人事部長からの質問

2003/07/17 60

企業内不祥事への(人事部の)対応について。

おきてからの対応と、おこさないようにするための施策の二つがあります。前者は私の関心外で、答える意欲がわきません。後者に対しては強い興味、関心が昔からありました。企業は何故、不祥事を起こしてしまうのか、という問題意識です。不祥事の定義をしましょう。私は、ブランドイメージを損なう事柄はすべて(広義の)不祥事だとみています。他の会社の真似ばかりする、などは私に言わせれば不祥事であります。また、会社にいる人がこぞって自分の会社の悪口をいう、も同じです。そういう視点でものをいうと、日本企業は横並びですぐ先進他社を真似します。口を開けば、自分の会社や業界を悲観的に捉えてものをいいたがります。不祥事のオンパレードが昨今の世相ではないでしょうか。それはともかく、ブランドイメージを損なう事件を起こさないためには、一にもニにも上司、先輩の言動に適切さを得る、であります。人の性質を研究している立場からいえば、今の星野阪神は、不祥事が起こりにくい環境醸成に成功しています。ここから先は想像力を働かせてください。

文責:清水 佑三

2003/07/16 59

人事考課対象期間、はどの程度が現実的か?

よいご質問だと思います。いわゆる世界標準方式で、決算は四半期ごとが定着していますが、もともと時間をくぎって何かを評価する、は根底において無理のある思想、考えかたです。聡明な日本人はそういう「こちたきひがごと」には敏感で、会計年度という考え方を人を扱うときは、拒否してやってきたところがあります。いわゆる長期的な視点で人をみる、です。ヒノキの木が使えるようになるのは80年かかるといいます。80年先をみて先祖は植林してきたのです。それと同じことが人の評価にもあるのです。ユニークすぎる意見かもしれませんが、人間の評価期間は中国、晋書にある「棺を蓋いて事定まる」であります。つまり生きているうちは、利害や感情によって正しい評価はできない。その人に対する本当の評価は死後にならざるを得ない、がこの言葉の意味です。浅薄な評価を時間をチマチマ区切ってすることなどやめてしまえ、が筆者のいいたいことです。

文責:清水 佑三

2003/07/15 58

事業部門別賞与についてお聞かせください。

分社化の狙いは、事業部門別賞与に、大きくメリハリをつけるところにあります。月例給与部分は社員の生活保障の色合いが強く、儲かっている事業部とそうでない事業部で、大きな格差をつけるのはいかがなものかと思います。しかし、賞与は利益還元的な要素が強く、儲かっているところとそうでないところが一律であるは、(逆に)理にかなっていません。ただ、新卒で採用する人たちをイメージした場合、この方式をとると、(事業部門別採用を行っている場合はよいのですが)そうでない場合、入社後わずかな期間で、同期入社者間で年収格差が生じる可能性があります。それが果たして適切かどうか、という問題が生まれます。したがって、(事業部間)格差は原資部分でつけるべきで、個々人への配分基準については、上で述べたような不合理が生じないような配慮が必要だと思います。多様な事業部門をもつ企業にあって、事業部門別賞与格差問題は速やかに取り組むべき重要なテーマです。

文責:清水 佑三

2003/07/14 57

管理職に求めるコンピテンシーで代表的なものは?

エス・エイチ・エルは、次の8つを汎用性の高いもの、としてあげています。

  1. リーダーシップ→人がついてくる
  2. チームワーク→相互に助け合う
  3. 対人積極性→活発に交際する
  4. 分析力→事象を要約する
  5. 創造力→発明、発見する
  6. 手順化能力→段取りがうまい
  7. ストレス耐性→自分と折り合う
  8. 完遂エネルギー→途中で投げない

多くの企業でこの8つを使っておられますが、大きな違和感はないようです。それぞれのコンピテンシーの間の相関関係をよく理解することが大切です。

文責:清水 佑三

2003/07/11 56

人事部員をローテーションさせる是非について。

日本企業の独自性は、本来、独立的、専門的である人事部員を(2、3年のサイクルで)ローテーションさせていることです。この図式は日本文化のなせるワザであり、欧米諸国ではあまり見られないものです。採用の仕事を例にとると、入社早々の若い人たちにこの仕事を任せる大企業が目立ちます。プロ野球のスカウト職に野球をよく知らない人をあてるような感じです。奇異に映りますが、長い間、自然に培われた企業内習俗のようなもので、中にいる人たちは違和感をもっていないのが面白いところです。ずぶの素人に近い人が調達した人たちで構成された集団が日本企業なのです。アマチュアリズムそのものです。ところで財務部員と人事部員は同じです。金の調達と運用に責任をもつのが財務部員です。金を人におきかえればそのまま人事部員です。財務部員はローテーションの対象になりにくいと思います。同じように人事部員もローテーションの対象から外すべきだ、が私の答えです。

文責:清水 佑三