堀 博美のSHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

前回に続き、SHLグループが統合されたCEBの『グローバル・リーダーシップ』に関するエグゼキュティブ・リポートをご紹介します。前回、グローバル・リーダーについて一般によく言われる仮説が間違っていることが指摘され、パイプライン構築のための4つのステップが挙げられました。今回はそのステップの1〜3を詳しく説明しています。

第137回 CEBリポート:グローバル・リーダーシップ・パイプラインの強化(2/3)

1 グローバル職がキャリアアップの機会であることをはっきりと示す

驚くべきことに、多くの優れたリーダーがグローバル職につきたがりません。CEBの調査によれば、グローバル・リーダーとして成功した人のうちグローバル職を希望していたのはわずか35%でした。グローバル職が多くのリーダーに不人気な理由は次の2つでしょう。(1)グローバル任務と長期的キャリアチャンスの関連が不明確である、(2)転勤や出張など個人的負担が大きいこと。

これらの懸念に対処するため、人事幹部はまず、グローバル職がただ、チャンレンジングな国際的任務であるということだけでなく、はっきりとした昇進チャンスであることを示すべきです。具体的には;

  • コントロール範囲が増すこと、売上責任が大きくなること、マネジメントの範囲や複雑さが増えることなどの要素を強調します。優れたリーダーは、意味のあるチャレンジと能力開発のチャンスに惹かれるものです。
  • その役割が魅力的なキャリアパスにどう組み込まれるかについて、できるだけ具体的に示します。リーダーは、その役割が自分のキャリアをどう加速するかを大まかにつかむだけでなく、その任務の後にどんな職務につけるかを明確にしたいと考えています。
  • 任務の間、本社の重要関係者とどんなつながりや関係があるか、を示します。それによって、リーダーは、より広い組織につながったまま、その一部として動くことになることを確認できます。

 

2 グローバル職の負担を減らすために、転勤についての選択肢を検討する。

経営幹部は、「成功するために、リーダーは自分のマネジメントするマーケットに住まなければならない」という旧来の仮定に疑問を持つべきです。我々がリーダーの業績を検討したところ、転勤は必ずも成功の必要要件ではありません。担当マーケットに頻繁に出張するリーダーが成功する割合は、その地域に住むリーダーとちょうど同じくらいです。事実、転勤の強要は本人に大きな個人的負担となります。リーダーの85%が、配偶者や家族のためあまり動きたくないと答えています。優れたリーダーを惹きつけるためには、常に転勤を求める代わりに、遠隔地からのマネジメントや出張、職務内容の変更などの選択肢を検討すべきです。

3 必須の影響力スキルを構築するために、ストレッチ役割を用いる

影響力は、優れたグローバル・リーダーになる確率を27%アップさせます。グローバル・リーダーが直接の権限のない個人やチームを担当することはよくあり、成功するかどうかは他者を通して仕事をする能力にかかっていることが多いものです。国内リーダーと違い、グローバル環境で働くリーダーは、権限をサポートするような日常的な1対1のやり取りを欠くことが多く、影響スキルは成功に必要不可欠です。残念なことに、優れた影響力を持つグローバル・リーダーは4人に1人だけです。

 

影響力にはいくつかの形がありますが、我々の研究では、グローバル・リーダーがマスターすべき最も重要な要素は、交渉戦略、合理的論拠、インスピレーショナルなアピールです。影響スキルはまた、意思決定やリソース配分など他の重要な活動における有効性も高めます。

これらの影響力を構築する最も有効な方法は、新進リーダーに背伸びの必要な役割(ストレッチ職)を与えることだということを、CEBの研究は一貫して示しています。そのような役割についたリーダーは、自分にはスタッフを指揮する権限、経験、専門性がないことにすぐ気づきます。その結果、他者を通して仕事をせざるを得ません。指示するではなく影響を与えることによって目標を達成しなければなりません。

ストレッチ職を適切に工夫することが重要です。そのポジションが会社にとって重要で、チャンレンジに意義があり、失敗のリスクが現実であるものでなければなりません。グローバル・リーダーを育てるために、ストレッチ職はまた、その人たちの現在の役割とできるだけ異なり、場所や職種のローテーションを含むものでなければなりません。

これらストレッチ職は必ず組織にリスクをもたらします。それが心配なため、多くの組織は新進リーダーに提供するストレッチの程度に保守的過ぎます。最も当然の候補者を次の役割につけることでリスクを減らす代わりに、組織は新進リーダーをあまり当然でない役割につけ、失敗から守るためのサポート体制を用意することによってリスクを軽減すべきです。経営幹部は次のような方法によって、リスクを低減し、かつ、組織を守ることができます。

  • ローテーションの最初の90日間に重要スキルの集中トレーニングを行い、成功に必要な基本を身につけさせる。
  • 他部署のリーダーをメンターにつけ、客観的な見方をもたせ、機密を打ち明けられるような相談相手になってもらう。
  • 新しいリーダーのスキルや経験を補えるような有能なチームをそのリーダーの周りに構築する。
  • 新進リーダーと定期的に面談して進捗を振り返り、軌道修正したり、そのリーダーの能力開発プランを更新したりする。

 

劇的な役割変更についてリーダーを支援する能力をもった組織は、高いレベルの適応力と革新性を持っています。非常に異なる見方を持ったリーダーは新鮮なアイデアを提供します。適切にサポートされれば、ストレッチ職の利点はコストをはるかに上回ります。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

パイプライン強化のためのステップが具体的に述べられています。次回は、ステップの4つめ「ピア・ネットワーク」についてと締め括りのページをご紹介します。

なお、本リポート原本(Strengthening the Global Leadership Pipeline)は以下のURLからダウンロードできます。ご興味のある方はぜひご覧ください。
http://www.shl.com/shl-is-ceb/insight/leadership/

文責:堀 博美

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