SHLグローバルニュース

このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループHPのプレスリリースやブログなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はSHLブログ記事を取り上げました。SHLグループR&D部門トップからのメッセージです。

第300回 必要不可欠なものは何か? 難しい時に大きな疑問を問う

将来のパンデミック後の世界で、私たちがどんなキャリアや会社組織、社会を築くかは、私たちが何を「必要不可欠」だと思うか次第です。

現在のCOVID19パンデミックは、私たちの多くに、命や死、家族や一族、希望や恐怖のような重要な大きな問題について考えさせます。私たちはこの危機が永遠に続くはずはないとわかっていますが、未来がどのようなものになるのか、その片鱗だけでも見たいと渇望しています。新しい「ノーマル」とは、私たち家族や仕事、キャリア、将来に備えての能力、チーム、会社組織にとって何を意味するのでしょうか。また、顧客やメンバー、患者、学生、コミュニティに対する私たちの集団的なミッションにとって、何を意味するのでしょうか。

4月22日はアースディでした。この大きな変化と不確かさの中、人々は、大きな、根源的な、哲学的な疑問を問うています。私たちは、ビジネスとして、そして社会として、どうやっていけば自分や互いや地球をより大切にできるのでしょうか?生き残って繁栄するためには、実のところ、何をする必要があるのでしょうか?私たちの生活で必要不可欠なものは何なのでしょうか?

これら大問題の核心には、価値観やモラル、信仰、哲学があります。私たちの行動や決断、相互のやり取りに情報を与える、私たちが心の奥深くに持ってる信念や原則です。ゆく先の見えない新しい世界で私たちの役割やこれまでのやり方がもはや十分ではないという混沌や破壊の時、価値観が特に重要です。「絶対に必要なのは何か?」という基本的価値観に基づく疑問は現在、政府や国民が決めなければならない問題として公に論じられています。営業し続けるべき絶対必要なビジネスはどれか?絶対必要な働き手は誰か?家から出られない、または隔離場所にいる間の、不可欠な生活必需品は何か?

もう少し小さなことで、自宅で教育を受ける際の絶対必要な教科や活動は何か、のような問題もあります。私の家庭では私たちが共働きで、今、自宅で勉強する1年生から8年生の子供たちのサポートに苦心していますが、仕方なく、昔からの単純明快な原則である3R(reading, 'riting, 'rithmetic:「読み書きそろばん」)を使い、これにrecess(休憩)を加えて1学年前の内容をやらせています。(働いている親の皆さん、単純にいきましょう!)

通常の状態においても私は万事、考えすぎる方です。職業病かもしれません。ましてや今は通常の状態ではありません。心理学者として、私は多くの時間、毎日私たちの周囲で起こっている人間の行動を観察、分析することに費やしてきました。ですから、コロナウィルス・パンデミックやそれに対する人類の対応についての話に毎日、心を深く動かされると同時に、最近、「必要不可欠なものは何か」について人々が様々な意見を持っていることにますます興味をそそられています。

極端に言うと、「必要不可欠なものは何か」イコール「生き残るために必要なものは何か」です。ここでは「3」の生存ルールを適用できます。(注意:これは医学的なアドバイスではありません!)

人間はおよそ、食べ物なしで3週間、水なしで3日、身を守るシェルターなしで3時間、酸素なしで3分、生存できます。もちろんこれは、気候や脅威、持ち物、能力、運動、息を止められる時間などによります。しかしたとえこれらの推定値がおよその値であるとしても、このルールから、人間が生き残るために何が絶対必要で、それらがどういう優先順位であるべきかは極めて明確です。

おそらくもう一方の極端では、(世界のキャビアのサプライチェーンが壊れたことに不平を言う、大邸宅に閉じ込められたお金持ちたちの話を持ち出すまでもなく、)私の大学時代の自分の話を出せます。20才代の始めごろ、私は毎週末、同じ難しい決断に直面していました。「何が必要不可欠か」を判断するための深い価値観を求められる決断です。私は、(1)「遅くまで寝ている」か(2)「朝食兼昼食に出かける」かを選択しなければなりませんでした。当時、これは二律背反の難しい重要な決断に思えたものです。もちろん、今は私も年を重ね、遅くまで寝ていることも朝食兼昼食に出かけることも真に必要不可欠ではない、とわかっています。(必要なのは「コーヒー」だけです。)

仕事に関して言えば、米国の労働法や産業組織心理学の実務の中で、「何が必要不可欠か」に適用されるいくつかの概念があります。雇用主が採用で評価すべき必要不可欠なKSAO(Knowledge知識、Skillsスキル、Abilities能力、Other worker characteristicsその他の特徴)は何かを判断するための、職務を調べる科学的な手順(職務分析)があります。その発想は、雇用主は、職務の中で容易に学べるスキルや知識を基に採用すべきではないというものです。そして、高いパフォーマンスのために、職務に就いて初日に求められる要件とそれに対応する労働者の特性を定義することに大きな努力が払われます。

米国には、bona fide occupational qualification(BFOQ:真正な職業上の資格要件)と呼ばれる概念もあります。もしそのBFOQがその職務で絶対必要な前提要件であると証明できるならば、それらの要件が雇用決定で通常は違法な特性(性別、年齢)であっても、雇用主はそれらを基に採用することができます。ありがたいことに、そして当然なことですが、現代では、特定の性別や年齢であることが絶対必要な職務要件であると主張する雇用主はほとんどありません。

私たちひとりひとりが自分の生活で必要だと信じるものは極めて私的なものです。私たちが必要不可欠だとみなすものは、私たちの価値観や欲求、相対的に持っているもの/持っていないもの、文化、そして自分がこれまで慣れたものに基づいています。おそらく、皆が皆、3か月分のトイレットペーパーの在庫を必要とするわけではないでしょう(コーヒーはそうかもしれませんが)。

人生の大きな問題や自分の人生で何が必要不可欠かを考える際、あなたができるところで他者を助ける機会を考え、また、あなたが助けを必要な時には助けを求めてください。全員参加です!

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文はこちらです。
https://www.shl.com/en/blog/what-is-essential-asking-big-questions-during-difficult-times/

著者はKen Lahti、SHLのChief Science and Innovation Officerです。

コロナ感染対策として「不要不急」という言葉をよく聞きます。何が必要で、何が急ぐべきことなのか、私はひとりひとり違うはずだと思います。自分の価値観を押し付けることは慎みたいです(政府はそうは言っていられないでしょうが)。

(文責:堀 博美)

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