人事部長からの質問

2003/07/10 55

本社の企画、管理部門のMBOについてヒントが欲しい。

本社の企画、管理部門の仕事は、ひとことでいえば、司法、立法機能です。裁判所と国会のイメージです。国家をして国家ならしめている根幹のルールを作り、その運用を行政府に課し、かつルールの逸脱について厳しいジャッジを下す部署です。社長と同格、同等のミッション(崇高な使命)をもたないと勤まりません。社長のMBOについてイメージしてください。100%結果責任ではないでしょうか。社長と同様、(本社の企画、管理部門は)プロセス的なものをもって目標を定義してはならないのです。ヘンなたとえですが、中国の元が米ドルとリンクして動くように、社長のMBOとリンクさせて動かすのが本来の趣旨です。その部署の社員は、高い専門機能をもつ独立職であることが理想です。これも国会議員とか、裁判官のイメージと同じであります。高い使命感と倫理観、優れた専門性、滅私奉公精神が前提となります。

文責:清水 佑三

2003/07/09 54

評価と報酬の連動についてはどう考えるべきか。

評価の客観性というのは、政治の透明性と同じで「夢」です。人が人を評価する、あるいは支配する現象には透明性がもてないのです。評価と報酬の連動をさせない年功序列という思想は、縁あって集まった同志が同じ気持ちで一所懸命に働くとき、個人個人の異なる働きの間で優劣をつけることができようか、優劣をつけてはならない、という強い感情が根底にあります。統治のメカニズムというよりも宗教感情、人間観のなせるワザです。日本人はこの気持ちを快とするところがあり、評価と報酬を連動させようとするすべての試みは、われわれが長い間はぐくんできた風光明媚な「風土」を砂漠化してしまうと思います。ただし、これは選手についてのコメントであり、監督については評価と報酬は100%連動させないといけません。

文責:清水 佑三

2003/07/08 53

成果主義を納得感の高いものにしたいが。

成果主義とは、功ある者には禄(賃金のようなもの)を与えよ、能ある者には配(軍配のようなもの)を与えよ、という古くからある思想の今様の表現です。蒙古襲来絵巻には、主人公の御家人竹崎季長がはるばる鎌倉まで旅をして、恩賞を得るべく自分の活躍をアピールする話が記されています。成果に見合った処遇を求めるのは「人情」です。納得感ですが、処遇にメリハリをつければつけるほど、周囲のジェラシーが刺激されます。富士通さんが、成果と賃金の連携を実行に移し、破綻してしまった事実は、いかに我々の国民性とこうした考え方が馴染まないかを教えてくれます。私見ですが、成果主義と納得感は、ギッタンバッコの関係にあるもので、両者の共存は不可能とみています。

文責:清水 佑三

2003/07/07 52

メンタルヘルス問題についての考え方を。

精神病、人格障害、心身症と大別して考えるとよいでしょう。適切な譬えかどうか不安ですが、前ふたつは、原因がハードウエアとソフトウエアの違いがあるだけで、機能障害であり、同じように「本人および周囲が苦しむ」という点で共通していると思います。心身症は、自覚する本人の症状があるだけで、他害の要素はまったくありません。普通の人がいつもかかりうる精神的な風邪のようなものだと思います。風邪と同じように丁寧に養生すればよいと思います。精神病、人格障害ともに、産業医が扱うべきものです。人格障害はわかりにくい言葉ですが、その人の人格に起因する「不適切行動」パターンをさします。借金病、クスリ、セクハラ、暴力沙汰、虚言など、周囲に迷惑をかける行動を繰り返すパーソナリティの持ち主という理解でよいでしょう。人事部としては「EAP(個人的障害を支援するプログラム)」のような社内インフラを用意して早期発見、早期対応をすべきです。

文責:清水 佑三

2003/07/04 51

人事部門をまるごと外へ出す(分社化する)ことの危険は?

オペレーション(作業、業務)部門について(の分社化)は理解できます。独立法人とすることで、サービスの質と生産性を世間水準に押し上げ、労働分配率を逆に世間水準に押し下げる効用が期待できます。サバイバルできる条件を自らの手で創れ、勝ち取れ、というメッセージです。それをする場合、作業、業務が分かっている人のほかに、会社経営が出来る人を支配人におかないとたちまち破産してしまう、という危険があります。事業センスを持つ人をトップに配してください。問題は、そうやって分社化しても、サービスの質がその道のプロが凌ぎを削っている水準まで、どうやっても届かない場合が現実問題として出てくることです。親ばなれがどこまで行っても進まなくなります。世間から仕事をとってこいと営業させても、世間のほうで(サービスを)買わないのです。出来の悪い人事部門を分社化するときにつきまとう問題です。  次に分社化させてはいけない人事部署についてですが、人事企画といわれる部署です。具体的には、経営戦略を人的資源の調達と運用計画に落とし込める専門的な能力をもったスタッフをさします。彼らを外に出すと、(会社のことを知らない)社外の人事コンサルタント会社にいいようにおもちゃにされます。忠誠心と使命感をもつけれども能力において社外コンサルタントと同等のものをもつ人たちについては、外に出してはいけないと思います。

文責:清水 佑三