人事部長からの質問

2007/02/13 931

部下を持った経験がない人を管理職にあげてしまっていいか。

監督をつくっていくためのキャリア・パスは、キャプテン→コーチ→二軍監督→監督です。それぞれの時代に実績を残すことが昇格の条件です。長嶋茂雄さんがかわいそうだったのは、一選手からいきなり監督にさせられたことです。選手としてのプレーでは天才だったと思いますが、チームを率いて活性化させ、成績につなげる監督としてのプレーはまったく別物です。その違いをよく認識し、部下を持った経験がない人をいきなり管理職に登用する道は避けるべきです。ワンステップ入れて、プロジェクトチームのリーダー経験を積ませてからにしてはいかがでしょう。そこで人望と実績の両面チェックをいれればよいと思います。

文責:清水 佑三

2007/02/09 930

上から管理職を増やせといわれました。

「仕事量の多い係長を管理職に上げろと言われています。残業代削減のために出された指示であることがうかがえます。昇進候補者のうちの何人かの係長は、部下を育てるという視点でいうとあきらかに「×」です。こういうやりかたってダメですよね。」 ご質問から離れますが、連合が「ホワイトカラー・イグゼンプション制度」に対して強い抵抗、懸念を示したのは、ご指摘のような(過残業が集中する)係長職を会社が非組合員に取り込もうとしたゆえです。会社の戦略立案にかかわっているこの層をどちらがとるかで、労使の力関係は大きく規定されてしまいます。現状は、係長職のサービス残業という面妖な「人質」を組合側がとっている。その奪還大作戦が、新制度の政略的な意味です。さて、ご質問への回答ですが、管理職の乱造は会社をつぶします。間違いないです。

文責:清水 佑三

2007/02/08 929

降格制度をつくったが運用されていない。

身分はいじるな、職制をいじれ、というのが私の年来の主張です。身分というのは、上下の格づけを伴った(原則)固定的なものです。普通は、俸禄(処遇)とリンクされています。「門閥制度は親の仇(かたき)でござる」と福沢諭吉が憤慨した家格(家柄)は身分のわかりやすい例です。徳川政権でいえば、譜代(大名)は身分のカテゴリーで、関ヶ原以前からの徳川の家臣に付与されました。3万石以上の譜代の中から行政能力の高い人が老中に登用されました。「老中」は職制名です。身分と職制はつねに紐づけられていました。明治以後、会社組織が生まれ、江戸時代の組織論がそのまま引き継がれました。理事(身分名)以上から部長(職制名)を任用する、などがその名残りです。身分制は職能等級制度と名前を変えて現存しています。さて、ご質問ですが、降格制度の設計にあたっては、職制に限定して上げ下げすべきです。身分(俸禄)をいじると、いじられた方の忠誠心が落ちます。

文責:清水 佑三

2007/02/07 928

人材たな卸しといいますが、たな降ろしなのでは?

「入社後10年目の総合職社員を対象に“人材たな卸し”的なアセスメント研修を行っています。届けられるフィードバック報告書を読むと、本人が嫌になるのではと思うほど性能面の弱さが指摘されています。これって意味がありますか。」 というご質問です。まさに人材たな降ろしですね。有効ではないです。20年近く前になりますが、慶応大学医学部(放射線科)の近藤誠先生の「人間ドック有害論」を思い出しました。先生は、人間ドックがなかったら何でもなく人生をエンジョイできていた人が、ドックの映像診断で影がみつかったためにそれがガンによるものかどうか、大手術を余儀なくされる。開腹したらガンもどき(いじらなくてもよい腫瘍)だったのに、当該臓器だけでなく、周辺リンパ節まで根こそぎとって抗ガン剤投与に入る。手術と抗ガン剤の後遺症で自然治癒力が落ち、足早に死への道を歩きはじめる、という主張です。研修目的のアセスメントは、近藤先生のいう「人間ドック」であってはならない。プラスの証拠を集めて励ますシステムです。

文責:清水 佑三

2007/02/06 927

安倍首相の政治生命を占ってください。

小泉さんは、郵政民営化を叫び続けて首相になり、苦節5年、ついに初志を貫徹させました。小泉さんが見せた大いなる愚直さに国民の多くが共感を寄せたのです。さて安倍さんです。同じだけの愚直さがあるかどうか。アメリカが安倍さんの「北の拉致へのこだわり」に辟易しはじめたときが政権の天王山でしょう。もしかりに、彼がそのとき旗をまくような政治的な動きを見せれば、その瞬間に「声なき声」は安倍晋三の正体見たり、として見離すとみます。そこを突破すれば長期政権となります。

文責:清水 佑三