人事部長からの質問

2006/04/28 738

本来の業務の副次的な産物が書籍、DVDのような形で大ヒットしたような時、 どんなインセンティブをそのチームに与えるべきでしょうか?

むずかしいご質問ですね。(裁判官的な発想で悪いですが)二次製品の大ヒットと一次製品の制作チームの営みの因果関係を客観的に立証できないからです。例えば、テレビ番組とその副次的産物の場合、過去に同格の番組を作っているのに、その時には著作権販売のインフラがなかった。また、今回の大ヒットは海外エージェンシーの販促ノウハウによってなされたとしましょう。仮に2億円の売上の*%をインセンティブでという報償案を経営会議にだしても、反対多数で葬られる可能性が高いです。それよりも、大相撲の表彰額のようなものを社員がよく見えるところに高く掲げて、大ヒットにつながる番組を制作した人たちの栄誉を長く称えられたらいかがでしょうか。

文責:清水 佑三

2006/04/27 737

「分散・自立・協調」を説くヒエラルキー否定の組織論があります。清水さんのご意見は?

R&D部隊においては、ご指摘の考え方はあるとみています。なぜなら、仕事が限りなく「偶然性に依拠する」からです。田中耕一さんのノーベル賞受賞につながった「生体高分子の質量分析法のための脱離イオン化法の発見」の契機は、NHKの『人間ドキュメント』によれば、ほとんど試行錯誤の連続の中で偶然の産物としてなされたようです。こうした偶然を長いこと待ち続けた田中さんも偉いが、それを許した島津製作所も偉いです。成果、成果で走るヒエラルキー(組織)のもとではたぶん生まれなかったでしょう。R&D部隊をのぞけば(私見では)モルトケの組織論の方が現実的かつ有効であるとみます。(→人事改革、各社の試み、「日本テレコム」欄参照)

文責:清水 佑三

2006/04/26 736

会社の一体感は、何により醸成されるとお考えですか?

社内での不当な差別を限りなくゼロにしないとスタートラインに立てないと思います。不当な差別とは自分への取り扱いというよりも「誰がみてもこの人がこの会社を支えているという人に対して冷たくて、何もしないで威張って交際費ばかり使っている人に温かい。」 ような会社の仕組みをいいます。無敵のソヴィエート・チームをレイクプラシッド五輪で破ったアイスホッケー米ナショナルチームのハーブ・ブルックス監督(カート・ラッセル)が、映画『ミラクル』の中で「どうしてこんな凄い一体感が生まれたかって?それはね、プロの選手みたいに報酬差がない学生だけのチームだったからさ。」 の一言がとても印象的です。そういうことだと思います。

文責:清水 佑三

2006/04/25 735

ユニオンショップである組合と会社の関係がこじれるだけこじれた場合、会社ができることは何でしょう?

会社と組合はユニオンショップである以上、夫婦のようには離縁できないと思います。こじれがほぐれるときまで「果報は寝て待て」の心境で待機するのが正しい対応ではないでしょうか。日本航空さんを引き合いに出して悪いですが、関係がこじれた後の対応が(過去の日本航空の場合)悪すぎたと思います。ちょうど、今の中国政府が日本政府にとっている対応とよく似ています。「日本人の心の原点を逆撫でにする」ような要求を続ければ続けるほど日本国民の対中国観は悪化し感情的になってゆきます。そういうことをしないことが最善手だと思うのです。

文責:清水 佑三

2006/04/24 734

「人事改革、各社の試み」は評価制度に偏っていないですか?

「採用チームに自分がいるせいだと思うが、コラムのテーマが偏っているような印象がある。もっと採用のことをとりあげてほしい。清水さんは採用問題に興味を失ってしまったのか。」 という趣旨の文章が添えられておりました。そうか、と思って過去の事例一覧をみましたが、おっしゃるとおり最近のテーマは管理職の評価問題に集中していますね。理由は、自分の興味、関心がご指摘のように「採用」よりも「会社執行部の編成」にあるからだと思います。極論すると「採用」を間違えても会社は壊れたり、腐ったりしないが、「経営・管理」にあたる人間の選別を間違えたら、それでオシマイと思っているので、ついついそういう問題意識で新聞記事の切り抜き集をみてしまうのですね。しまった、ごめんと反省しています。採用において「知恵と勇気」に溢れた取り組みをしている会社を探し意欲的に紹介いたします。ご指摘を感謝します。

文責:清水 佑三