人事部長からの質問

2006/05/10 743

人生を常に前向きで生きる人について。

会社人生の折り返し点を過ぎる頃からポーズの「挑戦」しかしなくなる人が増えている。過去に目いっぱいやった人の燃え尽き症候群でしょうか。一方、少数ですが、(新しいことに)本気で挑戦している人もいる。この違いに興味があります、と添えられていました。おっしゃるとおりですね。私もその違いについて考え続けています。中間発表的にいえば、柴犬がもっている性質に秘密があると思っています。柴犬は「これ」と思うと、一目散に「これ」だけを追い続けるのです。興味、関心が主体的なのですね。アメリカの麻薬捜査で伝説的な活躍をしたある犬は、捨てられていた柴犬です。ほかの犬だとあきらめてしまうのにあきらめないで「挑戦」しつづけるDNAを柴犬はもっている。柴犬をてもとにおいて観察するとよいヒントが掴めると思います。

文責:清水 佑三

2006/05/09 742

あなたのインテリジェンス論がききたい。

ある期間、ひょんなきっかけでソヴィエートの情報機関の人たちと頻繁に接触する機会がありました。その期間、たくさんのことを学ぶことができたと思っていますが、なかでも教えられたのは、なぜ、なぜ、なぜと掘り下げて尋ねてくるかれら情報将校たちの姿勢でした。ひとつのことを例にあげると「天皇制は当分続くと思うか」という(戦後すぐの)街頭録音のような質問を受けたときのやりとりでその姿勢を強く感じました。私のイエスノーの回答よりも、どうして私がそのように考えるかを、なぜ、なぜ、なぜ、ときいてくるのです。私がいま、土日をつぶして毎週「人事改革、各社の試み」というコラムを書き続けているのも、解説を書く作業を通じて新聞記者たちの職業上の知恵である「なぜ、なぜ、なぜを問い続ける姿勢」が学び取れるからです。以上がささやかな私のインテリジェンス論です。

文責:清水 佑三

2006/05/08 741

人事部門が扱うデータは統合システムになじまない。なぜでしょう。

人事部門という言葉をそのまま「政治」におきかえるとよく理解できます。丸山眞男は『現代政治の思想と行動』(未来社、1964刊)の第三部「政治的なるものとその限界」の中で「政治の本質的な契機は人間の人間に対する統制を組織化することであり、統制といい組織化といい、いずれも人間を現実に動かすことである、現実に動かすという至上目的を達成するために政治はいきおい人間性の全部面にタッチすることになるのである。」 と書いています(第68刷360P)。人間性の全部、とはスキャンダルとして扱われかねない行動も含むという意味です。統合システムにはなじみませんよね。人事部門は企業内政治のオペレーション部隊ゆえに、扱うデータが丸秘のものが多く、情報の社内流通網とは相容れないのです。

文責:清水 佑三

2006/05/02 740

従業員の意識調査の実施を検討している。何かアドバイスを。

当社では「目安箱」という名前のオンライン・ツールをもっています。わずか30万円で、自動集計、多様な統計表の出力までこの価格でやります。対象が何万人であっても同じ値段というのがミソです。このツールを上手に使っておられるユーザーの使い方をみると、経営のトップが(統計的な分析よりも)匿名で書かれる自由記述文を熟読して、そこから沈思黙考して、自らの「姿勢を正す」ことにお使いになっている、観があります。まさに吉宗の時代の「目安箱」が現代によみがえったな、です。

文責:清水 佑三

2006/05/01 739

売れる店頭スタッフに共通する特徴をあげてくれますか?

1)鼻が利く、2)殺し文句を知っている、3)強靭な売る意志をもつ、でしょうか。1)は動物が獲物をみつけるのと同じです。匂い、雰囲気を感じ取るセンサーをもつかどうかです。本能的なものだと思います。2)は将棋でいえば、相手の「王」を詰ますときのパターンを全部知っていて「この局面ならばこの手順」を知悉し使い分けられる、です。野球の投手の例だと状況別に「決め球をもつ」に近いでしょう。3)は店頭スタッフに限らず、営業・販売の世界の大原則です。求めよ、さらば与えられん、という言葉に通じます。意志があれば行動がつづき、行動がやがて結果を生むという原則でしょうか。お書きになっておられるように、セールスマニュアルにある膨大なチェックリストはほとんど無意味ですね。

文責:清水 佑三