000万人以上の社員のエンゲージメント・レベルを評価してきました。現在も進行しているこの研究は、社員のエンゲージメントが重要であることを示しています。社員のエンゲージメント・プログラムをうまく実行している会社は、そうでない会社よりも、優れた業績を上げています。(図1参照)

企業は社員のエンゲージメントに多くの努力と注意を払っており、それが生産性や質、効率の強力な指標となります。しかし、それは全体像ではありません。

エンゲージメントは必要条件だが、十分条件ではない

不況後のリバウンドで社員エンゲージメントはこれまでで最も高くなっています。2010年第3四半期には、エンゲージメント関連指標で回答者の77%が肯定的な評定をしました。2012年同時期、その数字は87%に跳ね上がっています。

社員はこれまで以上にエンゲージしています。しかし近年、いくつかの先進企業はエンゲージメント施策と事業業績の間に断絶があることに気づき始めました。非常に高いレベルの社員エンゲージメントを達成しているにもかかわらず、そのエンゲージメントを一層強力な事業業績に転換することに苦労しています。2011年、CEBが調査したビジネスリーダー4000人のうち、80%が「自社においてエンゲージメント施策は事業成果を推進していない」と回答しました。

しかし、リーダーたちは今でも概ね、よりエンゲージされた社員がより生産的であることに賛同しています。CEBは、エンゲージメントに主眼を置いた調査プログラムが、社員や事業業績に影響を与える別の他の重要な要素を見逃しているのではないか、と疑問を持ちました。

この断絶はなぜでしょう?そして、なぜ今なのでしょう?答えの大部分は、近年グローバル職場環境が根本的に変化してきたことにあります。CEB調査から次のようなトレンドが明らかになっています。これらは間違いなく多くの人の認めるところでしょう。

  • 意思決定がより複雑に。社員の50%が、「わずか3年前よりも意思決定により多くの人が関わっている」と述べています。
  • 仕事により多くの協力が必要。「日常業務を遂行するために少なくとも10人と協力する必要がある」が社員の60%、「20人以上と協力する必要がある」が社員の30%でした。
  • 仕事がよりグローバルかつバーチャルに。社員の57%が「他の勤務地にいる同僚と仕事をすることが多くなった」と述べています。
  • 仕事がよりマトリックス化。社員の67%が「異なるチームや部署の人と仕事をしている」と述べています。リポートライン(上下関係)が複数になっている状況が普通です。
  • 変化がつきものでより頻繁に。社員の63%が「3年前よりも組織目標がより頻繁に変わる」、56%が「この1年間で組織が大きな変化を経た」と答えています。

 

社員がいくらエンゲージしていても、上記の現実があるため、社員がそのエネルギーを使って職務を成功させることが難しくなっています。2012年CEB調査では、エンゲージメントの高い社員の60%が、「自分の仕事は会社の目標に沿っていない」と報告しています。さらに、63%が「組織目標が3年前よりも頻繁に変わる」と答えているように、それら目標は流動的です。

社員の仕事エンゲージメントは高まっていますが、集団としては次のような理由で焦点がぼやけています。

  • マトリクス構造、国や地域の指示、ローカル目標の間で、社員の注意や焦点が激しく競合する。
  • 地理的に多様で職種をまたぐような複雑で変化する環境下、個々の社員を会社の目標に結びつけることが難しい。
  • 社員は、会社リーダーが設定する変化や、時には矛盾するような目標に立ち向かわなければならない。
  • 仕事がより水平的、拡散的になるにつれ、社員は簡単に会社レベルの目標から切断されうる。伝統的なトップダウンのマネジメントやコミュニケーションは、会社全体の目標に関して社員を動かすためにあまり有効ではない。たとえば、チームがグローバル組織のいろいろなところからのメンバーで構成される場合、組織階層の上から下へとただ流すだけではコミュニケーションできない。

 

これら仕事の「変化」のために、社員エンゲージメント以上のものを測定する方法を作り出す必要が出てきました。エンゲージメントがビジネス価値をもたらすことを可能にするような、相互に関連した要素を見ることです。

エンゲージメントの度合いは世界的不況からのリバウンドで、これまでにないほど高まっています。しかし、組織はエンゲージメントをより強力な事業業績に転換することに苦心しています。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

エンゲージメント、コミットメント、意欲、満足度、など言葉は様々ですが、社員の意識調査を実施している企業は非常に多いです。調査結果を踏まえて各種人事施策を立案・実行していこうというわけですが、最終的な目的は、結果を会社全体の業績向上に結びつけていくことのはずです。去年より得点が高くなった=よかった、もしくは、低くなった=まずい、だけで終わっていませんか?

本文中の中ほどにあるタイトル「エンゲージメントは必要条件だが、充分条件ではない(Engagement is necessary but not sufficient)」が非常に腑に落ちます。

次回はCEBの提唱する調査モデルをご紹介します。どうぞお楽しみに。

文責:堀 博美

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