人事部長からの質問

2003/07/03 50

本社部門(管理、企画)にあてる人材とは?

社長の分身的人材、という定義しか思いつきません。忠誠、献身、才能において突出している人をもってあてるべきです。具体的にいえば、ブッシュ政権におけるコンドリーザ・ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)などが思い浮かびます。彼女は、自らの考えを明確に口にするだけでなく、ロシア、中東という自国にとってもっともクリティカルな国に赴き、最重要人物とサシであいつづけています。大統領の分身として行動しています。1971年に秘密裏にニクソン大統領の意をうけて中国を訪問し周恩来と米中関係改善を話し合ったとされるキッシンジャー氏(当時大統領補佐官)も同じです。部署(の利益)とは関係ない立場に身をおき、国益だけを念頭において昼夜の別なく(高いレベルで)思考し行動するグループです。個人の才能を見込んで抜擢することしかありえません。定期的なローテーションの範疇で凡庸な人材をあててはいけません。高い倫理観、企業愛、優れた知性と責任感などが適性でしょうか。

文責:清水 佑三

2003/07/02 49

集合研修の必要性を教えてください。

研修を「目的」によって分けると、(1)洗脳、(2)調教、(3)懇親の三つに分けられます。サクセッションプランニング(後継者育成)という言葉で、多国籍企業で実施している上級者への研修などは、(1)の色彩が非常に強いとみています。ボードメンバーとしての社会が企業に求めるものを徹底的に植え付ける狙いがあります。(個々人の仕事人としての)生き方のコペルニクス的転回を求めるのです。(2)は初任管理職研修などで行われているものの大半がこれにあたります。部署長に与えられる組織資源の見極めと再配置法について「骨法」を伝授するのです。劇団でいえば、台本と役者を与え、観客の感動を最大化するために舞台監督としてなすべきことを体得させます。(3)は会社の費用でなされる「同期会」です。入社して以来、全国に散ってしまった同期生が一同に会して、寝食をともにし、あらたな気持ちで再出発を行うエールの交換がその役割です。「お盆の帰省」のようだと思いますが、日本企業の力の源泉はこの階層別イベントにあります。以上が集合研修の効用であります。スキルトレーニングに類するものは、集合研修にはなじみません。アドバイザーつきのeラーニングにおきかわるでしょう。

文責:清水 佑三

2003/07/01 48

360度評価データも揃い、コンピテンシーモデルもできた。次は?

質問が逆なように思います。何かをするために、360度評価を実施し、コンピテンシーモデリングに大枚をはたくのです。それはともかく、次になすべきは、すべてのマネジメントポストについて経営戦略上、要衝と考えられるポストとそうでないポストとに分けてゆく作業です。優れて経営的な仕事であり、ボード(経営委員会)の付託を受けて極秘裏に行うべきです。上から10のポストについて、コンピテンシーモデリングの結果をチェックします。経営センスをもっているごく少数の人を動員して、本当にそうか、をチェックして、コンサルタント会社が出してきたものを補正します。その上で、そのポストに現についている人の360度評価データを調べミスマッチ度を出します。一定の限度を超えてミスマッチと判定された人については、申し訳ないが、選手交代です。新たにつける人についても、候補者群の360度データを活用します。以上が、ご質問への回答です。なぜ、人事考課や実績よりも360度評価データを重用するか、ですが「現にとっている行動」への評価だからです。「改革」がよい例ですが、頭のよいほど口で改革を唱え実行行動を引き伸ばすものです。

文責:清水 佑三

2003/06/30 47

教育・研修費(対管理職)の費用対効果を測る尺度はないか?

社員による不祥事(表に出したくない不名誉な事柄)が測るべき対象になると考えています。(不詳事に対して)地震と同じように、マグニチュード(大きさ、規模等を示す数値)のようなものを用意して、件数×マグニチュードの総和を求めます。年度ごとにそれと管理職への教育・研修費総額との比を求め、改善してゆけばよいのです。天敵がいないといわれるマス・メディアといえども、社員の不祥事によってブランドイメージは失墜し、ついには破綻まで追い込まれることがあります。1972年の春に衆院予算委員会で社会党の横路孝弘議員は、外務省の極秘公電コピー2通を示し、沖縄返還交渉最終局面での日米の「密約」について追及しました。世にいう太吉っつぁん事件の発覚です。毎日新聞がこの事件によって昔日の栄光を一気に失う奈落に向かったといわれます。たった一人の記者の行動が契機となったのです。不祥事のマグニチュードを測る計器の針は振り切れてしまったことでしょう。管理不在のなせるワザです。リーダーは事業を統率し、管理職は不祥事への怠りをなす、が私の考えです。

文責:清水 佑三

2003/06/27 46

派遣社員の管理も人事部の仕事でしょうか?

現場の職掌でしょうね。ただ、雇用問題における制度的な面での整備は人事・法務が担当すべきだと思います。細かい運用面で、現場が細則を用意するのは「あり」だと思います。現場に任せると、派遣社員が居ついてしまって正社員以上の業務知識を持つ牢名主のような派遣社員が生まれてしまう、ということであれば、それは現場責任者が怠慢だからであって、そういうラインをつくってしまった経営の責任ともいえます。派遣期間1年で正社員にするか契約を打ち切るかのどちらかにするように法制化して実行すればよい問題です。どういう基準で正社員にする人を選ぶか、その判断基準を明快に整えるのが人事・法務の仕事です。

文責:清水 佑三