人事部長からの質問

2006/11/13 872

清水国語教室おもしろいです。「信頼」と「信用」の違いは?

「読売ジャイアンツで11年間正捕手に座った村田真一は、後任の阿部慎之介にピッチャーは信頼しても信用するなと教えたといいます。私にはこの意味が今ひとつ分かりません。清水さんはどう解釈されますでしょうか。」 というご質問です。面白くまた含蓄に富んだご質問だと感服いたしました。私の解釈ですが、村田真一がいいたかったことは、今日は調子がいいからストレートでゆきたいとピッチャーがいっても、真に受けてはいけない、相手打者にタイミングを合わされている場合はストレートを投げさせない、という意味でしょう。投手を信頼するの方ですが、伸(の)るか反(そ)るかの場面での心中宣言です。どうしてもここはオレを信じてストレートでやらせてくれ絶対しとめる、とそのピッチャーがいいきった場合は、その一言に賭けろ、という意味です。打たれてもそのピッチャーの信頼を勝ち取ることができますよね。信用は計算できる世界の言葉、信頼はもっと深く運命的な言葉だと思います。

文責:清水 佑三

2006/11/10 871

結婚退職についてのご意見を。

「結婚するため退職というより、結婚を理由に退職、ではないでしょうか。一つひとつのケースをみると、メンタルで問題を抱えていたり、退職後すぐに他社に就職していたりするケースが多く、必ずしも本人、会社にとって”寿”ではないように思います。結婚退職について、どう思われますか?」というご質問です。そうですね、「結婚」イコール”寿”ではないですよね。「入社」イコール”寿”ではないのと同じです。ご質問への回答ですが、私は(自己都合)退職=絶交論をとっています。自分が選んだ友人と二度と会わないという決断に似ていますね。背後に「耐えられない」という感情があったとみます。絶交を言われたほうの気持ちには複雑なものがあります。その複雑な気持ちへの配慮の一つが「結婚」であり、「配偶者の転勤」なのではないでしょうか。配慮に感謝することはあってもそれ以外の感想は不要です。もっといえば、人の出処進退は当人にもわからない「天の配剤」であって人智の及ぶべきところにあらざるなり、と思っています。

文責:清水 佑三

2006/11/09 870

自分のチャームポイントを意識したい。どうすればいい?

「清水さんは、幼少時代に肉親から“くさい”といわれたことが強いトラウマになったと書いておられました。私はそういうトラウマよりも自分のチャームポイントを意識して生きてゆきたいです。どうやったら自分のチャームポイントをもてますか。意識できますか?」というご質問です。よいご質問だと思います。人事スタッフの仕事の一つに「全社員が自分のチャームポイントを意識して、それを仕事にうまく生かせるような道筋をつけられるようにする」があると思うからです。そのみつけかたで一番有効なのはデベロプメント・センターの実施後の上手なフィードバックです。デベロプメント・センターについては当社グループ、イー・コーチングのホームページに記載があると思います。このフィードバックをうまくやると多くの社員が自分が気づかなかったチャームポイントを発見できます。

文責:清水 佑三

2006/11/08 869

採用時の面接でデジャビュ(既視感)を感じたことがありますか?

「デジャビュ」って「アジャパ」みたいですね。言葉のリズムが似ている。アジャパといっても読者のすべてが知らないかも。喜劇役者の伴淳三郎が映画『吃七捕物帖』(1951年公開)で使用してあっという間に流行語になったギャグです。ヘンなことをいいました。ご指摘のことですが、1回だけありました。私の一つ上で生後まもなく死んだ兄がいるのですが、ある学生が目の前に座ったときに私の背筋に冷たいものが走りました。彼がここにいると直覚したのです。今から30年も前の異様な経験です。疲れていたわけでも何でもない普通の状態での話です。この話は今まで誰にもしたことがありません。ついご質問を受けて話してしまいました。既視感とは違いますね。

文責:清水 佑三

2006/11/07 868

秋の夕暮れを切なく感じるのはなぜだと思いますか?

閑話休題ですね。ありがたいです。平成5(1993)年に出した『心の中の忘れもの』でこういうふうに書きました。回答に替えさせていただきます。…秋が私たちに意識させるのは、ふだんはまったく無意識の底に沈んでいる、生まれる前の時間の感覚と死んだ後の時間の感覚なのではないか。秋の、葉が色づいて落ちてゆく姿を眺めれば眺めるほど、その姿が人の死んでゆく姿に重なって見えます。秋に感じる情感は、どうも死の予感であり、死の予感を通してみた生命のなつかしさだと思います。

文責:清水 佑三