堀 博美のSHLグローバルニュース

新しい年を迎え、気持ちも新たに仕事に取り組まれていることと思います。
本年もご愛読のほど、どうぞよろしくお願いします。

このコーナーは、イギリスのSHLグループが季刊で配信している「SHL Global Newsletter」の中から記事をピックアップ、日本語に翻訳してご紹介するものです。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのか、をお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回は360度フィードバック活用の事例です。医薬品販売で世界5位、欧州2位を誇る多国籍企業アライアンス・ユニケムの取り組みをご紹介します。

第16回 ケーススタディ:アライアンス・ユニケム

イギリス製薬会社ユニケムとフランスのアライアンスサンテが1999年に合併し、アライアンス・ユニケムが生まれた。新会社は、オランダ、スイス、トルコの製薬会社や医薬品販売会社の買収などで急速に拡大、従業員数はヨーロッパ全土で1万7000人を超える。

SHLはアライアンス・ユニケムの依頼を受けて、360度フィードバックシステムをカスタマイズした。導入の目的は、国境や出身企業を超えて統一された風土を醸成すること。まず、目指すべき新しい風土が「行動」ベースの言葉で定義された。各幹部マネジャーに、自分がどのように新しい風土での行動規範を体現すべきかを認識してもらい、働き方の変化にどのように着手すべきかをアドバイスするために、360度フィードバックシステムが活用された。

システムは、言葉の障害を取り除くため、英語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語の5つの言語で同時にコンピューターで運用される。SHLコンサルタントが協力して測定項目が確立された。システムの名称は「Personal Development Planner」。本人と上司、同僚、部下が、社内イントラネットやインターネットを通して、自分の好きな時間に好きな言語で互いを評価し合うことができる。

まず、副社長はじめ主要な取締役メンバーなど約70人が360度評価を受け、フィードバックと2回のコーチングセッションを受けた。対象者にはこのシステムとプロセスは洞察的で使いやすいと好評だった。会社としても、これら幹部マネジャーの強みと開発ニーズが明らかになった結果、この層での重要な能力開発テーマが浮き彫りにされた。対象者の中にはこのプロセスの結果、マネジメントのやり方を大きく変えることのできた人もいる。

その後、コンピテンシー枠組みが拡張され、最初の対象者70名の下のレベルのマネジャー(ヨーロッパ全体で約200名)で実施。社内でファシリテーターやコーチを育成するトレーニングも計画・実行されている。さらに、オランダとチェコを加え、7つの言語で実施できるようシステム改訂が進行中である。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

合併に伴う組織風土統一の目的で360度評価が導入された事例です。トップから実施する、というのがいかにも欧米企業らしいなあ、と感じたのは私だけでしょうか。幹部の熱意、必ずやり遂げるぞ、という決意が全社に伝わります。風土改革のためには当然のことなのですが、実際の場面ではなかなか難しいようです。この壁を乗り越えることが風土改革が成功するかどうかの最初の分水嶺でしょう。

評価を実施した後のフィードバックセッションや、それに続くコーチングセッションは必須です。得点に一喜一憂して終わり、ではなく、結果をどういかすかに対象者の意識を持っていかなければなりません。セッションは社内のそれなりの人が行う場合と、社外の専門家が行う場合があります。それぞれメリット・デメリットがありますので、状況によっての使い分けが必要です。

日本エス・エイチ・エルでも、ユーザー企業の360度調査の結果フィードバックを担当することがよくあります。つい先日までもほぼ2ヶ月かけて、ある企業の360度フィードバックを担当しました。数十名の管理職を対象に、一人当たり2時間かけて個別に行いました。その企業では能力開発の目的でほぼ毎年調査を実施していますが、今回はさらに対象者の上司へのフィードバックにも力点が置かれ、対象者が作成した能力開発計画実行への支援が強調されました。

経済環境の厳しさがひしひしと感じられる昨今だからこそ、現社員に対してコストパフォーマンスの高い能力開発をどう行っていくかの賢明な経営判断が望まれます。

文責:堀 博美

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