SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLグループHPのブログから、早期退職者の再就職に関する記事を一部抜粋してご紹介します。

第374回 グレート・リターン――早期退職者の再就職がもたらすメリット

イギリス政府は、早期退職者の再就職を促すキャンペーンを展開しています。『グレート・リターン』を奨励することで、個人と組織にどのようなメリットをもたらすかを学びましょう。

サラ・マクレラン
2023年 3月21日

労働力の形は大きく変化しています。チームは今まで以上にリモートで分散しており、人口動態の変化も起こっています。コロナ禍以降、50代以上の多くの人々が再び就職することはありませんでした。イギリスだけでも、50歳から64歳までの就業や求職活動をしていない人々の数は37万5千人増加しています。彼らが再び就職しない理由には、健康上の問題や再び働く自信がないというものがあります。また、自由な時間を楽しんで新たな趣味や旅行を楽しむために働かないという人々も多いです。さらに、生活費が高く、保育費も急上昇している中、有償の保育サービスを利用する余裕がない家庭では、この世代が祖父母として育児を担う場合もあります。

この人口動態の変化は広範囲に影響を与えます。労働力不足は、一部の市場では解消されつつありますが、依然として継続しており、企業は人員不足を感じています。これにより生産性や経済成長が抑制され、パートタイム勤務が一般的な業界、例えば小売業、ホスピタリティ、医療、旅行、製造業などは苦戦しています。この課題は多くの指導者や政府が認識しており、イギリスでは政府が早期退職者(や保育費を支払えない人々)の再就職を支援するための経済的な支援策を発表しました。

『グレート・リターン』を促進することで、国家レベルで経済的な利益を得ることができるだけでなく、より広範囲にメリットをもたらす可能性があります。

  1. 古い世代は経験と知恵をもたらします。
    研究によれば、長年勤めた従業員(そして複数の組織で働くことによって得られた経験、スキル、知識である「一般的な人的資本」、そして「企業固有の人的資本」- 1つの組織に特有の知識と経験)を活用することで、組織全体にプラスの影響を与えることができます。若い世代には、コロナ禍による影響などから欠けている知恵があります。例えば、ドレスコードや人間関係の構築、変化や曖昧さに対処する方法などです。このような知恵を古い世代が若い従業員に共有することで、組織文化を形成することができます。
  2. 性格は年齢とともに「成熟」します。
    年齢を重ねるにつれ、平均的に誠実性や協調性 (他人とうまくやっていくこと) などの性格特性や、感情を制御する能力が向上します。古い世代は不機嫌で自分たちのやり方に固執するというよくある固定観念とはかけ離れており、穏やかで、落ち着いていて、自信を持っており、良い仕事をすることに集中することができます。これらは全ての従業員にとって素晴らしい特性ですが、顧客サービスにおいて競争力をもたらします。また、これらの特徴から、古い世代は同僚との信頼関係をすばやく構築し、威圧的でないコーチングスタイルで知恵を共有できると言えます。
  3. 古い世代は、柔軟性を提供できる可能性が高いです。
    彼らには、扶養家族が少ないため、あらかじめスケジュールを決めることがあまり重要でない場合があります。このような曖昧な状況や絶え間ない変化の市場では、柔軟性が非常に重要です。需要がピークに達したときに、柔軟に対応できるチームがいることは、ビジネスが困難な期間を乗り越え、より強くなるための素晴らしい資産になります。
  4. 最後に、再就職が個人に提供する機会を忘れないでください。
    私たちは長寿を迎え、多くの人がパンデミックの中で意味や所属意識の喪失、新しいことを学ぶことや課題に取り組むことへの渇望を感じています。50代で退職した人々も同様に、自分自身に唯一の価値を見出す場を求めているかもしれません。しかし、雇用のギャップが大きくなるほど、復帰が難しくなる可能性があります。

もちろん、政府の経済的な支援によって問題が一晩で解決することはありません。むしろ解決からはほど遠いでしょう。古い世代の再就職を促すには、雇用主も自分たちの役割を果たす必要があります。コロナ禍後、実際の職場に戻ったときの気持ちを思い出してください。人々は不安で、再びどのように仕事が行われるのかわからなかったのです。物事のやり方、システムの操作方法、機器の使用方法を覚えているかを心配していました。スキルや行動が錆びついているように感じ、最初のやり取りはぎこちなく、ためらいがちでした。

こうした感覚を取り入れて、再就職者が職場復帰を肯定的に感じるために必要なサポート、柔軟性、およびリソースを提供してください。求人広告(年配の応募者にアピールできる形容詞を使っているか)から始まり、採用プロセスで客観的なアセスメントを使用して、主なポテンシャルと訓練可能なスキルを明らかにし、履歴情報だけで応募者を除外されないようにすること、そして職場に入る際のコミュニケーションやオンボーディングプロセスに至るまで、従業員ライフサイクル全体に渡ってサポートを行ってください。

再就職者に対し、彼らが不安を感じていることを理解していること、すぐに最高のパフォーマンスを発揮することを期待していないこと、そしてメンタリング、トレーニングへの参加方法、スキル開発、経験を共有する新しい同僚グループなどを通じてサポートすることを知らせてください。これにより、チーム、企業文化、ビジネスパフォーマンス、経済は改善するでしょう。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2023/the-great-return-why-encouraging-early-retirees-back-to-work-could-benefit-us-all/

欧米ではパンデミックによる「大退職」が話題になりました。退職した人々に仕事に戻ってもらうことで、人員不足だけでなく様々な観点でメリットがあると筆者は主張しています。国内でも同様の効果を期待できるでしょうか。

(文責:廣島晶子)

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