人事部長からの質問

2003/05/29 25

接待がきちんと出来るかどうかは評価項目たりえますか?

たりえます。評価項目というのは「会社から個人へのメッセージ」だと思ってください。「上手に有効な接待をする」を評価項目とする、はイコール、上手に有効な接待をせよ、という意味です。徳川幕府がスタートしてすぐのタイミングで始まって、200年間続いた朝鮮国王から江戸幕府への朝鮮通信使の接遇はつねに幕府が神経をとがらせた問題でした。新井白石などは知恵の限りをしぼってこの問題に取り組んでいます。かつての都銀のMOF担(大蔵省銀行局担当)などもまったく同じでしょう。上手に有効な接待ができないと銀行のそれこそ死活にかかわったからこそ、各行とも最優秀の逸材をそこに配したわけです。位が高くなるほど、接待の能力は存在理由を左右するものです。

文責:清水 佑三

2003/05/28 24

勤務時間中に株の売買をやっている営業マンがいます。営業成績はよいようです。会社としてどう対処すべきでしょうか。

いつ、どこで、何を使って、というのが問題です。就業時間内に、会社の施設内で、会社が貸与している電話を使って、となると懲戒事由にあたりますね。公私混同であり、明確な就業規則違反にあたります。上司がそれに気づいていて、問題にしない場合は、その上司は「監督義務違反」の可能性があります。その人の営業成績がよいとか、周囲に迷惑をかけていないという問題とまったく次元の異なる問題です。プロ野球の選手が試合中に、グランド上で携帯電話を使って株の売買を指示しているようなものです。「興行」はなりたたなくなります。ちなみに、クリントン前アメリカ大統領の「研修生問題」はいつ、どこで、なにをしていたか、が問題になったのです。それが「不適切な行為」の意味あいであります。

文責:清水 佑三

2003/05/27 23

人事部の役割として今後取り組むべき新しい領域は何だと思いますか。

人的資源という概念について明敏かつ明快な知覚をもつことだと思います。給与・評価、福利厚生、勤労、採用・教育といった業務遂行型の部署から、自社にかかわる人的資源に関する研究・開発部署に少しづつ衣替えしてゆくべきです。自社にかかわるという意味は、みなさんは人的資源というと必ず自分の会社の社員のことだけをイメージされるからです。そうではなく、自社と関係する(株主、顧客、協力会社、社員等)すべての人についての人的資源の特性を研究すべきです。そこで得られた知識を経営に反映させればさせるほど、経営が打ち出す施策のピントが「人の特性」にあったものに変わってゆきます。現実的かつ有効なものになってゆきます。

文責:清水 佑三

2003/05/26 22

派遣社員が清水さんがよく言われる牢名主になってきています。どうすればよいか。

派遣社員制度の立法趣旨に則って、社員としての要件を満たしている場合は、一定の期限ののち正社員にすべきです。ご指摘のような牢名主的な人は、そこで適格性基準をもたないとして退けられる筈です。それをきちんとやらないとご指摘のような現象が起こります。ツケがまわった、ということだと思います。今からでも遅くはないので、長期的な派遣社員を全社一律でみなおし、発展の阻害要因的な存在の人の契約延長を断ればよいと思います。

文責:清水 佑三

2003/05/23 21

人事部長の人望について意見を聞かせてください。気にするべきではないでしょうか。

気にするべきではないと思います。外務大臣の小村寿太郎が日露戦争後の講和条約に臨んだときのことを思い出すべきです。賠償金獲得に失敗した彼は、新聞主導の世論に悪し様にいわれ、日比谷焼き打ち事件に発展しました。世論=人望はゼロよりも低かったのです。社内における人望などは「風の吹き回し」のようなものです。ただ、同僚といわれる人たちの間の人望的なものはとても重要な指標で、相撲でも野球でも選手は選手をよく見ているものです。松井秀喜選手をジャイアンツの同僚が悪く言わないのは意味があるのです。人事部長の(社内的)人望という点でいえば、そんなものは気にしなくてよい。ただ、同じ部長クラスの人たちが信を置いているかだけは気にされたほうがよいでしょう。(人事)改革に体を張ったときについてきてくれるかどうかを分けます。

文責:清水 佑三