SHLグローバルニュース

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。

今回はインドのHRメディアプラットフォームPeople Mattersからの記事をご紹介します。

第357回 魅力で攻める:オフィスに戻るよう、組織は従業員をどう説得しているか

「オフィスに戻れ」と言うのは簡単ですが、実行は難しいです。当然のことながら、企業は社員をオフィスに誘い戻し、その移行を「かつてオフィスが楽しかった頃を思い出す」と思わせるために、あらゆる手を尽くしています。

コロナ禍は私たちの生活に混乱をもたらしましたが、同時に在宅勤務を実現してくれました。パリッとした白いワイシャツの下はパジャマのままだったり、月曜日朝イチの電話MTGのまさに数秒前に起きたりする世界です。仕事が順調に進み始めたちょうどその時、会社は私たちにオフィスに戻ってくるよう求めました。

世界がコロナウィルスとの共存を学ぶ中、世界中の組織が物理的なオフィスワークに戻る準備を進めています。オフィスに戻るよう社員に呼びかけているいくつかの大企業に最近加わったのはTesla社で、CEOのElon Musk氏は、社員に「職場に戻るか、辞めるか」とまで言い放ちました!

しかし、「オフィス復帰」は「言うは易く行うは難し」です。従業員に "職場で会えるのを楽しみにしています "というメールを送るだけの簡単なものではありません。
いくつかの企業の社員がオフィス復帰の呼びかけに対して「大抵抗」を見せ、また、復帰を呼びかけられて「大量退職時代」の一員となった人も少なくありません。

当然のことながら、企業は社員をオフィスに誘い出し、その移行を「悪い夢から覚めた」と思わせるのではなく、「かつてオフィスが楽しかった頃を思い出す」と思わせるために、あらゆる策を講じています。

Intel India社では、社員が快適に過ごせるように、また、オフィスに戻ってくるまでの過程をスムーズにするために、さまざまな取り組みを行っています。

「初歩的なところでは、会議中に管理職がオフィスにいてカメラをオンにすることを奨励し、社員にオフィス環境を感じてもらいます。また、ワークステーションは共有か個人用かを選択できるようにしています。オフィスへの復帰にワクワクしてもらえるよう、Intelの幹部が、社員が実際に会って学ぶ機会を得られるようなオープンフォーラムに参加します。」(Vijay Colaco氏, Intel India人事部長)

また、オフィスから経営陣や社員が参加するバーチャル討論会も開催しています。「これは、社員がオフィスにいるときの感覚を共有するためのプラットフォームとなります。また、キャリアフェアやトレーニングワークショップなど、これまでバーチャルだったイベントをハイブリッド化し、社員が直接参加できるようにすることにも力を入れています。」

Colaco氏は、 シャトルバス送迎サービス、カフェテリアサービス、ジム利用など、構内の福利厚生や特典を拡充することで、社員にとってより魅力的な復帰のプロセスを作っていると言います。 「チーム内のシナジーを高めるために、チームミーティングをオフィスで開始し、近くのレストランに移動します。リラックスした雰囲気の中で、同僚とつながり、活力を取り戻すことが目的です。この取り組みは『チェックイン・ステップイン・ステップアウト』と呼ばれています。」

グローバルな専門サービス企業ZS India社のApoorva Aggarwal氏は、「社員にとって無理のないペースで会社は動いており、事前のコミュニケーションで必要なサポートを確認して、全プロセスを非常に機敏で融通の利くものにしています」と述べています。

「オフィスへの復帰をスムーズかつポジティブなものにするため、食事、交通、引っ越し、医療など、社員のためのリソースを引き続き強化しています。実際、これらの多くはハイブリッド・モデルに合うよう強化されています。例えば、フレキシブルな働き方をする人のために食費をサポートする手当を支給しています。 また、オフィスのある地域に引っ越しする人には転居先や住居を提供し、賃貸住宅の保証金支払いも支援しています。」

Optum社は4月4日に任意でのオフィス復帰を開始しました。「楽しいイベントやフードフェスティバル、くじ引き、無料の食事、オンデマンドフィットネスセッションなどで、インドの各拠点のチームメンバーとともにオフィス復帰を祝いました。」(Nishid Sachdeva氏, Vice President of Operations and Country Lead, Optum Global Solutions (India))

SHL社のインド人事部長Nitin Motwani氏は、社員を呼び戻す前に、彼らが突然の生活の変化に驚かないように会社は配慮している、と言います。

「定期的な消毒、コロナ規約への準拠、定期的な健康診断など、職場の安全を確保することは、すべてのスタッフの不安を取り除き、信頼を得るための重要な方法です。また、遠隔地勤務者の通勤や宿泊先、職場での食事の無料提供や補助などにも配慮しています。」

1000社以上の企業にカスタムギフトとコーポレートグッズを提供しているOffiNeeds社の創設者兼CEOであるSrikanth Acharya氏は、「多くの企業が、バッグ、ブルートゥース用ヘッドフォン、ボトル、Tシャツなどを含む、社員の職場復帰を歓迎するための職場復帰キットの作成を同社に依頼してきました」と述べています。

「私たちがこれまでに手がけたほとんどの企業では、職場復帰キットの中に5〜6種類の製品を入れ、社員のデスクに置いて歓迎するようにしています。これらのキットの予算は1000ルピーから4000ルピーです。」

「以前は、職場復帰の贈り物をする会社の話を聞いたことがありませんでした。オフィスからしか仕事ができないと思われていたのです。しかし、この2年間でそれがすべて変わりました。だからこそ、会社は復帰してもらうためにグッズを贈るなど、いろいろな戦略を考えなければならないのです。」

「2020年までは、オフィスに行くことが唯一の働き方でした。しかし、この2年間で、誰もがパジャマを着て家で仕事をする習慣がついてしまいました。その習慣を変えるには、外部からの後押しが必要です。こうしたグッズの追加や、ジムやリクレーションゾーンなどの新しい施設を追加するオフィスリノベーションによって、社員はオフィスに戻り、また戻ってきたいと思うようになるでしょう。」

あるBig4(世界4大会計事務所)の女性リーダーが匿名を条件に話してくれたところによると、彼女の会社は「Return to Office workforce」と呼ばれる新しいチームを雇用し、そのKPIはFY23Q1内に80%の人員をオフィスに戻すことだそうです。

「彼らは、毎週、復帰した人の数を報告しています。楽しいイベント、リーダーとの会話、トレーニング、チームミーティング、送別会など、何らかの理由で少なくとも一度はオフィスを訪れた人を追跡しています。オフィスに来たがらない人たちと接し、1対1でつながることはリーダーの責任でもあります。」

彼女自身は、オフィスでの個室、家族と離れること、ソーシャルネットワーキング、チームビルディング、そして能力キープが復帰の動機になったと語っています。

Maersk社人事部長のRadha Shriharsha氏は、オフィス復帰への移行が自然で、エキサイティングで、思い出深い体験になるようにした、と述べています。「私たちはグローバル企業であり、社員はインドにいながらにして複数の地域で働く同僚と仕事をしています。テクノロジーを適切に活用し、オフィスの座席を見えるようにし、交通機関を利用し、必要に応じてチームが一緒にオフィスにいられるようにうまく調整しながら、持続的にエンゲージメントを築くためのいくつかの革新的な方法を用いています」と彼女は述べ、社員に柔軟性が与えられ、権限が委譲されていて、安全で信頼されていると感じさせることが最も重要である、と付け加えています。

「私たちは多くの人を採用しているので、新しい同僚やリーダーをオフィスに招いて私たちのようなグローバルリーダーやブランドで働くことを実感してもらう機会に事欠きません。そうすることで、私たちはオフィスとリモートで同時に同僚と集う日々の機会を最大限に活用しており、それこそがハイブリッド・モデルの真の価値です。例えば、重要なマイルストーンの祝賀会、チームの社外イベントの計画、オフィスでの表彰日、チームランチや誕生日などです。」

データサイエンスとAIエンジニアリングの会社であるTredence社は、在宅勤務期間によって、オフィススペース設計が重要であり、その再設計が職場復帰戦略の中核であると気づくことができました。より広くより良いオフィススペースに変更しただけでなく、専門のアーティストやインテリアコーディネーターに依頼して、自宅のように感じられ、コラボレーション、健康、生産性、ポジティブな成果を促進するようなデザインにしました。

同社は5月にオフィス復帰計画を開始し、社員には厳格な時間や曜日を設定するのではなく、1週間のうち決まった日数だけ、段階的に帰社してもらうことにしています。

「私たちは両立可能であると信じています。そして、ハイブリッド・モデルによってこれを実現します。月曜日は泣き言を言うためではなく、自分の一週間を管理するためにあります。だから、月曜日は在宅勤務日です。また、私たちは勤務時間というものを信じていません。社員に任せています。やる気と自立心を育むためです」と、Whoppl社の創設者兼CEOであるRamya Ramachandranは言います。

Whoppl Friyayy’sは、ビジョンボード(自分が叶えたい夢や理想を写真やイラストを使って視覚化し1つにコラージュしたボード)からズンバやヨガまで、楽しくてインタラクティブなチームビルディングのための毎週恒例のイベントです。

Zivame社のチーフ人事オフィサーであるRishu Garg氏は、オフィス復帰計画について、現場にいる必要のある職務(小売、倉庫、サプライチェーン、オペレーション)とリモートで働ける職務(テクノロジー、製品、カテゴリー、デザイン、コーポレート部門)に慎重に分類している、と述べています。

「職務ごとに、人の安全性とビジネス要件のバランスを取りながら、詳細なオフィス復帰戦略を検討しました。現場での職務では、シフト時間の柔軟性、勤務地のローテーション、通勤のサポートがうまく機能し、コーポレート職では、ハイブリッドプランとチームの社外イベントがチームをオフィスに戻すのに役立ちました。」

Abbvie India社人事部長のNatasha Tiwaryは、職場復帰は、私たちのほとんどにとって、個人と仕事上の様々なコミットメントを管理することを意味する、と述べています。

「この移行を支援するために、Abbvie社は、オフィス勤務の社員に対して、予測可能な柔軟性を備えた『Where we work』と呼ばれる勤務モデルを採用することを決定しました。このモデルでは、オフィス勤務の社員は通常、週に3日程度はオフィスに滞在し、チームメンバーと顔を合わせ、円滑な職場文化を築き上げることが期待されます。このモデルによって、社員へのコミットメントと信頼を強化しながら、業績に焦点を合わせ続けることができるのです。」

オフィス復帰の準備ができているかどうかに関わらず、人事リーダーたちは、ハイブリッドな働き方が今後も続くことを否定できないと言います。そして、強力なオフィス復帰計画を実施するには、人々の安全性とビジネスの継続性を確保するために、必要に応じて明確で柔軟なハイブリッドな働き方を実施する必要があると言います。

「ハイブリッドな働き方モデルが主役になるにつれ、雇用者と従業員は、在宅勤務でできないこと、例えば、人と関わり、交流、会話など、対面での機会や柔軟性を手に入れることができるようになります。オフィスがオープンして何カ月も経ちますが、当社のリーダーやマネジャーは「職場復帰」を促進するために重要な役割を果たしています。従業員がオフィスに戻り始めたのは、物足りなさを感じているからではなく、単調な在宅勤務を解消し、より豊かな仕事経験を得るためです」と、GlobalLogic社のインド人事担当副社長Rajesh Rai氏は語っています。

(© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved)

訳者コメント

原文はこちら。
https://www.peoplematters.in/article/strategic-hr/charm-offensive-how-organisations-are-persuading-employees-to-return-to-office-34213
(長い記事でしたので、一部和訳を省略しました。)

日本でも春ごろから感染が収まってきて、多くの企業で「職場復帰」が検討され始めたのではないでしょうか。ところが、7月の現時点では第7波が猛威をふるっており、もう少し様子見、ということになりそうです。

ともかく、在宅とオフィスのハイブリッドな働き方も3年たちました。それに慣れた社員たちに、この記事にあるような「オフィスで働くことが楽しい」と思わせる施策の参考になれば幸いです。

(文責:堀 博美)

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