人事部長からの質問

2006/12/05 887

匿名調査の自由記述欄に凄いことが書いてある。

「御社の目安箱を使わせて頂いております。自由記述欄に読むに堪えない会社批判、トップ批判がかなりの割合で登場します。建設的な提案を、と断っているにもかかわらず、です。この手の自由記述に意味がありますか。」 というご質問です。ご質問で思い出すのはイラクのサダムさんのことです。信任投票をすると信任率99%という結果が毎回決まってでます。それはそうでしょう。×をつけた人が草の根を分けて探しだされ、ひどい目にあうことがわかっているから、だれも×をつけない。逆算思考をすれば、読むに堪えない会社批判、トップ批判を多数の社員が書いてくるというのは、その会社の「風通し度」がよいということです。御社は「風通し」がよいのです。享保のころ、吉宗が発案した「目安箱」は、幕閣批判を意識して取りにいった制度です。批判の臭気こそが大事であります。

文責:清水 佑三

2006/12/04 886

“粘り強さ”と“自律性”を鍛えることは可能だろうか?

「当社社員にもっとも欠けているもの、というテーマでオンラインアンケートを行ったところ、“粘り強さ”と“自律性”の二つが浮かび上がってきました。こうしたものは社員教育の科目に設定できる類のものでしょうか。」 というご質問です。回答者の方の年齢分布が気になります。社員構成が40歳代以上に偏るとこうした指摘が多く寄せられるように思います。自分たちはそれをもっているが、今どきの若いもんはそれが欠けているという認識ですね。視点を変えてみましょう。人材流動化の促進によって失われるものは何か、という問題意識です。“粘り強さ”と“自律性”ではないでしょうか。自ら思い立ち抵抗勢力と戦って勝ち取った目標ゆえに「石の上にも三十年」となるのです。いつでもどこでも流動していいよ、となれば、“粘り強さ”と“自律性”も不要です。ウインドウショッピングのような仕事人生となってゆくと思います。ご質問の回答になっていないですね。

文責:清水 佑三

2006/12/01 885

小説と映画って全く世界が違いますよね。

「映画好きな清水さんにお尋ねします。原作を読んで面白いと感じたのに、映画化され期待して観たらつまらなかったと思うことがしばしばあります。原作の良さが死んでいるのです。この点についてどう思われますか。」 というご質問です。のんびりした質問です。ありがたいです。映画好きといわれれば確かにそうかもしれませんね。映画を見ては泣いている、が私の日常です。それはともかく、ご指摘のことを痛感したことがあります。水上勉原作の『飢餓海峡』です。小説と映画がそれぞれ全く違う面白さを作っているのに喫驚したことがあります。それぞれがそれぞれにとても面白かった。映画では、三國連太郎と伴淳の演技のうまさにひきずりこまれました。ある曲をこの演奏家はどう演奏するか、映画はその楽しみが主体だと思います。原作(小説)だと、人の不思議、人の世の不思議を、無理やりのぞきこまされるのがたまらないです。文章力に秘密がありますね。

文責:清水 佑三

2006/11/30 884

早期退職が多すぎる。原因究明をしたい。どうやればよいか。

みなさんはリサーチというとすぐデジタル的な情報の入手と分析をイメージされるようです。属性をカテゴライズして作表し、そこから傾向性がみられないかを統計的に調べようとします。その前にしてほしいことがあります。早期退職希望がでた段階で、早期退職リサーチャーが全数インタビューをすべきです。2時間ぐらいの時間をかけて、テーマをきめないで雑談をするとよいと思います。1時間を過ぎる頃あいから本音みたいなものが顔をだしてきます。そこでのものの言い方をよく記憶して、記録をつくるのです。その記録を蓄積していってください。ある程度たまると、そこから早期退職を生む風土的原因が見えてくるものです。それが仮説です。その仮説が正しいかどうかを統計的に検証する、が順序です。サカサマだとうまくゆきません。

文責:清水 佑三

2006/11/29 883

管理職昇格後のメンタル疾患発症が目立つ。

「どういう理由かきちんと分析しきれていないのですが、メンタル疾患発症と管理職昇格が関係していると思う。他社さんはいかがか。」 という主旨のご質問です。他社のことはよくわからないのですが、自社の管理職登用直後の数人の人たちの言動をみているとご指摘の傾向性は確実にあるなと思います。プレーヤーとしてボールを追っている時代には球団幹部・監督・コーチ間のいさかいは自分と無関係だった。プレーに集中できました。結果がでないのは自分の問題でした。ところが監督職になるとわけのわからない人間どうしの葛藤が生産性阻害要因としてたちはだかる。関係者の感情のもつれの処理が自分の主要な仕事になります。葛藤といっても高級感のあるものは皆無です。他愛ない話が大きくなりお互いがお互いのやる気をなくさせてゆく。結論。葛藤処理が好きな人を管理職に登用すべきです。

文責:清水 佑三